『ビックリメン』ティザービジュアル

非ビックリマン世代がアニメ『ビックリメン』の裏側に迫ってみたら、ビックリマンの歴史や令和のコンテンツ戦略など多くの学びを得ることができた

ビックリマンを愛するクリエイターたちのコダワリが詰め込まれた『ビックリメン』

――ここからはアニメプロデューサーの清水さんに、『ビックリメン』制作の裏側をお話しいただきます。ビックリマンの新作アニメをつくる計画はどのようにスタートしていったのでしょうか?

清水香梨子(以下、清水):
アニメ制作会社のシンエイ動画の林さんとロッテ・本原さん(以下、本原さん)が「ビックリマン・シンエイ動画共に周年を迎えるタイミングで何かできたらいいね」という話をされて始まったと聞いています。

そうした記念的な経緯もありつつ、当時からビックリマンに熱狂し、歴史を跨いで今なお愛し続けてくださっているファンの方たちに向けても何かサプライズをしたいという思いがあったように思います。

――実質、ビックリマンとシンエイ動画の周年記念企画という位置づけでもあったのですね。

清水:
そうだったんです。

とはいえ、今回のアニメ化は当時からのファンの方に喜んでいただくだけのものではなく、若い世代の方々にもビックリマンがいかにアツいコンテンツなのかを知ってほしいという思いが強くあって。そうした背景から、キャラクターデザインも今の人たちに好まれやすいよう、頭身を上げたデザインにするなどの試行錯誤がありました。

――「今の人たちにも好まれやすいように」とのことですが、今回監督を月見里智弘さん、シリーズ構成を綾奈ゆにこさん、キャラクター原案を武井宏之さんが担当しています。この布陣はどのように決まったのでしょう?

清水:
監督はビックリマンとほぼ同じ1978年生まれで「悪魔VS天使シール」の頃の熱狂を知りつつも若い世代の感性も分かる世代という点が大きかったですね。

また、今作ではビックリマンシールが原作としてあって、そこからどのようにたくさんの個性豊かなキャラクターを描いていくかが肝だったので、キャラクターの緻密な作り込みやキャラクター間の繊細な関係性を描くのがお上手な綾奈さんにオファーしました。

綾奈さんは今回のクリエイター陣の中ではお若い方ですが、アニメ制作に臨むにあたりビックリマンの関連書籍や有志の方が作られたYouTube動画も見てかなり勉強してきてくださって、初めてお会いした時にすでにビックリマン世代の監督と激論を交わせるほど、ビックリマンの知識を付けられていたのが印象的でした。

――ビックリマン世代の方と同等の知識を身につけてくる綾奈さん、すごい……。

清水:
そして、キャラクター原案の武井先生は少年誌で長くご活躍されてきている王道感もありながら、更に今の若い方にも刺さるスタイリッシュな絵柄でもある点が今回のイメージに合っていたんです。

先生のお名前を一番最初に出されたのは綾奈さんで、監督が「武井先生以外、考えられない」と意気投合していた様子が印象的でした。武井先生はビックリマンが大好きだったそうで、とても快くお引き受けくださって。そんなこともあり良い布陣になったと思っています。

武井宏之先生『ビックリメン』キャラクター原案イラスト ヤマト

武井宏之先生『ビックリメン』キャラクター原案イラスト ヤマト

武井宏之先生『ビックリメン』キャラクター原案イラスト・フェニックス

武井宏之先生『ビックリメン』キャラクター原案イラスト・フェニックス

――適性やバランスを考慮しながら決められたんですね。『ビックリメン』の制作にあたってクリエイターにオーダーされたことなどはありましたか?

清水:
プロデューサーサイドから「絶対にこうしてほしい」というオーダーはありませんでした。ただあえて言うならば、「当時からビックリマンをずっと愛していらっしゃる方を傷付けたり失望させてしまうようなことはしたくない」というお話はしていましたね。クリエイターの皆さんももちろん同じ気持ちだったとは思います。

プロデューサーサイドと制作サイドで、『ビックリメン』をどういったアニメにしていくのか、方向性をすり合わせることはしました。当初から話していたのは「日頃頑張っている人たちに気楽に観てもらえるような作品にしたい」ということです。

当時子どもだった人たちは今、仕事があったりご家庭があったりとそれぞれに自分の人生を生きていると思うんです。どんな形でも毎日を頑張っている方が、ついクスっと笑ってしまったり、思わず感動してエモい気持ちになったり。

そんな風に、肩の力を抜いて童心に返って観てもらえるような作品を目指して『ビックリメン』の内容を徐々に詰めていきました

TVアニメ『ビックリメン』第3話

TVアニメ『ビックリメン』第3話より コミカルなシーンも満載

――たしかに今期アニメは落ち着いたトーンの作品が多い中で、『ビックリメン』を観ているとなんだか明るい気持ちになってしまいます。ちなみに『ビックリメン』の「メン」にはどういう意味が込められているのでしょうか……?

清水:
監督からは「“全てのキャラクターが主人公”という意味を込めて、ビックリ“マン”の複数形の“メン”にした」と聞いています。

また、デザインの方向性はさまざまながら、どのキャラもみんな、身も心も本当にイケメンですから「イケメン」のメンという解釈も正しいと考えています(笑)。

第6話の水着回は色んな方の心をガッチリ掴んだのではないでしょうか。

物語の舞台やキャラの立場、声優へのアプローチを工夫し、主人公ヤマトを限りなく視聴者の目線に

――『ビックリメン』は現代のコンビニである“エンジェルマート”を舞台にしてストーリーが展開されていきますが、これらの設定もクリエイターの方々主体で決められていったのでしょうか?

