zash
子供の頃から培ってきた映画、海外ドラマ、特撮、アニメの知識を活かして活動中。各媒体でコラム、取材レポート、インタビュー記事を執筆する他、雑誌やマスコミ用リリースへの寄稿も行っている。
2023年11月3日より劇場公開中の映画『ゴジラ-1.0』。2016年公開の大ヒット作『シン・ゴジラ』以来、約7年ぶりの「ゴジラ」シリーズ最新作にして、シリーズ通算30作、生誕70周年記念作品でもある本作は、公開初日から日本中を席巻し、SNSなどを中心に大きな話題となっています。
そんな『ゴジラ-1.0』は、海外でも超異例の大ヒットを記録していることをご存じでしょうか? しかも、どうやら日本と海外とでは少々異なる反応が見受けられるようなのです。
今回は、『ゴジラ-1.0』に対する海外ファンの反応と、僭越ながら筆者が本作に対して受けた印象とを比較してみたいと思います。
INDEX
『ゴジラ-1.0』は、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの山崎貴監督がメガホンをとった、「ゴジラ」シリーズ待望の最新作。
第二次世界大戦後の日本を舞台に、突如、東京に襲来したゴジラと民間の人々の生き残りをかけた壮絶な戦いの様子を映し出しています。記念すべき第1作で1954年公開の『ゴジラ』よりも以前の時代設定が成されている点なども大きな話題となりました。
そんな本作は、日本から遅れること約1か月。全米で、12月1日より邦画実写史上最大規模とも言える劇場数で公開。瞬く間に邦画実写作品の興行収入記録を打ち破り、34年ぶりに歴史を塗り替える快挙を成し遂げました。
大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」でも軒並み高評価を記録し、映画「パシフィック・リム」シリーズなどでも知られ、日本の怪獣映画の大ファンであることを公言しているギレルモ・デル・トロ監督も「奇跡だ」と自身のSNSで発信するなど、今まさにアメリカでは空前の“ゴジラブーム”が起こっているのです。
その模様は日本のニュースなどでも数多く取り上げられており、「ゴジラでハリウッドは日本に勝てない」といった声が多数寄せられていました。
なかでも印象的だったのは、
「日本はゴジラを偉大な存在として描くのが上手い。自然の脅威として描き思想的だ」
「映画の世界ではあるが、核が何をもたらすか想像することができる」
「ゴジラが街を破壊するシーンが観たいのに、何も破壊しないで!と感じてしまう」
……などのゴジラに対して恐怖心を抱いたファンが多かったということ。
ゴジラはもともと“核兵器”や“原爆”の比喩として描かれてきた怪獣で、約70年前の第1作には戦争体験者である製作陣の反戦への強いメッセージが込められています。
しかしながら、今まさに世界は再び争い合う時代へと歩を進めており、連日、胸が締め付けられるようなニュースが駆け巡っているというのが現実です。
アメリカ人の多くは「9.11」などで他国から突然攻撃を受ける言いようのない恐怖を経験しています。だからこそ、ゴジラという破壊の化身に対して感じる恐怖が印象的に映ったのかもしれません。
日本では世界のどこかで「戦争が起きている」という事実をわかっていても本作と関連付けて観るよりというよりは、やはりエンターテイメント性を先行してしまう部分が少なからずあるように思います。
リアルな戦後描写には圧倒されたものの、平和慣れしてしまっている国民性が多少なりともあるのかもしれません。そういった意味でも、国によって本作の印象がガラリと変わる作品でもあるわけです。
それではレビュワーはどのような意見を示しているのでしょうか? イギリス大手「ガーディアン紙」は、本作を「シリーズ最高傑作の一つ」と称賛しています。
『ゴジラ対へドラ』(1972)の大ファンだという同レビュワーは「オリジナルの『ゴジラ』(1954)、数年前の『シン・ゴジラ』(2016)と同様に、歴史のトラウマを中心に、最終的には人類が力を合わせて打ち負かす物語を作り上げている」と説明。
オリジナルは「原爆・戦争」、『シン・ゴジラ』が「東日本大震災」から影響を受けたストーリーになっており、本作はまさに敗戦直後からストーリーが幕を開ける点に着目。
「アメリカのゴジラ映画は救世主としてキング・コングなどのモンスターに頼ることが好まれる動きだが、最も効果的な手段は民間人だ」と続けます。
確かにアメリカ版の『GODZILLA』には、「平成VSシリーズ」と呼ばれるゴジラ作品の影響が色濃く、「怪獣VS怪獣」という構図で物語が展開されている印象を受けます。
対して近年の『ゴジラ-1.0』や『シン・ゴジラ』は、人類がいかにして対処していくかというストーリーの元、ゴジラを現実世界における「災害」のような捉え方をしているように感じます。
続けて同レビュワーは「山崎貴監督は、全体を通して見事に感情のネジを締めたり緩めたりしている」と綴ります。
戦争で難を逃れた主人公の敷島と典子、そして幼き明子の3人に、どうか幸せになってほしいと願いながらも悲劇が襲い、絶望の中でゴジラを打ち負かし、そして……という、感情の起伏がまるでジェットコースターのようであったのは間違いないですね。
最後に同レビューは「これは“可愛い”ゴジラではありません。神のような、まさに死の権化であり、世界の破壊者であり、歴史そのものと同じように避けられない存在である」と締めくくられています。
イギリスやアイルランドでもまたアメリカ同様に邦画歴代興行収入記録を塗り換えている『ゴジラ-1.0』。やはり海外の反応としては、リアルな戦争・戦後描写に対する評価が非常に高かった印象を受けます。
怪獣映画や特撮映画という「ジャンルもの」としての評価ではなく、一本の作品として、そういった固定観念を取っ払った考察が多いこと、日本の映画ファンとして非常にうれしい限りです。
(執筆:zash)
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子供の頃から培ってきた映画、海外ドラマ、特撮、アニメの知識を活かして活動中。各媒体でコラム、取材レポート、インタビュー記事を執筆する他、雑誌やマスコミ用リリースへの寄稿も行っている。
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