双海 しお
エンタメジャンルで執筆するフリーライター。2.5次元舞台が趣味かつライフワークで、よく劇場に出没しています。舞台とアニメとBLが好き。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。
「家族」と呼べるほどの仲間に出会えたことはありますか?
大人になればなるほど、全力で切磋琢磨しあえる仲間がいかに得難いものかを実感する人は多いでしょう。
自分たちの関係性を全力で「家族」で「宝」だと言い切るのは、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンの青学(せいがく)キャストとして、ひとつの青春をともに過ごした越前リョーマ役の今牧輝琉さん、堀尾聡史役のりょうたさん、加藤勝郎役の戸塚世那さん、水野カツオ役の市川愛大さんです。
2024年3月に本公演の卒業を迎えたばかりの4人は、5月・6月に開催される「ミュージカル『テニスの王子様』4 thシーズンDream Live 2024~Memorial Match~」に向けて絶賛稽古中です。本公演卒業という大きな節目は、少し時間の経った今、彼らのなかでどんな思い出になっているのかお話しを聞きました。
ミュージカル『テニスの王子様』は、許斐 剛さんの原作をもとに2003年にスタート。『テニミュ』の愛称で親しまれ、今年でシリーズ22年目に突入します。2020年からはミュージカル『新テニスの王子様』も始動し、こちらでも今牧さんが越前リョーマを演じています。
意外にも初めてという青学(せいがく)1年生キャストだけでの座談会。取材前後や撮影中も、今牧さんを中心につねに楽しそうなおしゃべりと笑い声が聞こえていました。気心知れた4人ならではの和気あいあいとした雰囲気とともに、「僕ら自身に当てた歌」だと感じた青学バラードへの思いや、「知れば知るほど愛が深まった」という役作りの話など、今だからこその『テニミュ』への思いを語ってもらいました。
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INDEX
――本公演終了から少し時間が経ったいまの心境を教えてください。卒業公演直後から気持ちの変化はありましたか。
今牧輝琉(以下、今牧):
僕はだいぶ前向きにはなれてきました。正直、本公演卒業は寂しかったですけど、「ドリライでまたみんなと会えるしな」という気持ちがあったので。でも、ドリライの千秋楽が近づいてきたら、たぶんまた寂しいほうに気持ちが向いちゃうと思います。
戸塚世那(以下、戸塚):
そうだね。いまはドリライに向けて「やってやるぞ」という気持ちがあるけど、最後の方はちょっとやばいんじゃないのかなって。
今牧:
ね! でも、『テニミュ』って本当にファミリーというか。「終わった後も(キャストのみんなに)会える」と思っちゃうんですよ。現によくプライベートでも会っていますし。だから、みんなとの別れが寂しいというよりかは、『テニミュ』ができなくなっちゃうことへの寂しさの方が強いですね。
(黙って頷くりょうたに)で、どうなの?
りょうた:
そうだね、立海公演が始まる前は、僕たちの青学(せいがく)にとって最後の戦いだから「この集大成をみなさんにきちんとお披露目したいな」という気持ちでいっぱいだったけど、やっぱり終わりが近づくにつれて「あれ、これやばいな。しばらくみんなに会えなくなっちゃうのか」って、気持ちがちょっと揺らぎそうになりましたね。
今牧:
でも、りょうたはプロ意識が強いから、舞台上では絶対にそんな素振り見せないんですよ。
りょうた:
舞台上では堀尾が入っているからね。
今牧:
マジで役に入るともう抜けないんですよ。だって千秋楽、「青春チーム」(青学バラード)で最後まで1人だけ泣かなかったよね?
りょうた:
なんとかね。
今牧:
でも、千秋楽が終わってみんなで楽屋で話していたら急に泣き出したんです。僕らもびっくりして「えー、りょうちゃん!?」みたいな。
りょうた:
溜まっていたのがダムみたいに決壊しちゃった(笑)。
今牧:
そうしたらまなてぃ(市川)がもらい泣きして(笑)。
市川愛大(以下、市川):
僕は立海公演が終わったあとは……モヤモヤした。「本当にもう終わったのか?」って終わったことを受け入れられなかった。でもこうしてドリライの稽古が始まって、「(しみじみと)は~、やっぱ『テニミュ』楽しいな」って。ドリライはペンライトもあるし周りにぐるっとお客さんもいるし。もう今はワクワクです。だからみんな……楽しもうね。
――青学バラード「青春チーム」の「僕らも応援されていたんだね」というトリオの歌詞が印象的でした。歌ってみての感想や楽曲への思いを聞かせてください。そのほか、みなさんのお気に入りの楽曲やフレーズは?
