アニメ『モノノ怪』薬売りと対峙する妖怪たち。化け猫、海坊主…日本の伝承との関連性を探る

この話の中で登場する鵺は「欄奈待」(らんなたい)という香木に取り憑いています。欄奈待の扱いというのはまさに鵺のようなもので、ただの腐った木だとしか思えない人もいれば、伝説的な香木だと考える人もいる。置かれた場所や見る人によって、価値が大きく変わるものです。

『モノノ怪 鵺』(コアミックス)

『モノノ怪 鵺』(コアミックス)

この話の登場人物である四人は、それぞれ別の意図を持って欄奈待を手に入れたいと切望しています。欄奈待に対しても何に対しても、物事を見たいようにしか見ない。そんな人間の自分勝手につけ込んでくるのが、今回登場する鵺という生き物でもあるのです。

今話は極彩色が絢爛に使われているほかの話とは違い、暗めの色合いで描かれています。人も景色も妖怪も、見方によって大きく意味が変わる。そんな仕掛けがなされた本編は、一見の価値ありです。

10話~12話:執念深さでどこまでも追い詰める「化け猫」

10話~12話の化け猫はその名の通り猫が妖怪へと変化した姿です。油を舐める、遺体や魂を盗む……など様々な伝承があります。しかし、今回の話はそういった妖怪としての側面より、猫としての側面が大きく描かれているように思えます。

化け猫に限らず、猫にも様々な逸話があります。猫の性格として言われがちなのが「執念深い」ということ。確かに猫は執念深く、嫌なことをされたら決して忘れません。とても可愛くて愛らしいのと同時に、少し怖い一面もある。だからこそより魅力的なのが、猫という生き物です。

『モノノ怪 化猫 下』(コアミックス)

『モノノ怪 化猫 下』(コアミックス)

今回のお話の舞台は近代の日本。新聞社の女性記者・市川節子の不審死の謎を巡って様々な登場人物が証言をし、物語が展開されていきます。誰が、どこで、何の嘘をついているのか? 少しミステリ風味なお話です。

この話の根底にあるのは、節子のどす黒い悔しさです。手酷い裏切りを受けた彼女が、執念深い猫のように少しでも関係した人物を追い詰めていく様は、まさに恐怖の一言に尽きます。

実は節子と猫の繋がり自体はそこまで深くはないのですが、女性が社会進出したばかりの時代に女性記者として奔走する節子が持つ強さと気品、そして美しさはどこか猫を彷彿とさせるものがありました。そんな彼女の悔しさが、執念深い猫と結びついてしまうのは必然だったのかもしれません。

元ネタと照らし合わせると更なる深みが

『モノノ怪』には妖怪の他にも絵画や浮世絵などの様々なモチーフが使用されています。これらがどういった意味で使われているのか、なぜそういう描写になるのかを考えていくと、更に『モノノ怪』の沼にはまっていけるのではないでしょうか。

『モノノ怪』の再放送は、7月9日(火)より毎週深夜24時からテレ東系列にて開始です。映画公開を心待ちにしながら、ぜひ妖しくも美しい『モノノ怪』の世界を味わってみてください。

(執筆:宮本デン)

【参考】『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』/水木しげる

❖『劇場版モノノ怪 唐傘』場面写真

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

『劇場版モノノ怪 唐傘』

❖『劇場版モノノ怪 唐傘』作品情報

『劇場版モノノ怪 唐傘』

❁キャスト
薬売り:神谷浩史
アサ:黒沢ともよ カメ:悠木 碧
北川:花澤香菜 歌山:小山茉美
大友ボタン:戸松 遥 時田フキ:日笠陽子
淡島:甲斐田裕子 麦谷:ゆかな
三郎丸:梶 裕貴 平基:福山 潤 坂下:細見大輔
天子:入野自由 溝呂木北斗:津田健次郎

❁主題歌
「Love Sick」アイナ・ジ・エンド(avex trax)

