阿部裕華
編集者/インタビューライター。映像・漫画・商業BL・犯罪心理学の沼に浸かる者。推しは2次元の黒髪メガネキャラ・英国俳優・BUMP OF CHICKEN・愛猫2匹。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
かなめ【要】…ある物事の最も大切な部分。(デジタル大辞泉)
どんなチームやグループにも“要”となる存在がいると、コミュニケーションが円滑に進んだり場の空気(雰囲気)が良い方向に動いたりすることがあるだろう。
そんな“要”となる存在が不在となった、2024年3月23日「AnimeJapan 2024」内開催の「TVアニメ『忘却バッテリー』放送直前スペシャルステージ」。清峰葉流火 役・増田俊樹、藤堂 葵 役・阿座上洋平、千早瞬平 役・島﨑信長、山田太郎 役・梶 裕貴が登壇した。
この中に物語の中心人物・要 圭を演じ、本作のキャスト陣の中でも“要”的(中心的)存在だという宮野真守の姿はない。
本作は、「少年ジャンプ+」(集英社)にて連載中、原作・みかわ絵子による野球漫画。要 圭は、ピッチャーである清峰葉流火とバッテリーを組んでいた切れ者のキャッチャーだ。野球において、キャッチャーは「扇の要」と呼ばれるほど、試合では重要なポジション。
3月10日に開催されたキャストトークショー付先行上映会で、大暴走を繰り広げながら会場を爆笑の渦に巻き込んだのが要 圭 役の宮野だった。本作のアフレコでも“要”になっているのだそう。
https://numan.tokyo/news/m1lhb4k2/
今回は宮野が不在だからだろうか……登壇者たちもどこかフワフワ(ソワソワ?)した様子がうかがえる。
しかし、ビデオメッセージによりサプライズ登場した宮野の華麗なピッチングにより空気が一変。見事なチームワークでボールを打ち返し、観客たちを笑いに包み込むというホームランを放った登壇キャスト陣。
キャラクターの魅力と豪華面々からのメッセージ、最近情報を発表と盛りだくさんだった本ステージの全容をお届けしていく。
INDEX
定刻、TVアニメ『忘却バッテリー』のPVが流れ始め、観客の体温がグッと高まるのを感じる。PVが流れ終わるとステージにライトが灯された。
MCの「ご登場いただきましょう!」の掛け声により、増田、阿座上、島﨑、梶の順に登場。会場からは大きな拍手と共に、つい漏れ出してしまったかのような黄色い声援が聞こえてきた。
それぞれ簡単に自己紹介をしたのち、MCから「今のお気持ちは?」という質問が投げかけられた。「放送前にこんな大きいステージに立ててうれしいです」と増田が笑顔で答える。すると梶は、舞台袖で阿座上が立ち位置を迷っていたことを明かし、「宮野さんがいたら怒られるよ!」と今回欠席となった宮野の名前を出す。
続けて「今日は絶対的存在の宮野真守がいないんです」と梶が言うと、キャスト陣も「そうなんです……!」と少し不安気。さらに、「どなたが宮野さんの役割を果たすんですか?」とMC。「いやいやいや!」「無理です!」とざわつくキャスト陣に、会場からは笑い声も。
そして話題は先行上映会に。「あの日も大変でしたね」と振り返るキャスト陣。続けて梶が「大やけどしましたね。今日はやけどしたくないです!」と笑いながら語った。加えて、梶&増田は「黙りこくっている島﨑くん、逃がしませんよ?」「自分の役割はニコニコすること、じゃないですよ?」「このあと宮野さんの代わりに笑いを取ってくださいよ?」と口数が少なかった島﨑へ振ると、島﨑は大きく笑った。
宮野不在の不安を抱えつつ全力で場を温めたキャスト陣。ここからは本作を知らない人たちへ魅力を伝えるため、キャスト陣から自身の演じるキャラクターの紹介コーナーが設けられた。演じるキャラクターについてひと言にまとめたフリップを見せながら、キャラについて説明するというものだ。
トップバッターは清峰葉流火を演じる増田。フリップには「要 圭」の文字が。阿座上は「いやいやいや」、梶は「自分のキャラクターの説明をするんですよね?」と思わずツッコミ。それに対し、増田は「一言で言ったら、“要 圭”以外ないです」「清峰葉流火=要 圭、要 圭=清峰葉流火!」と語気強めに言い放つ。続けて、阿座上が「増田俊樹=宮野真守!」「今日はもう(宮野の代わりに)よろしくお願いします!」と言うと、すかさず「それは違う!」と増田。その掛け合いに観客から笑い声が。
