双海 しお
エンタメジャンルで執筆するフリーライター。2.5次元舞台が趣味かつライフワークで、よく劇場に出没しています。舞台とアニメとBLが好き。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。
年が明けて新たな1年が始まりました。みなさんはすでに今年の目標を決めましたか?
「去年よりもっと飛躍する1年にしたい」
「今年は挑戦する1年にしたい」
新年の抱負を熱く語ってくれたのは、間もなく開幕を迎えるミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs比嘉(以下、テニミュ)に出演する菊丸英二役の長嶺龍汰さんと甲斐裕次郎役の益川和久さんです。
おふたりがこの役に挑むのは今作が初めて。長嶺さんは今回が初舞台。益川さんはこれまでテニミュボーイズとしてテニミュに出演しており、本作では比嘉中の甲斐裕次郎役に抜てきされました。
そんなおふたりは、どんな心境で本作に挑むのでしょうか。稽古を通して自身の役と向き合うおふたりに、役作りのことや学校ごとのキャストの雰囲気、テニミュに出演するうえで大切にしていることなどをお聞きしました。
記事後半では、一問一答を掲載。numan初登場となるフレッシュなおふたりをもっと深く知ってみませんか?
INDEX
――まずはご自身が演じる役に対する第一印象と、実際に稽古で役を演じてみて印象が変わった部分や新たに発見した魅力を教えてください。
益川和久(以下、益川):
原作では、どちらかというと甲斐くんはヒールな印象でした。テニスボールを人に当てるという描写もあるので、そこの印象がやっぱり強かったですね。実際に演じてみると、彼には彼なりの正義があるというか、これまで教わってきた正しさをそのままテニスにぶつけているんだなと、印象が変わりました。もともとの性格がヒールというわけではなく、教わってきたことに対してすごく素直で、純粋な子だなと思いましたし、そこが甲斐くんの魅力だなと思っています。
長嶺龍汰(以下、長嶺):
僕が最初に原作を読んで思ったのは、菊丸は本当に元気でポジティブな子だなと。でも、演じていくうちに、元気なだけじゃなくてもっといろんな一面を持っているキャラクターなんだなと思うようになりました。年相応に喜怒哀楽が激しいし、それこそ勝負のことになればすごく真剣でかっこいいし。そういうところが素敵だなと思います。
――役作りについてはいかがでしょうか。稽古に臨むなかで、難しいな、挑戦だなと感じている部分はありますか。
長嶺:
菊丸ってすごく元気じゃないですか。でも、僕はもともとわりと静かな方なんです。
益川:
そうなの!?
長嶺:
実はそうなんです。だから、自分にはない部分を引き出すということに苦労しているところです。
――益川さんは「そうなの」と驚かれていましたが、稽古場での長嶺さんを見ていて静かという印象はなかった?
