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舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)―一色洋平&廣野凌大&眞嶋秀斗インタビュー

舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)―一色洋平&廣野凌大&眞嶋秀斗エルリック兄弟インタビュー「Wキャストの役作りはいろいろな解き方のある証明問題のよう」

(舞台の配役が)Wキャストと聞いて何を思い浮かべますか?
「何公演見に行こう」
「いろんな組み合わせで見てみたい」
「どっちの配役が好みかな」

そんな意見も出てくるWキャストで、ひとつの役を演じた一色洋平さんと廣野凌大さんは、お互いをライバルではなくふたりでエドを作ってきた仲間だと語ります。もうひとりのエドがいてくれて本当によかったと話すふたり。そして、兄ふたりを近くで見ていたアル役の眞嶋秀斗さんも、鎧姿になってからはスーツアクターがアルを演じるため二人三脚でのお芝居に。

2024年6月8日から公演が始まる、舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場―エドワード・エルリックをWキャストで務める一色洋平さん廣野凌大さん、そして弟のアルフォンス・エルリックを演じる眞嶋秀斗さんに前作での思い出から最新作への意気込みまでお話を伺いました。

舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)―一色洋平&廣野凌大&眞嶋秀斗インタビュー

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大人になって読むと感じ方が違った「ハガレン」

――前回ではロイ・マスタング役の蒼木陣さん、和田琢磨さん対談をさせていただいたのですが、今回はエルリック兄弟座談会です! 皆さん作品への思い入れのほどは?

廣野凌大(以下、廣野):
子供の頃から見ていた作品だもんね?

一色洋平(以下、一色):
我々はドンピシャ世代だと思います! 学生時代に漫画の貸し借りが流行った時期があって、友達が初めて貸してくれた漫画が「鋼の錬金術師」だったんです。

眞嶋秀斗(以下、眞嶋):
僕はアニメから入りました。

廣野:
僕もアニメからですね。OP主題歌だったポルノグラフィティさんの「メリッサ」がすごく印象に残っています。当時は見る側でしたが、やる側・演じる側になったことでまた原作を読み直して、さらに「ハガレン」が好きになりました

一色:
大人になってから読むとまた感じ方が違うよね。

眞嶋:
そうですね。人種問題が描かれていたり。

廣野:
子供の頃はさ、もうこれ(手合わせ錬成のポーズ)のイメージが強かったし、エドやマスタングがかっこよくて、アルがかわいくてっていうイメージだったけど、大人になって改めて読むと全然印象が違う!

眞嶋:
僕も去年の舞台を同い年の男友達が見に来てくれたんですけど、その翌日に「漫画全巻買って読み直す」って連絡が来て。

一色・廣野:
すごい!

眞嶋:
それで「エンヴィー役やりたい」って言ってました(笑)。

一色・廣野:
あははは!(笑)

眞嶋:
「エンヴィーはもういるよ」って言っておきました(笑)。

廣野:
その友達、身長高くないでしょ?

眞嶋:
やや(笑)。

一色:
ちゃんと自分に合いそうな役を分析できてる(笑)。

眞嶋:
むちゃくちゃ熱く語っていましたね。大人も子供も知っている作品だから、観にきてくれた知人も「また観たい」と言ってくれたり、「原作読み直す」っていろんな人に言われたりしたので、自分だけじゃなくたくさんの人の思い入れが強い作品だと改めて思いました。

舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)―一色洋平&廣野凌大&眞嶋秀斗インタビュー

――一色さんと廣野さんはエドワード・エルリック役のWキャストですが、前回同じ役を同じ台本で演じられていかがでしたか? 本番は別々の公演に出演されますが、稽古は一緒でしたか?