増田は「葉流火が野球を続けてこられた原点に要 圭がいるんです」と説明。すると梶も「まさにその通りだと思う」と深く同意した。
二番打者に立った阿座上は、フリップに藤堂 葵を「不良(になりきれない)オカン」と記載。「すごく面倒見がいいやつで、記憶喪失の要に『しょうがねえな!』と言いながら教えてあげるいいやつ」と紹介した。そこに「意外とノリがいいやつだよね」「ノッてくれるし、拾ってくれるし、放っておけないんだよね」と島﨑。
また、藤堂と要のアドリブが多いというアフレコの裏話が明かされた。「宮野さんと果し合いをしている」と阿座上が言うと、ほかのキャスト陣から「毎回ボロボロになっているよね」「今のところ何回勝っているの?」と問いかけが。阿座上は「勝ってはいないですけど、3〜4敗1引き分けくらいです」と話すとキャスト陣から大きな笑いが巻き起こった。
続く三番打者の島崎は、千早瞬平を「クセ強めのスルメ」と紹介。「最初は鼻につくけど、噛めば噛むほど柔らかくなって、味が出てきて、クセになってきて、好きだなと思ってくる」「藤堂が(要を)拾って構ってくれるとしたら、千早は逃げて巻き込まれない」と説明した。それもあって宮野との急なデスマッチのゴングは鳴らないとキャスト陣からも説明がなされた。
そして、四番打者の梶は山田太郎を説明するフリップに「(M)」と記載。ざわつくキャスト陣に、梶は「性癖ではない!」と場をなだめつつ、(M)はモノローグという意味であることを説明。「山田くんはめちゃめちゃツッコミしているのに、そのほとんどがモノローグ」とのこと。つまり、心の声が聞こえていない場合、ただ無口な人ということになる。「それがチームをまとめる時の考える力に繋がってくる」と山田の良さについて話した。
加えて、「山田のモノローグがないとすごい空気になるだろうねと話しています」と梶。それに対して「円盤の特典でモノローグ無しをつくってほしい!」と言う島﨑に、ほかキャスト陣も同意する。
また、「山田のモノローグのツッコミによって要 圭の面白さも出る」「ただ、要 圭が面白いのは、絶対に宮野真守の力があると思う」と梶が熱く語っていると、「宮野真守のMということでよろしいですね?」とMCからまとめの一言。「ということは、山田太郎は宮野真守である?」と腑に落ちない様子の梶。欠席していながらも宮野の存在感が浮き彫りになったキャラクター紹介が終了した。
と思いきや、なんと要 圭のキャラクター紹介のために宮野からビデオメッセージが到着。キャスト陣も事前に観ていないそうで「何かあるかも!?」と不安を吐露しながら、早速スタート。
ビデオメッセージで、宮野は要について「自分で言うのもなんですけど……“要”だと思います。自分で言うのもなんですけどね」とコメント。「キャッチャーは試合を支え、バッテリーを支え、チームを支えるポジション」「そんな要(かなめ)的存在の要 圭を魅力的に演じられるように全力で臨んでおります」と真面目なトーンで話す。
宮野「コミカルなシーンも多く楽しみながら、全力で大声を出して頑張っています。それだけじゃなく、記憶喪失になってしまってどう感じているのかをしっかり感じて要 圭を演じられれば魅力的な作品になるのではないか、と思いながら参加しています」
おふざけ一切なしで本作の紹介をし終えた宮野。これでビデオメッセージは終わりか……と拍子抜けしそうになった矢先、「さあ、登壇しているキャストの皆さんへメッセージです!」と言うと、登壇のキャスト陣は喜ぶどころか「終わったと思ったのに……」と一気に不安な空気が流れ始める。
そして、宮野から「そこにいる4人は僕がいなくても爆笑トークを繰り広げられるスキルを持っているので、要 圭に負けないくらいの一発芸を一人1個お願いします!」と場の空気が盛り上がること間違いなしの華麗なピッチングが放たれた。
そして、時間が限られているため、梶からの振りで増田が指名した代表者1名が一発芸を披露することに。「僕が選べるのは、ここにいる後輩(阿座上)、1人しかいない」と増田が言うと、率先して立ち上がる阿座上。後輩力の高さを垣間見せた。そんな阿座上に対して、「僕は宮野真守は天才だと思うけど、阿座上くんもある種の天才だと思っている」「意図していない、作られたものではないナチュラルボーン笑いよ」と期待を寄せる梶と増田。