益川:
静かだと思ったことはないですね(笑)。
長嶺:
本当ですか(笑)。
益川:
うん。稽古場に控室のようなスペースがあるんですね。そこにトイレもついているんですが、龍汰はその中でめちゃくちゃ大きい声で歌っているんですよ! その歌声が控室にも聞こえてくるので、いつもすごく元気だなと思っていました。
長嶺:
聞こえてたんだ……恥ずかしい(笑)。たしかに歌の練習をしていますね。稽古場に向かうときは、いつもの静かな自分はリセットして、元気な子という気持ちで臨んでいるので、静かな人だとは周りのキャストにも思われてないかもしれないです。
――益川さんはいかがでしょうか。
益川:
両利きでラケットを持つというのも初めてなのですが、もうひとつ、キャップを被る役というのも初めてなんです。普通に被って演じてしまうと、ツバの部分で目線が遮られてしまって、お客さんに表情が伝わらなくなってしまうので、そこは今すごく研究しているところです。
元気よく顎を上げて表情を見せるというのも、甲斐くんとしては違うと思うので、ツバの下から片目だけ見えるようにあえて影を入れたり、目を見せない瞬間を作ったり。そこはすごく考えながらやっていますが、難しいです。
――ほかに役作りにおいてこだわっていることを教えてください。
益川:
ダンスの振付で、ラケットを右手に持つか左手に持つかというのはこだわっています。歌詞の内容や甲斐くんの近くにいるキャラクター、そのときの甲斐くんの心情にあわせて、右利きと左利きを入れ替えていますね。
長嶺:
僕も似ているかも。菊丸は周りに誰がいるかによって、表情が変わるところがあると思っていて。例えば大石に対しては普段よりも感情が顔に出やすいし、とくにケンカした後はすごく分かりやすく悲しい表情になるように演じています。周りにいる人に対しての表情の演じ分けという部分が、こだわっているところです。
――本作では菊丸対甲斐の試合がありますね。原作でこの試合を読んだときはどんな印象を抱きましたか。
益川:
菊丸がダブルスじゃないっていうのが、やっぱり大きいよね。
長嶺:
たしかに。
益川:
公式戦では初めての菊丸のシングルスだから、まずそこに驚いたし、すごく印象的でした。
長嶺:
わかる。あと、僕は純粋に「分身、すごいっ!」と思って。
益川:
それもわかる!
長嶺:
分身しているから「甲斐くんはどう立ち向かうんだろう?」と思って読み進めていたんですが、甲斐くんも海賊の角笛(バイキングホーン)で粘っていて。タイブレークまでもつれ込むその展開に、すごくいい勝負だなと感動しました。
益川:
本当に接戦でいい勝負だよね。甲斐くんに関しては、最初は単に右手が通用しなかったから、左手に持ち替えて海賊の角笛(バイキングホーン)を繰り出したっていう見方をしていたんです。だけど、演じているうちに少し変わっていって。
甲斐くんは青学(せいがく)戦の前の比嘉対六角戦で佐伯(虎次郎)との試合があるのですが、得意とする縮地法を封じられてしまって、勝つには勝つけどむちゃくちゃ悔しい思いをするんです。その悔しい気持ちも持って、心に火がついた状態で菊丸との試合に臨むので、一見余裕そうな表情をしているけど、内心は全然余裕ではなくて。だからこそ、裏手の左利き(レフティ)に切り替えて本気を出していくんだろうなと思うようになりました。
――おふたりの試合のシーンの稽古はこれからとのことですが、稽古場でお互いの芝居を見る機会もあると思います。これから始まる試合シーンの稽古に向けて、対戦相手としてお互いに「ここは負けたくない」「勝ちにいきたい」と思うのはどんなところですか。
長嶺:
やっぱり身体能力ですね。甲斐くんは沖縄武術で菊丸はアクロバットと、身体能力の高さという意味で似たところがあると思うんですが、菊丸の強みはやっぱりアクロバットなので、身体能力の面では負けたくないなって思います!
――長嶺さんからの宣戦布告を受けて、益川さんはいかがでしょうか。
益川:
……(熟考してから)闘志ですかね。ずっと沖縄武術をやってきて、対人でも戦ってきている熱量というか経験値が甲斐くんにはあるわけじゃないですか。経験してきたものが違うんだぞというところで、負けません!
長嶺:
おお。僕も負けないように頑張ります!
――青学(せいがく)キャスト、比嘉キャスト、それぞれの稽古場での雰囲気について教えてください。稽古場で見ていて、お互いの学校はどう見えていますか。
長嶺:
比嘉キャストは一言でいうと「陽気」です(笑)。振り入れの様子を見ていても、ずっと面白いんです。「よっしゃー!」っていう声が聞こえてきたり、ところどころにネタをやっていたり。面白い集団です(笑)。でも、振り入れはみんなめちゃくちゃ早くて、すごいなと思っています。
益川:
うちは日替わりでみんながムードメーカーになれるくらい、盛り上がりたがりのメンバーが揃っているので、たしかに明るくに見えるかも(笑)。平均的にずっと騒がしいのは聖大(田仁志 慧役の平川聖大)ですけど、みんな今日は大人しいなと思ったら僕が盛り上げにいくこともあるし、本当に誰かしらが盛り上げてくれています。
――そんな益川さんから見た、青学(せいがく)キャストの雰囲気は?
