『葬送のフリーレン』に海外勢が戸惑う理由「ボス倒しちゃったの?」一方、評論家は“哲学的なテーマ”だと絶賛も

2023年の秋アニメとして放送を開始した『葬送のフリーレン』は、アニメの製作が始まった時点から大きな話題となっていた作品です。テレビアニメとしては異例の「金曜ロードショー」の2時間枠にて第1話を放送するという出来事もありました。

毎話繰り広げられる独自の世界観を築き上げた作風や感動的なストーリーが多くの視聴者を虜にし、現在、国内外で大きな話題となっています。そんな『葬送のフリーレン』は、海外でどのような反応を得ているのでしょうか?

アニメ『葬送のフリーレン』メインビジュアル

アニメ『葬送のフリーレン』メインビジュアル

魔王討伐後のスタート。珍しい設定に困惑する人々も

『葬送のフリーレン』は、「週刊少年サンデー」にて2020年より連載中の山田鐘人(原作)とアベツカサ(作画)による同名漫画を原作としています。

千年以上も生きるとされるエルフであることから、その長きにわたる旅路を人生のほんの一部としか考えていなかったフリーレン。しかし、勇者ヒンメルの死をきっかけに、人間を知るための旅に出ることを決意。フリーレンが、冒険の最中に様々な人々と出会っていく様を描き出しています。

原作は第14回マンガ大賞や第25回手塚治虫文化賞新生賞など、様々な賞に輝いており、まさに待望のアニメ化となったわけです。

『葬送のフリーレン』1巻(小学館)

『葬送のフリーレン』1巻(小学館)

そんな本作に対する海外のリアクターたちはどんな反応を見せているのでしょうか。まずはジャンル問わずに多種多様なアニメ作品を視聴し続け、YouTubeにリアクション動画を投稿しているアメリカ在住の「YaBoyRoshi」の3人。

視聴前からすでに「今期のアニメの中でも間違いなく目玉の一つになる作品だ」と期待十分のご様子。中央に座するドワイトのみが予告編などで前情報を収集済みのようです。

いざ第1話の視聴を開始すると画面向かって左に座るルパサンやグループの紅一点シーラは「もうラスボスを倒したってこと…?」と少々困惑した表情を浮かべます。

その後も物語が進む中で疑問を感じる部分が多く、頭の上のクエスチョンマークの消えない3人は「このアニメはどこに向かっているんだ?」「もう50年も経ったのか!?」「フリーレンは年を取らないのか? もしくは時間の流れが他よりもゆっくりなのか?」と、魔王討伐後という“終わりから始まる物語”に戸惑いを隠しきれない様子でした。

彼らの他にも海外のリアクターたちは皆一様に、物語の導入に対して違和感を覚えている様子が見て取れました。ゲーム等ではエピローグとして描かれることが多いラスボス討伐後の世界。一方で、その世界観に馴染みのない層は不思議に思うことが多かったようです。

「過去のシーンがフリーレンの時間経過を強調する」と高評価

対して、海外のレビュワーは本作に対してどんな反応を示しているのでしょうか。大手エンターテイメントサイト「DigitalSpy」は、「今年の最も素晴らしいファンタジーシリーズ」と題したレビューを掲載。

「オープニングエピソードを視聴した時点で、ヒットすることを確信した」と、すでに第1話の段階から魅力を大いに感じている文面が踊っています。

「本作は壮大な冒険を呼び起こすというよりも、豊かなトーンを捉えることに重きを置き、魅力的で穏やかで静かなシリーズである」と、作品の世界観を見事に感じ取った様子が記されています。

『葬送のフリーレン』12巻(小学館)

『葬送のフリーレン』12巻(小学館)

『ウィッチャー』や『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』とは正反対であると、世界的に人気を博しているファンタジー・ドラマを引き合いに出しながら、“終わりから始まる物語”への率直な意見を述べます。また作画に対しても「まるで水彩画のようで、夢を見ているかのようだ」と高評価。

レビューの中では、同じくファンタジックな世界を舞台にしている『王様ランキング』と共通する部分も挙げられており「おとぎ話を観ているかのようなノスタルジックな気持ちにさせ、ヨーロッパのファンタジーを思い起こさせる」とのこと。

「全体的に居心地の良い穏やかな雰囲気が醸し出されている」と、われわれ日本の視聴者のほとんどが感じている本作の魅力を代弁してくれたかのような素晴らしいレビューとなっています。

本作は、魔王を倒した際の重要なシーンよりも、酒を飲み交わす場面などのシーンに重点を置いているように感じますが、これに対しても「より親しみやすい(魔王討伐パーティであるという)関係性をほのめかした脚本構成となっている」とコメント。