一発芸を前に早くもいじられる阿座上、実はこの日もAnimeJapanへ持って行くべき関係者パスや駐車証をすべて忘れてきたことを告白。「ただの一般人としてAnimeJapanに入りました」と天然エピソードを明かした。
そんな阿座上はどんな一発芸を披露してくれるのか――「3、2、1」という掛け声により繰り出された一発芸、それは「(『天空の城ラピュタ』の)シータを追い詰めるムスカのモノマネ」だった。「まさか、他作品のモノマネをするとは」「そこらへんで捕まえた男性たち100人中95人はやったことあるやつ」とキャスト陣がツッコミ(フォロー?)を入れながらも、無事に会場を爆笑の渦に巻き込んだ。
しっかり盛り上がった中、こういったステージでは珍しい登壇者4名によるオリジナル朗読劇がスタート。梶&島﨑は「要 圭がいない中で!」「要がいないのに!?」とまたも不安そうな声を上げながら、「要がはぐれたAnimeJapan 2024に遊びに来た小手指メンバー」がテーマの朗読劇を熱演。キャスト陣の不安を他所に観客の笑いをしっかり掴むところは、「さすが」の一言に尽きる。梶は「キャラクターの声を生で皆さんに公開するのは初めてですからね!」と顔をほころばせた。
また、作品の魅力の一つである音楽からオープニング・テーマ「ライラック」を担当したMrs. GREEN APPLEとエンディング・テーマを担当したマカロニえんぴつからもビデオメッセージが届いた。「ライラック」は本作ならではの疾走感と爽やかさがあり、ギターがMrs. GREEN APPLE史上最高難易度の楽曲に、「忘レナ唄」は何かに一心に燃えて一心に駆け抜けている本作に合わせた楽曲になっているとそれぞれから語られた。
ここからは、最新情報発表のコーナーに。1つ目は、放送直前ビジュアルの公開。桜並木をバッグに描かれたメインキャラクターの5人のビジュアルにキャスト陣から「爽やか!」の声が上がる。
2つ目の最新情報は、4月16日からアニメイト池袋本店にて「来たれ!!小手指高校野球部 POP UP SHOP」の開催が決定。#01 の印象的なシーンを再現したフォトスポットやグッズの販売を予定。購入や予約で非売品ブロマイドが貰えるキャンペーンも実施予定とのこと。
今後の展開が待ち遠しくなる情報が発表されたところで、原作のみかわ絵子先生から手紙が到着。「この作品には開始冒頭から“パイ毛切り”という現象が起こります。8割の読者が脱落しますが、残った2割の方々の愛でアニメ化することができました」と要 圭の一発ギャグであるパイ毛について言及。
続けて、「アニメでは今をときめくMAPPAさん、Mrs. GREEN APPLEさん、マカロニえんぴつさん、そして豪華な声優陣を揃えに揃え、最強の布陣で“パイ毛切り阻止”を図ります。面白さは保証します」とユニークながらどこか感動的な内容が綴られていた。
宮野さんの居ない4人の空気感も可愛かったな…笑
— みかわ絵子 (@mikawaeco) March 23, 2024
これには増田も「センスが光るお手紙ですね」と一言。続けて、「僕たち“パイ毛”大好きですけどね」「(パイ毛切りで)脱落した8割を取り戻しましょう!」とほかのキャスト陣も作品への愛と意気込みを語り合ったところで、早くも最後のあいさつの時間に。梶から順番に作品への熱い想いを述べた。
梶「まもなく放送というタイミングで、こういった大きなイベントがあるのは本当にありがたいことだと思います。アフレコは順調に進んでおります。ドラマが進めば進むほど、『忘却バッテリー』を好きになっていくのを感じています。漫画を読むとギャグ要素が強い印象ですが、しっかり野球を描いています。記憶を失っているキャラがいるだけあって、丁寧に(野球の)説明がされているので野球素人の方も構えることなくご覧いただけたら嬉しいです。放送を楽しみにお待ちください」
島﨑「要 圭がいないと物足りない体になっている……要 圭もそうだし、要 圭 役の宮野真守さんがいないこともそう思っていました(笑)。朗読劇をやっている時も『これでいいのだろうか……』『何か足りないのではないか』と思いつつ、(梶演じる)山田が間を埋めてくれていたけどそれでも何かが物足りなくて。みんなもパイ毛なしではダメな体になりますよ。宮野真守さん演じる要 圭は本当にすごい。ということで、めちゃくちゃ笑えるけど、人間のえぐいところもきっちり描かれている。そんなあらゆる方面で楽しめる作品です。ぜひアニメを思い切り楽しんでいただけたらと思います」
