羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
――2024年3月27日発売の4thアルバムについてもお話を聞かせてください。タイトルの『Reflection』を含め、アルバムのコンセプトはどのように決めていったのでしょうか?
大橋:
今回は、いろんな私をいろんな角度から見てほしいと『Reflection』というタイトルを付けました。
これまでのアルバムって『起動 ~Start Up!~』 『PROGRESS』『WINGS』と、「始まり」「進化し」「羽ばたく」……「ホップ・ステップ・ジャンプ!」という前向きで元気な印象のあるタイトルを付けてきたんですね。
それは、いろんなジャンルの楽曲を歌ってはいるものの、タイアップでアニメのオープニングテーマを担当する機会が多かったので、必然的に明るく元気な楽曲が多かったという理由があります。
だけど、中には自分のちょっと暗い部分や自分の内側にある感情を歌う曲もあったから、今回はそんな多角的な自分を見せていけたらいいなとコンセプトを定めて。「reflection」という言葉には、「反射、多角的、内省する」など、いろんな意味が含まれているのでピッタリだと思ったので、このアルバムタイトルになりました。
――様々なクリエイターさんが楽曲制作に関わり、ジャンルレスな楽曲が収録されているので、「多角的」という言葉がピッタリですね。
大橋:
実は、今回楽曲制作に携わってくれているクリエイターさんたちはみんな私から「この方に作っていただきたいです」とリクエストしました。どの楽曲もとっても素敵でお気に入りです。
――一緒に楽曲制作をして印象に残っているクリエイターさんはいますか?
大橋:
「水鏡」を制作してくださったBimiさんと「Flash Summit!!」の田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)さん。
Bimiさんは以前から楽曲を聴いていて、Bimiさんの創り出す世界観にいつも圧倒されていましたし、私には表現できない自分の内面の奥深くを反映させた楽曲に憧れていました。なので、今回勇気を出してお願いしたら作ってくださったんです。
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すごく素敵な楽曲を作っていただいたのですが、正しい音程を取るのがとても難しく、過去1番苦戦しました……。
だけど、「水鏡」のレコーディングにBimiさんが来てくださって、その場でディレクションをしてくださったんですよ。すごくアーティスティックなディレクションだったのですが、ご自身もアーティストとして活躍されているからか歌い手側の視点でとても分かりやすくアドバイスをしてくださいました。
――Bimiさんから言われて、特に「なるほど!」と思ったアドバイスはありますか?
大橋:
「ここはもっと色気を出して歌ってください」と言われたのが強く印象に残っています。自分の楽曲で色気を出すことは今までなかったので、最初はすごく恥ずかしくて……!
だけど時間が経った今、改めてこの曲を見つめ直すと、「恥ずかしくて隠していたけれど、ずっと持ってきたもの」をようやく出せたような感覚があります。
私だけではなかなか引き出すことのできない一面を引き出してくださって、とてもありがたかったです。恥ずかしさはありますけど、新しい自分をファンの皆さんに見てもらえる1曲になったと思っています。
――とても“大人っぽさ”を感じる楽曲だったので納得です。そして、もう1つ挙げていただいた「Flash Summit!!」の田淵さん。落ちサビからのアウトロまでの流れが、「田淵さん節全開だな!」と思いながら聴いていました。
大橋:
そうなんです! 田淵さん節全開の曲を作っていただきました! 「いつか楽曲を作ってほしい」とずっと思っていたので、今回お願いすることができて本当に嬉しいです。
――デモ音源を最初に聴いた時は、いかがでしたか?
大橋:
最高でした……。UNISON SQUARE GARDENの「桜のあと (all quartets lead to the?)」という曲が大好きなんです。疾走感があって爽やかなのに、泣きメロ的な切なさがあって。
だから、田淵さんにご依頼する時にも、「桜のあと」を例に出しながら「ライブのアンコールやライブのラストにみんなで歌って輝くような楽曲を歌ってみたいです」とお伝えしました。
加えて、「打ち込みなしの完全バンドサウンドで、ど頭はアカペラが良いです! どんなに難しくても頑張って歌います!」といろいろオーダーしました(笑)。
――実際にレコーディングしてみてどうだったのでしょうか。苦戦しましたか?