「時間の経過に釘付けさせる断片化されたおとぎ話のような構造が最も魅力的な点である」と、随所に組み込まれた“過去”のワンシーンが、より時間の経過を強調する効果をもたらし、フリーレンの時間に対する感覚への影響を示唆する要因になっていると綴られています。

「私達がどう別れ、どう前に進むか」哲学的なテーマだと称賛

最後に同レビューは「これは私たちがどう別れを告げ、どのようにして前へ進むのかについて学ぶことができる作品。視聴者に、時間や人生を一緒に過ごす人々がどのように私たちを形作っているのか考えてもらいたいと考えているのではないか」と、哲学的なテーマも孕んでいるのではないかと推察されています。

魔王を倒した後から始まるストーリーに若干困惑しながらも、それでも今後の行く末が非常に気になる作品といった反応が海外のファンには多かったですね。

筆者は、海外のファンが本作特有の「穏やかで時間がゆっくりと進む雰囲気」を感じ取ってくれていたのが非常にうれしい限りでした。『葬送のフリーレン』が、今後も海外のファンの心をがっしりと掴んでくれることを願うばかりです。

(執筆:zash)

TVアニメ『葬送のフリーレン』放送情報

『葬送のフリーレン』

『葬送のフリーレン』
10 月 6 日より日本テレビ系 毎週金曜夜 11 時
「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」にて放送 (全国 30 局ネット)

【イントロダクション】
「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中、山田鐘人(作)とアベツカサ(画)による漫画『葬送のフリーレン』。勇者とそのパーティーによって魔王が倒された“その後”の世界を舞台に、勇者と共に魔王を打倒した千年以上生きる魔法使い・フリーレンと、彼女が新たに出会う人々の旅路が描かれていく。コミックスは累計発行部数 1000 万部を突破し、そして 2021 年には「マンガ大賞 2021」大賞、「第 25 回手塚治虫文化賞」の新生賞を受賞するなど、漫画ファンの間で旋風を起こしている本作が、いよいよ TV アニメ放送開始!

【あらすじ】
勇者ヒンメルたちと共に、10 年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらした魔法使いフリーレン。千年以上生きるエルフである彼女は、ヒンメルたちと再会の約束をし、独り旅に出る。それから 50 年後、フリーレンはヒンメルのもとを訪ねるが、50 年前と変わらぬ彼女に対し、ヒンメルは老い、人生は残りわずかだった。その後、死を迎えたヒンメルを目の当たりにし、これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し、それを悔いるフリーレンは、“人を知るため”の旅に出る。その旅路には、さまざまな人との出会い、さまざまな出来事が待っていた―。

【スタッフ】
原作:山田鐘人・アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎 シリーズ構成:鈴木智尋 キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子
コンセプトアート:吉岡誠子 魔物デザイン:原科大樹 アクションディレクター:岩澤亨
デザインワークス:簑島綾香 山﨑絵美 とだま。 長坂慶太 亀澤蘭 松村佳子 高瀬丸 美術監督:高木佐和子 美術設定:杉山晋史
色彩設計:大野春恵 3DCG ディレクター:廣住茂徳 撮影監督:伏原あかね 編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二 音楽:Evan Call
オープニングテーマ:「勇者」YOASOBI エンディングテーマ:「Anytime Anywhere」milet
アニメーション制作:マッドハウス
【キャスト】
フリーレン:種﨑敦美 フェルン:市ノ瀬加那 シュタルク:小林千晃 ヒンメル:岡本信彦 ハイター:東地宏樹 アイゼン:上田燿司

【アニメ公式 HP】http://frieren-anime.jp
【アニメ公式 X(旧 Twitter)】http://twitter.com/Anime_Frieren/
【アニメ公式 TikTok】https://www.tiktok.com/@anime_frieren
【アニメコピーライト】©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

《コミックス情報》

累計発行部数 1000 万部突破!
「葬送のフリーレン」
原作/山田鐘人 作画/アベツカサ
少年サンデーコミックス
発行/小学館
最新第 11 巻 発売中
■描き下ろし缶バッジ 2 種セット(第 3 弾)付き特装版/1,250 円(税込)
■通常版/600 円(税込)
第 1 巻~第 10 巻発売中
【原作公式 HP】https://websunday.net/work/708/
【原作公式 X(旧 Twitter)】https://twitter.com/FRIEREN_PR
【週刊少年サンデー公式 HP】https://websunday.net/
【週刊少年サンデー公式 Twitter】https://twitter.com/shonen_sunday
【原作コピーライト】©山田鐘人・アベツカサ/小学館

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zash

子供の頃から培ってきた映画、海外ドラマ、特撮、アニメの知識を活かして活動中。各媒体でコラム、取材レポート、インタビュー記事を執筆する他、雑誌やマスコミ用リリースへの寄稿も行っている。

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