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本記事ではこの映画の制作を支え続けたプロデューサー宇田 充さんとヤングマガジン編集部 『xxxHOLiC』担当編集である桂田 剛司さんにスポットライトを当て、完成までのプロセスを追っていきます。公開まで約10年を経た理由とは? そして蜷川実花監督と『xxxHOLiC』の意外な出会いとは。
INDEX
ヤングマガジン編集部:桂田 剛司さん(以下、桂田) 『カードキャプターさくら』や『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』など、いくつかのお話がリンクしている“CLAMPワールド”があって、そこに登場するキャラクターたちが“立ち寄れる場所”として作り上げたのがこの『xxxHOLiC』なんです。
さらに先生が妖怪やオカルトに興味をお持ちだったこともあり、それらをかけ合わせたことであの世界観が生まれました。トーンを使わなかったり、ベタ塗りと縦の線で意図的に処理していたのは、CLAMP作品の中では新しい表現方法だったと思います。
プロデューサー:宇田 充さん(以下、宇田) 実は蜷川実花監督作品で本作をやりたいというチームの意思が固まったのが、約10年前の2013年1月なんです。
監督がもともとビジュアルの資料としてコミックスを読んでいて、ビジュアルと物語のメッセージ性に衝撃を受けられて熱望していたのですが、さらに『xxxHOLiC』の画集(『胡蝶ノ夢』/2013年)を見て「これはすごい!」と。日本の文化を総括するような作風は監督のクリエイティブな感覚を刺激したと思います。しかしまさか完成するまで約10年もかかるとは思ってもみませんでした(笑)。
宇田 イメージボードなどビジュアル的な構想や「こんなメッセージを伝えたい」という覚書は早い段階で揃っていました。ただ全19巻ある原作を2時間の映画の脚本に落とし込む作業は思っていた以上に手強くて(笑)。
原作を知らない方が初見でも内容を理解できるようにするための物語を作ると、「これはxxxHOLiCではない」というものになってしまうため、何パターンも構成案を作っていきました。
桂田 CLAMP作品がメディアミックス化される際は二択しかないんです。先生方がスタッフとしてコスチュームデザインなどに入られるか、もしくは全てをお任せするかのどちらか。
今回の場合は、「蜷川監督の作り出す『xxxHOLiC』の世界を見てみたい」という先生方の思いから、監督に全てを委ねられたようです。
宇田 お任せいただけるというのはとてもありがたいことです。しかしありがたいからこそ、その重さも感じながら何度も何度も打ち合わせを重ねて作っていく中で脚本制作の沼にどんどんハマっていくんですよ。先輩プロデューサーや松竹チームなど様々な方のアイディアを取り入れながら少しずつ形ができていきました。
――脚本制作で一番思い出深かった出来事は何でしょうか。
宇田 大きいものから小さいものまでたくさんあるのですが、さっきの「これなら『xxxHOLiC』だ」「これだと『xxxHOLiC』じゃない」のるつぼに迷い込んでしまった時に、どうしたらいいのかを色々な方に相談したんです。
その際に実は桂田さんにも構成案を紙に書いていただきました。
宇田 まるでネームまで起こしていただいたみたいに(笑)。
桂田 学園の部分だけを切り取っていただいてもいいですし、はじめの妖怪探偵のような部分など、原作の使いやすいところだけ使ってみるのはどうですか?というようなご提案をさせていただいたんですよね。編集サイドとしても全19巻もある物語を2時間内におさめるだなんて難しすぎるのではと感じていましたから。
本作でいうと、四月一日くんの「アヤカシを視えなくしてほしい」という願いから入って、最後は侑子さんとの関係性を築いていくドラマになっていくわけなのですが、これらのプロセスは長期に渡るから細かく追うことができたんですよね。なので映画では必要なところだけを切り取って1本の軸にまとめたほうが良いのでは、と。
宇田 原作後半のシリアスシーンだったり結末のシーンだったりは監督たっての希望で当初から組み込む予定でした。そこへたどり着くまでにもまた右往左往がありまして…(笑)。
2013年の構想時点ですでに原作にはない“ループする4月1日”を乗り越えていく要素など、『成長する』メタファーみたいなものを映画のクライマックスにする案はありました。
しかし具体的な脚本にしていく中で、キャラクターが原作に沿っている・沿っていない問題が生じたので、さらなる模索がはじまりました。
「なら状況をわかりやすく動かしていく新キャラクターがいてもいいのではないか?」という案が出て、アカグモ(磯村勇斗さん)が生まれました。新キャラなので世界観を損なわずに内容の説明や進行をすることができたと思っています。
このスペースの中で「映画のアカグモを描いてもいいですか?」と先生から提案があり、あの特別描き下ろしイラストが誕生したんです。
(※)CLAMP公式Twitter「CLAMP・news」にてアーカイブあり。気になる方はチェックを!
https://twitter.com/CLAMP_news/status/1519939831073165312
宇田 監督自身が原作への愛が強い方なので、案を出しながら慎重に進めていきましたね。神木隆之介さんが四月一日君尋に、柴咲コウさんが壱原侑子に決まった段階で制作内容がどんどん動き出していったように思います。
座長の神木さんはとても勘が鋭い方で、初日に本読みをしたその瞬間に監督が求めているキャラクターの有りようを体現されていました。(本を)読み込めている座長がいるので、撮影中に作品の方向性が自然と見えてくるんですよね。
神木さんはキャラとしてだけではなく、役者としても共演者との距離を縮めていく方なので、松村北斗さんとのシーンではお互いの心に壁がないからこそ、四月一日と百目鬼のコンビ感が自然な形で出ていたのではないかと思います。
宇田 監督は四月一日、百目鬼、アカグモの3人をそれぞれ全く違うタイプの魅力的な男性キャラクターとして意識していたと思います。それぞれが魅力的に見えるよう、演出にもかなりこだわられていて。
桂田 「一観客として楽しませていただきました」と。自分たちの描いた『xxxHOLiC』が蜷川監督によって美しい世界にしていただけた喜びとともに、映画の隅々まで監督の作品への愛を感じたとおっしゃっていました。
桂田 漫画の白黒の世界を蜷川監督ならではの美麗な極彩色で彩っていただきました。それを見るだけでも価値のある映画だと思うので、ぜひ劇場のスクリーンで体感していただけたらと思います。
宇田 監督はじめ、原作への思い入れはもちろんのこと、撮影も照明も衣装も美術も音もアーティストたちが本気で挑んだ結晶のような作品です。ぜひ劇場で堪能して体感していただけるとうれしいです。
(執筆、人物撮影:ナスエリカ)
©2022 映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社
【出演】
神木隆之介 柴咲コウ
松村北斗 玉城ティナ
趣里/DAOKO モトーラ世理奈
磯村勇斗 吉岡里帆
【原作】
CLAMP「xxxHOLiC」(講談社「ヤングマガジン」連載)
【脚本】
吉田恵里香
【音楽】
渋谷慶一郎
【主題歌】
SEKAI NO OWARI「Habit」(ユニバーサル ミュージック)
【製作】
映画「ホリック」製作委員会
【配給】
松竹 アスミック・エース
【Twitter】
@xxxHOLiC_movie
【Instagram】
@holic_movie.official
【TikTok】
@xxxholic_movie
©2022 映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社
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