益川:
僕たちにはないフレッシュさと爽やかさがある。見ていてこっちまでキラキラした気持ちになってくるんですよ。校名通り、まさに“青春”なチームです。爽やかな青いオーラが見えます(笑)。
長嶺:
たしかに比嘉ほどわちゃわちゃした雰囲気ではないのですが、みんな仲良くてあたたかい感じがします。すごく部活っぽくて、先輩が年下の子たちをご飯に連れていってくれたり。すごくアットホームです。
――では、今回の公演で気になっている推しキャラクターを教えてください。
益川:
2人いて、1人目は(六角中の監督である)オジイです。歌も話し方も全部かわいくて、本当に愛おしいですね。
長嶺:
わかる。癒されますよね。
益川:
そうなの。ほかのキャラクターにはないおじいちゃんキャラクターならではの空気感に癒されています。甲斐くんはそんなオジイにちょっとひどいことをしてしまう役なので、すごく心苦しいです……。
長嶺:
オジイときて、もう1人は誰ですか?
益川:
2人目は立海の柳生比呂士。
長嶺:
おお!
益川:
最初のイメージは、真面目そうな見た目なのですごくお硬い人なのかなと思ったんですが、それだけじゃないなと。紳士(ジェントルマン)なだけあって、中学生らしからぬ大人な雰囲気を持っていて、ジェントルマンではない比嘉としては密かにいいなと思っています。龍汰は?
長嶺:
僕は比嘉の不知火知弥です。
益川:
へえ!
長嶺:
そこまで描写が多くないキャラクターだったので、どういう人なんだろうと思っていて。でも、稽古が始まってみたらすごく面白くて。テニミュの不知火はこんなに面白いんだと好きになりました。ベンチからヤジを飛ばすところとか、本当に面白いしかっこいいし、衝撃を受けました(笑)。
――続いて、稽古場でスタッフさんや役者仲間に言われた、この作品を作る上で大切だなと思った印象的な言葉があれば教えてください。
長嶺:
僕は三浦さん(脚本・演出の三浦 香)に言われた「謙虚に」という言葉ですね。受け継がれてきた作品だからこそ、自分たちの色に染めるだけじゃなくて、守るべきものは守る謙虚な姿勢を大事にしていきたいなと。稽古が始まってすぐの頃に言われた言葉なんですが、この言葉はずっと心に留めてやっていきたいなと思っています。
益川:
僕は野上社長(ネルケプランニング代表取締役社長の野上祥子)に教えていただいた、キャストだけでなくスタッフやお客さま、それ以外にも見えなくても影で支えてくださっている方、1人でも欠けたら成り立たないくらい、多くの人がいてこそ成り立つものが舞台なんだよということを心に刻んでいます。
――素敵なエピソードありがとうございます。テニミュが2025年の観劇初めになる方も多いかと思います。そんな本作への意気込みをお聞かせください。
益川:
新年1発目に「今年はいい年になるだろうな」と思ってもらえるくらい、熱くてキラキラした青春を届けられたらと思います。お客様が「いいスタートを切れた」と思ってもらえるよう頑張ります!
長嶺:
僕たち新青学(せいがく)キャストにとっての最初の作品であり、僕にとっては初めての舞台となります。ファンの皆さんに、歴代の青学(せいがく)も好きだけど、僕たちの青学(せいがく)も好きだと思ってもらえるような公演にしたいです。「テニミュならでは」もちゃんと残したうえで、自分たちの色も出して、より良い作品にしていきますので、応援よろしくお願いします!
双海 しお
エンタメジャンルで執筆するフリーライター。2.5次元舞台が趣味かつライフワークで、よく劇場に出没しています。舞台とアニメとBLが好き。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。
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