宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
これまで多くのトラブルを解決に導いてきた久美子は、”人との距離を一定に置く”ではなく”その人に合わせた距離から接する”ということができるようになっています。
引っ込み気味で本音を言い出すのが苦手な義井沙里や、気難しい月永求に対して、必要な言葉を適切なタイミングと距離感で投げかけ、彼女らの抱える問題を前向きに昇華できたことからも、そのことが伺えます。
しかし、久美子は真由とだけは距離を測ることができていないように見受けられます。久美子と真由の間には、踏み込むことも近づくこともできない”一定の距離”だけが存在する状態なのではないでしょうか。
事実、久美子は真由に対して「中学の時の自分と似ていて、苦手意識がある」と考えているようです。真由としてはずっと久美子や奏に対して言っているように、大抵のことは本当にどちらでも構わない、それが本音で裏も表もないのです。
久美子の言うように、二人は正反対に見えて本当のところはとてもよく似ているように思えます。ただ二人の間にある大きな違いは「全国常連の部活を経験してきたかどうか」。
その決定的な違いが久美子と、ひいては部員のほとんどの人間と真由の部活に対する精神性の噛み合わなさを生んでしまい、現状のように互いに疎となる関係を生んでしまっているのかもしれません。
例えその違いがあったとしても、これまでと同様に一定の距離だけ置いてなんとなくやり過ごせば問題ないのに、あの久美子がその距離感に居心地の悪さを感じ、オーディションの結果に怒りにも似た気持ちを抱くなんて、それだけでも彼女が一年生の頃からどれだけ成長したかが伺えます。
そして久美子と真由の問題が解消されたとき、久美子はまたこれまでとは違った一面を見せるのかもしれません。
関西大会のオーディションを機にとうとう問題が爆発してしまった新・北宇治高校吹奏楽部。
なんとなく日常は平穏に流れているが、水面下で何かが発生しているような気がする。そんなモヤモヤ感を抱かせる『響け!ユーフォニアム』シリーズ。毎回の視聴でも何も起こりませんようにと祈っていたため、現状を見ると心が痛みます。
今後部長として久美子がどのように北宇治高校吹奏楽部を導いていくのか? そして久美子自身が抱える進路や部活への悩みに、どういった結論を出していくのか?
最後の大会を迎える久美子たちが、どのような音楽でラストを彩るのか。祈るような気持ちで見届けたいと思います。
(執筆:宮本デン)
2024年4月7日より毎週(日)午後5時 NHK Eテレにて放送開始
【CAST】
黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
黒江真由:戸松 遥
塚本秀一:石谷春貴
釜屋つばめ:大橋彩香
久石 奏:雨宮 天
鈴木美玲:七瀬彩夏
鈴木さつき:久野美咲
月永 求:土屋神葉
剣崎梨々花:杉浦しおり
【STAFF】
原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』)
監督:石原立也
副監督:小川太一
シリーズ構成:花田十輝
キャラクターデザイン:池田晶子、池田和美
総作画監督:池田和美
楽器設定:髙橋博行
楽器作画監督:太田 稔
美術監督:篠原睦雄
3D美術:鵜ノ口穣二
色彩設計:竹田明代
撮影監督:髙尾一也
3D監督:冨板紀宏
音響監督:鶴岡陽太
音楽:松田彬人
音楽制作:ランティス、ハートカンパニー
音楽協力:洗足学園音楽大学
演奏協力:プログレッシブ!ウインド・オーケストラ
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:『響け!』製作委員会2024
公式HP https://anime-eupho.com/
公式X https://x.com/anime_eupho
公式TikTok https://www.tiktok.com/@anime_eupho
Ⓒ武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
宮本デン
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