廣野:
稽古はほぼ一緒でした。
お互いの演技を観て、刺激されることが多かったですね。

一色:
そうそれ! お芝居をしているとどんどん没入してしまって、ほかからどう見えているのかという根本的な部分に気づきにくくなるんですけど、そこにもうひとり同じ役がいることによって冷静に見られる部分もありました。脚本・演出の石丸さち子さんの言わんとするところを自分が表現できなかったとき「凌大、次やってみて」と言われた凌ちゃんができたものを観て「こういうことか」と分かったり。

僕のなかではライバルとして意識するというより、ふたりで作ってきたエドだと思っていて。凌ちゃんがいてくれて本当によかったなと思っています。

廣野:
僕も本当にその通りで、いいところはいいところとして取り込んできた気がします。自分には出せないものは「これは無理だな」と思えるけれど、でも「俺の強みはこれだ」という発見もできて、自分を客観的に見つめ直せる場でもありました。洋平さんのエドは俺のエドとは全然違うので、ある意味ふたりいることでエドの二面性みたいな部分が深まった贅沢な時間でした。

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プレゼントに現れるWエドの思考!廣野エドは「くし」、一色エドは「カーディガン」

――前作での蒼木陣さんと和田琢磨さんのロイ・マスタングキャスト対談の際は、一色さんは「エドを計算して作りそう」、廣野さんは「フラットなエドになりそう」というお話が出ていましたが、おふたり的にはいかがでしたか?

一色:
けっこう合ってるかも。

廣野:
俺はフラットすぎて「もっとお芝居して」みたいなこともあったよね?

一色・眞嶋:
あははは!(笑)

一色:
あったね(笑)。僕らは本当に真逆で、稽古場でさち子さんに言われた「凌大は自然に相手役を見ることができるから、その眼差しをよく見て盗んでおきな」という言葉が忘れられなくて……。それは僕も感じていたことだったから、改めてさち子さんに廣野エドの魅力を突き付けられたときに「なるほどそういうことか」とも思って。昨年の舞台『ハガレン』以降、何作かほかの舞台にも出演しましたが、よくその言葉を思い出してお芝居をしていました。

台本に「相手を見る」と書かれていても、お芝居として見るのではなくて、人として見られるというのが廣野エドの魅力なんですよね。それは稽古場で2か月ずっと見てきた眼差しだったので、憧れていました。自分ができるようになったかはまだ分かりませんが、目指している部分です。

廣野:
僕は逆に自然すぎて、情熱を燃え上がらせなければいけないときに、力の違いを食らった感じがしました。僕が600ワットなら、洋平さんは1000ワットのパワーだったみたいな。

一色:
え、そこ電子レンジなの?(笑)

廣野:
電子レンジで(笑)。

眞嶋:
そんなお二人と、それぞれお芝居ができるのはすごく贅沢なことですよね。僕はふたりの違いを舞台上で存分に食らうことができて毎回新鮮だし楽しかったです。廣野くんは洋平さんの情熱の強さを言っていましたが、廣野くんは稽古が進むにつれ「ここができないから、今日トライしてみるわ」って素直に言ってぶつかっていくんですよ。自分はそんなことできなかったので、有言実行でステップアップしていく姿が印象的でした。ああ言いつつも、冷静に構築してくるタイプなんじゃないかと個人的には思っています。

前作では、エドが錬金術で錬成物を作ってお母さんにプレゼントをするシーンがありまして。稽古場からそれぞれ自由に提案してまったく違うものを作っていたのですが、そのシーンをやっているときにふたりの違いを一番感じました。

廣野:
僕のほうは“くし”を錬成して、洋平さんは洋服でしたよね。

一色:
そう、カーディガンを錬成した!

廣野:
同じシーンで、それぞれのエドで母親にあげるものが違うだけなんだよね。台詞とかも同じだし。

眞嶋:
それだけの違いなんですけど、持って行き方とか見せ方とか、やっぱりそれぞれ違うから本当に楽しくて。

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――錬成物に「くし」と「カーディガン」を選んだのはなぜですか?

一色:
僕はまず、子供でも作れそうな物ってなんだろうと考えたんです。彼らは天才と言われていますが、まずは布1枚からできるようなものなんじゃないかなって。あとは、後ろからかけてあげてエドの優しさが表現できるようなものがいいな、と考えたときにカーディガンが思いついたんです。

廣野:
僕は漫画を読んだときに、母ちゃんの髪がきれいだなと思って。

一色:
すてきだね!