大橋:
すごく大変でした……(苦笑)。でも、「頑張ります!」と言った手前、頑張らなきゃいけないと思って臨みました。
大変というのも、実は「Flash Summit!!」のレコーディングの時、私の中で少しスランプだったからです。今までにやったことのないような歌い方を勉強しなければいけなかったタイミングで、「どんな歌い方が正解なんだろう……」「正しい発声をしながら自分らしさを出すためには、どうしたらいいんだろう」「どうすれば歌で本物の自分になるんだろう」と悶々としていました。
そんな悩みの中でレコーディングした「Flash Summit!!」。前向きな楽曲に助けられ、“自分らしい歌い方”をたくさん詰め込めた気がしています。「これが大橋彩香だぞ!」と自信を持って言えるような歌い方ができたんじゃないかな。光を浴びたような、そんなレコーディングでした。
――アルバムのリード曲でもある「Flash Summit!!」ですが、リード曲なのに1番最後に持ってきているのは珍しいなと思いました。
大橋:
以前から「インスト曲から始まるアルバムを作りたい」とお話をしていたんですね。今回はその要望を汲んでくださって、プロデューサーさんから「『Stone Cold』にインストをつけるのはどうですか?」とご提案いただきました。
そのあと、最後にどの曲を持ってくるか考えたのですが、「水鏡」か「Flash Summit!!」で悩んだんですよ。いろいろ考えたのですが、シャッフルせずアルバムの曲順通りに聴いた時に「やっぱり大橋彩香ってこれだよな」と思ってもらえるようにしたくて。
「大橋彩香のパブリックイメージでアルバムを締めたい」と思ったし、「ライブでラストに歌える曲」とご依頼した経緯もあり、「Flash Summit!!」を最後に持ってきました。
――曲順まで考え尽くされたアルバムというのが伝わってきます。ちなみに、大橋さんの“推し曲”はどの曲ですか?
大橋:
どの曲も素敵ですが、私の推し曲は「Don't need color」です。最初にデモ音源を聴いた時も、耳にスッと入ってきて、レコーディングも苦戦せず、とてものびのび歌えた楽曲でした。生バンドで早く歌いたいと思っています。
――「Don't need color」の推しポイントがありましたら知りたいです。
大橋:
歌詞ですね。「Don't need color」は自分の悩みを歌詞にしてもらっています。
私は曲調にこだわるタイプなので毎回「こういう曲調がいいです」とお伝えすることはあるのですが、歌詞に関してはあまり意見を言わないことが多いんです。だけど、今回のアルバムを制作する前に、プロデューサーさんから「どんな歌詞を歌いたい?」と聞いていただくことが多くて。それなら、自分が考えていることや思いを歌詞に落とし込んでもらえたら嬉しいなと思いました。
私、昔から「あまり個性がないこと」「自分は器用貧乏であること」と悩みながら生きてきたんですね。声優やアーティストの世界って個性がある人が強いから、「この世界でどう生きていけばいいのか」「無個性の自分の価値はなんだろうか」と思っていることを歌にしてもらいたいとお願いしました。
そしたら、「無個性は何色にもなれるから大丈夫」と言ってもらえているような前向きな歌詞にしてくださって……個性を色に例えて、その例える色に赤(真紅)を選ぶという。よく楽曲制作に携わってくださるKanata Okajimaさんが「Don't need color」も作詞をしてくださったのですが、天才だなと思いました。
私の悩みがいつもポジティブな歌に変わっているから、Okajimaさんに励まされている気持ちになります(笑)。直接やり取りすることはないのですが、出来上がった歌詞を見て「頑張ってね」と言われているような気がして。絶対にバッドエンドの曲がないので、すごくありがたいです。毎回噛みしめながら歌っています。
――「Don't need color」の歌詞を見て、個性に対して前向きな気持ちになれましたか?