今牧:
「青春チーム」に関しては、キャラクターもそうなんですけど、僕ら自身にもあてた歌だったんですよ。本当にびっくりするくらい僕らの性格とキャラクターに通ずるところがある。だから、やっぱり(脚本・作詞・演出の三浦)香さんのそれを見抜く目ってすごいなと思いましたね。
戸塚:
そうそうそう。僕らだったからあの歌詞になったのかなって思うとすごく大好きですね。
市川:
(微笑みながら小さな声で)うんうん、大好き。
りょうた:
今まで僕らはずっと応援する側だったけど、それこそスタッフさんや先輩キャストの方々、今まで支えてくれたファンのみなさん、いろんな人が僕らのことも応援してくれたんだなって。客席で泣いていらっしゃる方が目に入ったときは「やばい、泣きそう」ってなりかけた。
今牧:
あのりょうたさんが?(笑)
りょうた:
そう、思わずりょうたが出そうだった。それくらい思い出深い曲ですね。
戸塚:
あとは立海公演の青学(せいがく)校歌「青学High Sprit~Must Be Strong!」のカチローソロの<ベンチから何度祈っただろう>かな。カチローの青学(せいがく)の勝利を信じてやまない思いがそこに乗せられていて、「毎公演、大切に歌おう」って思っていました。
市川:
僕は六角公演の「Make Waves」が、元気が出るし、身体が勝手に動いちゃう感じで好きです。「青春チーム」だと<お前らといればそれで良かったずっともっとこの先も仲間でいようぜ>が一番好きでした。
一同:
あ~!
市川:
僕らの卒業後も描いている感じがして、「あ~青学(せいがく)って人生でこの先もずっと続くんだな」って思えて。
今牧:
わかる、まじでそう思う。
僕は立海公演だとメインテーマとなった「フィナーレを始めよう」の<二度とないこの一球に>という歌詞も、卒業する僕らに通ずるものがあるなって思っていて。だからこそ千秋楽はより気合いが入りましたね。本当にもう二度とない一球だったから。
あと六角公演のトリオ曲「関東イロハ」も好きよ。
市川:
嬉しい。初めてのトリオだけの曲だったから嬉しかったね。
戸塚:
気合い入りまくりだったね。
今牧:
世那が一番喜んでいたよ(笑)。不動峰公演でも少しだけトリオが歌うところがあったけど、世那は聖ルドルフ・山吹公演からの参加だったから、「トリオとして歌えるのが本当に嬉しい」という世那の気持ちがこっちにも伝わってきました。
りょうた:
初めてのトリオだけの曲だったから、すごい裏で練習したよね。
戸塚:
そう、三声のハモりが大変だったんですよ。上と真ん中と下に分かれていて誰にも頼れないから、いっつも舞台に出る前に3人で裏で確認して、「よし、いけるぞ」って言ってから本番に臨んでいました。
――実際にドリライの稽古が始まってみて、いかがですか。
今牧:
本公演の時とはやっぱり違った心持ちというのもありますし、何より今まで4thシーズンを一緒にやってきた仲間たちがいるので、それが一番嬉しいです。あと中1トリオの3人とも大活躍します。
りょうた:
まだ始まったばかりだけどみんな気合いばっちりだし、楽しみだよね。
市川:
(稽古をしていると)「不動峰公演からこんなに経ったんだ」と思うし、あとドリライならではの新しいキャラクター同士の絡みも見られるし、すごく新鮮。新しい世界に飛び込んだみたいな。これからワクワクが待っていると思うので、みんな楽しんでいこうか。
今牧:
楽しも!
――どんな楽曲や演出が観られるのか、楽しみにしています! ここからは役作りについてお聞きします。一緒にお芝居をするなかで、お互いの芝居や役作りで「影響を受け合っているな」と感じた部分はどんなところでしょう。
戸塚:
愛大もりょうたも、それこそ輝琉も、本当に役としてぶつかってきてくれるので、こっちも安心して近くにいられたし、ぶつかっていけたし、たくさん刺激をもらいましたね。
輝琉は普段はこんな感じなんですけど(笑)、役に入ると本当にリョーマそのもので。トリオのなかで一番小柄なカチローとしては、同じように小さいリョーマが活躍する姿への「僕もこうなりたい」という気持ちが本当に強かったので、応援で一緒に戦っている気持ちにさせてもらっていました。
今牧:
りょうたは「僕の堀尾といえばりょうたしかいない」っていう存在ですし、なんかもう相棒みたいなものですね。本番中に何かあったとしても、りょうたって頭の回転も速いし真面目なのですごく頼りになるんですよ。りょうたが僕の堀尾でよかったなって。
まなてぃとは学校が一緒だったんですよ。だからまなてぃとは3人の中で最初に仲良くなったし、放課後に一緒に遊ぶこともあったので一番一緒にいる時間が長かったと思います。まなてぃも相棒だし親友だし、かけがえのない存在。いっぱい笑わせてくれるしね。プライベートで遊びにいくってなったら、この坊主は必須です。必須坊主です(笑)。
市川:
(笑)。
今牧:
世那は何より本当に頼りになる存在なんです。世那は聖ルドルフ・山吹公演からの参戦でしたけど、トリオ2人をまとめてくれるなという感じがあって。世那がしっかりしていたから1年生がまとまったんだと思います。トリオがこの3人じゃなかったら、たぶん、僕のリョーマは今いないと思います。
双海 しお
エンタメジャンルで執筆するフリーライター。2.5次元舞台が趣味かつライフワークで、よく劇場に出没しています。舞台とアニメとBLが好き。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。
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