❁スタッフ
監督:中村健治
キャラクターデザイン:永田狐子
アニメーションキャラデザイン・総作画監督:高橋裕一
美術設定:上遠野洋一 美術監督:倉本 章 斎藤陽子 美術監修:倉橋 隆
色彩設計:辻󠄀田邦夫 ビジュアルディレクター:泉津井陽一
3D監督:白井賢一 編集:西山 茂 音響監督:長崎行男 音楽:岩﨑 琢
プロデューサー:佐藤公章 須藤雄樹 企画プロデュース:山本幸治
配給:ツインエンジン ギグリーボックス 制作:ツインエンジンEOTA

❁序説
“ナニモノ“か、より生じた抑えられぬ”情念“が“アヤカシ”と交わると「モノノ怪」となる。
モノノ怪がひき起こす”怪異“が人々に襲いかかる時、謎の男”薬売り“が忽然と姿を現す。
この世で唯一、モノノ怪を斬り祓うことができる“退魔の剣”を携え、荒れ狂うモノノ怪の前に一人立ちはだかる。
『モノノ怪』は、2006年にオムニバス「化猫」、2007年にテレビアニメシリーズとして放送されて以来、根強く愛され続けている
作品である。その『モノノ怪』が2024年、大奥を舞台に劇場版として“新生”する。
豪華絢爛な世界を絵巻物のように描き、細部まで緻密に、時に大胆に表現した美術や、CGと和紙テクスチャを組み合わせた斬新な手法、膨大なカット数と独自の色遣いにより生み出される唯一無二の映像美など、薬売りのミステリアスな魅力と相まって、 “密度”の濃い世界観に圧倒される。
さらに、個を殺し集団に染まることを強いられる生き辛さ、という現代にも通じる普遍的なテーマ、人間の内面に渦巻く業と願いを描く物語が深い共感を呼ぶ。
誰の心にもモノノ怪の種が根づきかねない混沌としたこの時代に、切なくも強く魂を揺さぶる“救済”の物語が立ち上がる。
シリーズの生みの親である中村健治監督の元に集結した、豪華キャスト・スタッフによる完全新作の劇場映画が、新たなる伝説を刻む。

❁物語
大奥とは、世を統べる“天子様”の世継ぎを産むために各地から美女・才女たちが集められた“女の園”であると同時に、重要な官僚機構でもある特別な場所。独自の掟が敷かれた“社会”でもあるこの異質な空間に、新人女中のアサ(黒沢ともよ)とカメ(悠木碧)が足を踏み入れる。
キャリアアップを図る才色兼備のアサ、憧れの大奥に居場所を求めるカメ。正反対の二人は初日から、大奥で信仰される“御水様”に「自分の大切なもの」を捧げるという、集団に染まるための“儀式”に参加させられる。そこで起きた出来事をきっかけに、二人の間には絆が生まれてゆく。
御年寄の歌山(小山茉美)は、大奥の繁栄と永続を第一に考え女中たちをまとめあげるが、無表情な顔の裏に何かを隠している。そんな中、少しずつ、彼女たちを覆っていく“何か”。夜ごと蓄積されていく女たちの情念、どこからともなく響いてくる唐傘がカラカラと回るような異音、取り憑かれたように理性を失っていく女中…。
ついに決定的な悲劇が起こり、薬売り(神谷浩史)はモノノ怪を追って大奥の中心まで進むが、モノノ怪を斬り祓うことができる退魔の剣は「形」「真」「理」の三様が揃わなければ、封印を解き抜くことが叶わない。薬売りが大奥に隠された恐ろしくも切ない真実に触れるとき、退魔と救済の儀が始まる──。

❁関連リンク
・劇場版公式サイト:https://www.mononoke-movie.com/
・十五周年記念サイト:https://www.mononoke-15th.com/
・公式X:@anime_mononoke ( https://twitter.com/anime_mononoke )
・公式Instagram:(https://www.instagram.com/mononoke_movie_official/
・ハッシュタグ:#劇場版モノノ怪 #モノノ怪 #mononoke

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宮本デン

音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。

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