フィギュアが頭に刺さり惨事に――震度6で推しグッズは凶器になる。オタクは震災にどう備えるべき?【防災ノウハウ】

フィギュアやアクリルスタンドはケースに入れて飾った方が安全です。ガラス製の棚は危険性が高く絶対NGで、樹脂製のものを選びましょう。扉にロックが付いているとなお良いですね。
あとは貼ってはがせる耐震ジェルと滑り止めシート。これをアクリルスタンドやフィギュアの底面につけておくと倒れる可能性が軽減します。
滑り止めシートは万能で、様々な物の下に敷いて対策をすることが可能です。強度に不安があれば、超強力タイプの粘着テープで設置するのがお勧めです。

それから飾っているもの以外はまとめて箱の中に入れておくこと。新聞紙にくるんで入れておけば、割れた欠片で怪我することはないでしょう。

オタクの防災 滑り止めシート

滑り止めシート

オタクの防災 

――滑り止めシートも100均のものなんですね。オタクグッズで意外と多いマグカップはいかがですか? 食器棚がいっぱいで……。

まず「食器は食器棚に入れる」という思い込みから離れませんか? 他のところに分散しておいてもいいので、私がお勧めするのは玄関の靴箱に置くことです。

――靴箱に!? それは何故でしょう。

玄関のフレームは狭くて強く、家の中でもっとも潰れる心配のない場所と言われています。逃げる際にもパッと持って出やすいですから、「避難所生活で役に立つ」マグカップを置いておくのはベスト。

オタクの防災 参考:ディスプレイケース(セリア)

アクスタはディスプレイケースに。ケースの下には耐震マットを(編集部私物)

自分にとって大切で、これがあったら頑張れるという物は靴箱に収納しておくのがいいと思いますよ。持ち出すものはできれば避難生活の中で使える実用品や、ぱっと見られる物をお勧めします。アクリルスタンドはコンパクトでいいですね。

注意としてはこちらも滑り止めシートを敷いてほしいのと、物が多すぎると外に出られなくなる危険があるので、避難の邪魔にならない場所を考えて置きましょう。

缶バッチもまとまると重い。松・竹・梅にランク分けを

――缶バッチはどうですか? ワイヤーラックに飾っている人をよくみます。

部屋に飾りたければ、天井から床まで突っ張ることが可能なタイプのラックにするのはどうでしょう。下の方を重くなるようレイアウトして飾れば立派なパーテーションにもなります。

これはクリアファイル等、缶バッチ以外のグッズにも言えるのですが「小さいものでもまとまると重い」ということを忘れてしまいがちです。さきほどフィギュアやアクスタの項でもお伝えした通り、飾るものとそうじゃないものを区別し、自分が1番見ていたい缶バッチはラックに飾り、そうじゃないものは収納するのがよいですね。

オタクの防災 缶バッチを飾るときも固定を(編集部私物)

缶バッチを飾るときも固定を(編集部私物)

――それでも「グッズは全部大事!」と言うオタクも多い気がします……。

全部大事っていうけれど、あなたの中での“ブーム”と“そうでないもの”がありませんか?

――間違いないですね。

【1】いま1番ブーム・旬なもの、【2】熱が下がっているけど好きなもの、【3】昔はお世話になったもの……と3分類くらいはできないでしょうか?
捨てろとは言わないので、この“松・竹・梅”のランクに分け、部屋の中に飾るか、段ボールに収納するかを考えてみる。部屋の中に置くのはランクの高いものだけ。

週に1回・月に1回ぐらいは家の中を片付けて“松・竹・梅”を整理する――これも立派な防災です。 “推し”グッズたちと一緒に生きていくために、いま持って逃げるなら何かを考えてるだけでもいい。そういう小さな事から意識すると、自分の命を助ける……そして“推し”を助けることができるんじゃないかな。

大事なものをその手元に置いておきたい気持ちはわかるけれど、それがどんどんどんどん増えていくのであれば、デジタル化してしまうという方法も

――確かに、デジタルであればすぐに見ることができます。

どうしてもデジタル化したくない場合は、先ほどの“松・竹・梅”を基準にして、過去のものが収納しきれない場合はレンタル倉庫を借りることも一つの手段です。

大地震は必ずやってくる。避難生活に備えるために

――(編集部)枕元も伺いたいです。最近はスマホの睡眠アプリ『ポケモンスリープ』をやっていまして……睡眠中に充電をしているのですが、あまり良くないですか?

全然ありですよ! 充電したスマホを枕元に置いておくのはとてもよいと思います。
基本的に、寝る場所にはスマホと充電器とモバイルバッテリーを置いてほしいので、あながち間違っていないです。充電ケーブルが気になるようなら、首元近く以外の場所に置いておけば絡まる危険も少ないと思います。

オタクの防災 睡眠を測定するアプリ『ポケモンスリープ』(編集部撮影)

睡眠を測定するアプリ『ポケモンスリープ』(編集部私物)

スマホ関連以外だと、寝室には明かりになるものと水と食料、それから簡易携帯トイレも置いておきましょう。すべて100均で手に入ります。寝ている時が一番無防備なので、頭上に物が落ちてこない配置をしておくことも大切です。

――ありがとうございます。私含め、推し活や推しのための仕事で忙しくなると部屋のことも後回しになりがちですが、やはり日々の整理は大事ですね。

そう、少しずつでいいんです。防災って面倒に感じるし、いつ来るか分からないものにお金も時間もかけられないと思うかもしれませんが、災害は日常の延長線でしかないんです。
大地震は必ずやってくるし、台風や水害も、もう当たり前になっています。だけど、その準備さえしてれば、何も怖くない。いざという時に慌てないために日常からそれを意識してほしいです。

――1ヶ月後に見返したら、グッズの「松・竹・梅」が変わるかもしれないですしね。

優先順位をつけることに罪悪感を抱く方もいらっしゃいますが、いざという時に1番大好きなものを守れないと避難生活も心が折れてしまいます。

今回は防災の話をしましたけど、本当に大事なのは避難してからの生活なんですよ。皆さん「避難所にさえ行ければ大丈夫」と勘違いされますが、逃げてからがスタートなんです。床と天井しか用意されていないと思った方がいいくらい。

となると、なるべく避難所に行かず在宅避難するのが望ましいので、そのためにも家の中が崩壊しない工夫が必要です。今のお家で推しと私は生き延びれるのかということに、ぜひ1度立ち返って考えてみてください。

(執筆:通崎千穂、企画・編集:三鷹むつみ)

辻直美さん プロフィール

オタクの防災 『プチプラで「地震に強い部屋づくり」』著者:辻直美さん(扶桑社)

『プチプラで「地震に強い部屋づくり」』(扶桑社)

国際災害レスキューナース。一般社団法人育母塾代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。看護師歴32年、災害レスキューナース歴28年。被災地派遣は国内外30ヶ所以上。整理収納アドバイザー2級。著書に『レスキューナースが教えるプチプラ防災』(扶桑社)、『地震・台風時に動けるガイド : 大事な人を護る災害対策』(発行:Gakken)などがある。

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numan編集部

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