阿座上「今日、関係者パスを忘れてしまって自分の存在をどうやって証明しようかとずっと考えていたんですよね。でも今度『あなたは誰ですか?』と聞かれた時はこう答えます。『藤堂 葵 様だ! 覚えておけ!』と」
梶「追い出されちゃう可能性があるから、1回名前は名乗ろうね!」
阿座上「はい……! 『忘却バッテリー』、そして藤堂 葵をよろしくお願いします(笑)」
と冗談を交えながらそれぞれが作品に対する思いを語ったところで、MCから「増田さん、最後に一言」と急かされる増田。「ご覧の皆さん、ありがとうございました。ムスカは本編に出てきません! 『忘却バッテリー』乞うご期待です。またアニメでお会いしましょう」と阿座上の一発芸を最後にいじり、しっかりと観客の笑いを誘った。
深くお辞儀をしたあと、手を振りながらステージ横まではけるキャスト陣。ムスカ大佐の歩き方をしながら去っていく阿座上と、それを真似する増田。「やめなさい!」と注意する島﨑と梶。そんな4人を拍手と笑顔で見送る観客……宮野が欠席しているからこそ、宮野の存在の大きさに気づけた。
同時に、“要”である宮野不在だからこそ団結した4人のチームワークでヒットのみならずホームランまで放つことができた『忘却バッテリー』放送直前スペシャルステージは無事に幕を下ろした。
(執筆:阿部裕華)
2024年4月9日(火)深夜 24 時よりテレ東系列にて放送開始!
<放送情報>
テレ東 4 月 9 日から 毎週火曜深夜 24 時 00 分~
テレビ大阪 4 月 9 日から 毎週火曜深夜 24 時 00 分~
テレビ愛知 4 月 9 日から 毎週火曜深夜 24 時 00 分~
テレビせとうち 4 月 9 日から 毎週火曜深夜 24 時 00 分~
テレビ北海道 4 月 9 日から 毎週火曜深夜 24 時 00 分~
TVQ 九州放送 4 月 9 日から 毎週火曜深夜 24 時 00 分~
AT-X 4 月 12 日から 毎週金曜 20 時 00 分~
リピート:毎週火曜 8 時 00 分/毎週木曜 14 時 00 分
※放送日時は予告なく変更になる場合がございます。
<配信情報>
Prime Video にて毎週火曜 放送直後より最速配信!
さらに、各種配信サービスにて毎週水曜 24:30 より順次配信スタート。
※配信開始日はサービスによって変動する場合がございます。
<CAST>
清峰葉流火...増田俊樹
要 圭...宮野真守
藤堂 葵...阿座上洋平
千早瞬平...島﨑信長
山田太郎...梶 裕貴
土屋和季...山谷祥生
国都英一郎...大塚剛央
巻田広伸...石井マーク
桐島秋斗...河西健吾
<STAFF>
原作:みかわ絵子(集英社「少年ジャンプ+」連載)
試合制作:高嶋栄充
監督:中園真登
シリーズ構成:横手美智子
副監督:飯田剛士
キャラクターデザイン:長谷川ひとみ
アクション作画監督:立中順平 / 徳丸昌大
美術監督:船隠雄貴
色彩設計:中野尚美
撮影監督:川下裕樹
3DCG 監督:小川耕平
編集:吉武将人
音楽:菊谷知樹 / 山崎寛子
音響監督:名倉 靖
音響効果:長谷川卓也
制作:MAPPA
オープニング・テーマ:Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
エンディング・テーマ:マカロニえんぴつ「忘レナ唄」
公式HP:https://boukyaku-battery.com/
公式X(旧:Twitter):@boukyakubattery
©みかわ絵子/集英社・KADOKAWA・MAPPA
阿部裕華
編集者/インタビューライター。映像・漫画・商業BL・犯罪心理学の沼に浸かる者。推しは2次元の黒髪メガネキャラ・英国俳優・BUMP OF CHICKEN・愛猫2匹。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
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