大橋:
元気はもらえましたけど、自分の個性と向き合うことにはまだまだ時間がかかりそう(苦笑)。
ただ一つ思っているのは、根本的な解決に至らずとも、こういう曲の存在があることによって、後ろ向きにならずにいられるということ。「Don't need color」は歌詞が響く人も多いんじゃないかなと思います。定期的に聴いて己の自己肯定感を上げていきたいし、リスナーの皆さんにも自己肯定感を上げてもらいたいです。
私自身が「己とは何か」「自分と他者との関係性とは」を悩んでいた時期に制作したアルバムだからか、「Don't need color」のほかにも自己肯定感を上げてくれるような楽曲が多いと思います。
――クリエイターさんの力を借りながらも、大橋さんご自身が1曲1曲をこだわって制作していることが分かります。
大橋:
「自分の感情メモ」のようなものをスマホのメモ帳に書いていて、そのメモの内容を抜粋して楽曲を作っていただいたんですね。比較的新しい感情を楽曲の中に入れてもらったので、数年経って聴いた時に「2024年の大橋彩香はこんなことを感じていたんだな」と思うアルバムに仕上がりました。
――今年でアーティスト活動10周年を迎える大橋さん。「推されること」に対して、どのような想いを抱いているか教えてください。
大橋:
ただただ「ありがたい」という気持ちです。私自身にも推しがいるからこそ、“推しがいることでの時間とお金の大変さ”を理解しているつもりです。
推しが出ている配信を毎回観たり、グッズを買ったり、ファンクラブの会員費を払ったり、ライブやイベントのチケットを取ったり、ライブに行くために遠征をしたり、チケットが取れてもいい席じゃなかったり……遠征は朝早く家を出て、帰りはすごく遅いから、翌日普通に日常生活を送るのが難しいくらい疲れたり。しっかり情報を追っていないと見逃すこともあって、見逃すと落ち込みますしね。推しがいるってすごく大変なことじゃないですか。
私を推してくれている方たちは、仕事や学校の行き帰りの時間とか、アニメ、ラジオ、ライブなど様々なコンテンツを追って、私のためにわざわざ時間を割いてくれている。ありがたい以外の言葉が見つからないですよ……。
でも、推しがいることによって「自分の心に潤いが保たれる」と知っているので、自分がみんなの湿度のようなものになっているのであれば、すごく嬉しいなと思います。
――「みんなの心の潤いになりたい」とのことですが、ご自身とファンをどんな関係性だと感じていますか?
大橋:
ギブアンドテイクの関係だと思っています! もう少し具体的にお伝えするなら、お互いにいろんなものを与え合う「良きビジネスパートナー」のような関係ですね。
あと、お互いに「心理カウンセラー」みたいなところもあると思います。
――「心理カウンセラー」ですか?
大橋:
皆さんは大橋彩香を推すことで元気に生活できますし、私は皆さんからのファンレターがメンタルケアになっている。私は自分が必要とされていないと落ち込むタイプなので、落ち込んだ時に皆さんからのファンレターを読むと「私って必要とされているんだ。1人でも手紙を送ってくれる人がいる間は、お仕事頑張ろう……!」と思えるんですよね。
私もファンレターを書いた経験があるのですが、ファンレターって書くのがすごく大変なんですよ。毎回カワイイ便箋を買って、下書きして、書きたいことを要約する。すごく労力がかかるのに、毎回イベントごとにファンレターを送ってくださる方もいて、すごく尊敬します。
ライブで応援してくれることはもちろん嬉しいけど、ファンレターはより近くに感じられて好きです。
(DSC01723)
――素敵なお話ありがとうございます! それでは最後に、10周年を迎えた大橋さんが今考えている“推される側としての目標”をお聞かせください。
大橋:
「自慢の推しになる」ですね。「大橋彩香を推しているんだ!」と言った時に、「知らないと思うけれど……」と遠慮がちに説明されるより、「知ってる! あの子すごいよね」と言われるような人間になりたいです。
だから、胸を張ってドヤ顔が出来るくらいの自慢の推しになれるように、失墜することなく頑張っていきたいなと思います(笑)。
(執筆:羽賀こはく、取材・編集:阿部裕華、撮影:上野留加)
「numan」公式インスタでは、大橋彩香さんのサイン入りチェキプレゼントキャンペーンを実施中!
大橋彩香 4th Album
『Reflection』
3月27日発売
【初回限定盤(CD+BD)】
品番:LACA-35084
価格:¥4,950(税込)
【通常盤(CD)】
品番:LACA-25084
価格:¥3,300(税込)
<収録内容>
1.Prism (Instrumental)
2.Stone Cold
3.Be My Friend!!!
4.Don't need color
5.Connect
6.Nobody Knows
7.水鏡
8.Four Leaves
9.Lovely Days
10.にゃんだーわんだーデイズ
11.大橋彩香 a.k.a HASSY #HASHTAG ME
12.Please, please!
13.Flash Summit!!
大橋彩香(おおはし・あやか)
1994年9月13日生まれ、東京都出身。
大橋彩香 オフィシャルサイト: https://ohashiayaka.com/
大橋彩香 公式X(旧:Twitter): https://x.com/AyakaOhashi
大橋彩香 Instagram: https://www.instagram.com/ayaka_ohashi/
大橋彩香 アーティストYouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/@ayaka_ohashi
羽賀こはく
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