廣野:
その後、髪にまつわるエピソードも出てくるじゃないですか。実はその伏線も兼ねていました。

一色:
本当に!? すごいね!!

眞嶋:
後付けじゃなく?

廣野:
後付けじゃなく! それもあってのくしだったんだけど、たぶんさち子さんにも伝わっていない気がする……。

一色・眞嶋:
あははははは!(笑)

一色:
それ絶対、伝わったほうがいいよね!

眞嶋:
気づいてる人はいたよ、絶対!

一色:
これはいろんな人に知ってほしい!

眞嶋:
こうやって構築してるんですね。

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アル役の眞嶋さんとスーツアクターの桜田さんは目の奥が似ている

――眞嶋さんはスーツアクターの桜田航成さんとアルフォンス・エルリックについてお話されましたか?

眞嶋:
話し合って作ったというよりは、当たって砕けて稽古を重ねるうちにまとまってきたようなイメージがあります。航成さんは本当にアルに対する愛が強くて、所作から呼吸の仕方までまさしくアルそのままだったので、僕はそれを見て学ぶことが多かったです。お互いにアドバイスをし合ったわけではないですが、ふとしたときに航成さんが「ここの言い方をもうちょっと変えたら良くなるんじゃないかな」みたいな提案をしてくれるときがあって。自分にとっての薬みたいな感じで受け取っていました。

――エド役のおふたりは、生身のアルと鎧のアルとのお芝居で何か違いはありましたか?

廣野:
不思議なことに、別々の人と芝居をしているというよりかは、ひとりの“アルフォンス”と芝居をしている感覚だったから、ふたりは一心同体だったんじゃないかと思います。スーツアクターだから何かが違ったとかはなくて、普通にその場で会話をしている感じでした。

一色:
ふたりとも目がそっくりなんです。稽古でもたまに桜田さんが鎧をつけずにお芝居をされることがあったんですけど……生身の桜田さんとのお芝居ですね(笑)。

廣野・眞嶋:
まさに生身の(笑)。

一色:
ふたりは目の奥がとても似ていて、それが印象的でした。さっきは秀斗が僕らのエドとしてのお芝居の違いを語ってくれましたが、僕らも僕らで「秀斗と桜田さんは我々の芝居にすぐ合わせてくれるよね」ってよく稽古中に話していました。

眞嶋:
楽屋で桜田さんとふたりで過ごしているときなんかは、お互いゆったりペースなほうではあるので、そういう雰囲気は共通しているかもしれないです。

廣野:
ふたりは時間の流れ方が似てるよね。

一色:
そういう感じあるね。

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――では、エド役おふたりの時間の流れ方は?

一色・廣野:
俺らは違う!(笑)

廣野:
似ているのは、お互いへの差し入れの置き方が不器用なこと?

一色:
あははははは!(笑)

廣野:
でも洋平さんはね、メッセージを書いてくれているんですよ。「あと何公演あるから頑張れ!」みたいな。俺はこう、ポツンと物だけ置いておく……。

全員:
あははははは!(笑)

一色:
それがいいんだけどね(笑)。

廣野:
「分かってくれるだろう」って。

一色:
誰からとか書かなくても分かる、すぐ分かる(笑)。
秀斗と桜田さんがシンクロしているように、僕のなかでもずっと「凌ちゃん元気かな?」っていうのがどこかしらで気になっていて。本番中なんだから、自分が元気でいればいいじゃないですか。完全におせっかいなんですけど、栄養ドリンク買うときも絶対ふたつ買っちゃうんですよね。それで、ひとつを楽屋の机の上に置いておくんです。

舞台『鋼の錬金術師』―それぞれの戦場(いくさば)―一色洋平&廣野凌大&眞嶋秀斗インタビュー

蒼木・和田のマスタングは“涙の質”が違った

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numan編集部

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