清水:
はい。実は最初に監督とプロデューサー陣で話していた時は、ビックリマンが今の時代に転生するといった設定で学園パロディにする案もあったんです。

――転生もの×学パロ、それはそれでおもしろそう……。

清水:
だけど、武井先生や綾奈さんに参加頂いたタイミングで「ビックリマンはもっと広い層を狙えるブランドなのに、学園モノにしたら小さくまとまってしまうのでは」というようなお話をいただいて。

それをきっかけに企画がかなり動き、最終的に日本人のほとんどが馴染みのあるコンビニを舞台にすることになりました。

TVアニメ『ビックリメン』第2話

TVアニメ『ビックリメン』第2話より コンビニの棚には大量のビックリマンが

――たしかに、年齢問わずコンビニを利用したことのない人はほとんどいないからこそ、コンビニを舞台にすることで、より幅広い世代が共感しやすくなりますね。

清水:
共感を得られるような工夫としてもう1つ例を挙げると、メインキャラクターのほとんどはコンビニに最初から出入りしている設定なのですが、主人公のヤマトだけは「運送会社でアルバイトをしている高校生」という設定なんですよ。

これには、ヤマトには視聴者の目線に立っていてほしいという思惑があったんです。

TVアニメ『ビックリメン』第1話

TVアニメ『ビックリメン』第1話より 運送会社でバイト中のヤマト

『ビックリメン』ではビックリマンシールのブームが過熱し、現金以上の価値を持つほどにまで人気が高まっているという設定でストーリーが進んでいくのですが、1話の時点でヤマトはビックリマンがそれほどのブームになっていることを知らなくて。

とあるきっかけで普段の配達圏内から飛び出してエンジェルマートに近付くことになり、「ビックリマンがこんなにも人気なんだ」と気付いていくことになるという、まさに今回狙っているターゲットに近しい存在に仕立てているんです。

そうした設定もクリエイター陣でかなり議論しながら詰めていきましたね。

――視聴者が置いてきぼりにならないように、という配慮をすごく感じます。一方で、メインキャラクターたちがビックリマンシールを貼って変身する仕掛けは、意外性もあり面白かったです。

清水:
実は当初の企画に変身の予定はなかったんですよ。最初に誰が言いだしたのか覚えていないのですが、武井先生が参加されることとなったことでいつのまにか自然発生的に決まったんだと思います(笑)。

もともとシールという原作がある中で、監督と綾奈さんとで数多いるキャラクターの中からどのキャラを『ビックリメン』に登場させていくかの話し合いがあり、「やっぱり若神子のストーリーはアツいよね」「ヘッドロココは絶対に出したい」といった形で変身するキャラクターがピックアップされていって。

そして、こちらからご提案した各キャラの特性をもとに、武井先生がシールのシルエット感やあらゆるネタを巧みに調和させた原案デザインをどんどん構築されていった…と記憶しています。

TVアニメ『ビックリメン』第1話

TVアニメ『ビックリメン』第1話

TVアニメ『ビックリメン』第1話より フェニックス合神シーン

――ビックリマンシールのキャラクターデザインの面影を残しつつも、『ビックリメン』ならではのオリジナリティを感じるデザインに魅力を感じました。ほかにも制作の裏話があればぜひお聞かせいただきたいです。

清水:
音響関連の話ですと、フェニックス役の斉藤(壮馬)さんやマリス役の小西(克幸)さんたち大人組の役者さんには脚本を最終話の分までまとめてお渡ししていたんです。

でも、ヤマト役の梶田(大嗣)さん、牛若役の森嶋(秀太)さん、ジャック役の橘(龍丸)さんには次のアフレコ台本しか渡さないようにしていました。3人には視聴者と同じ目線で物語の歩みを進めていってほしい思いがあったんです。

『ビックリメン』の世界に自分たちがどういう風に巻き込まれていくのか、これからどんな展開が待ち受けているのかを、3人にはフレッシュに感じながら演技していただけたらという狙いがありました。

逆に斉藤さんや小西さんは最終地点から逆算した演技設計をしてくださっていたと思います。

TVアニメ『ビックリメン』第2話

TVアニメ『ビックリメン』第2話より 牛若

――制作スタッフ側でも役者さんの自然な演技を引き出す工夫をされていたのですね。イベントの映像やCM動画を拝見した際、マリス役の小西克幸さんがビックリマンについてとても詳しく話されていた点も印象的でした。

清水:
小西さんは昔からのビックリマンファンだそうで、あまりにも詳しいのでイベントにお越し出いた方の感想コメントで「小西さんの説明はまるでシャーマンカーンさながらだった(※)」といったものも拝見しました(笑)。

役者さんの中にはビックリマンの歴史(聖魔大戦など)に馴染みのない世代の方が多かったこともあってか、アフレコブース内で小西さんがほかの役者さんにビックリマンのことを教えるようなやりとりを見かけることが度々ありました。

現場でも『ビックリメン』の世界と同じように世代を超えた交流が垣間見え、とても印象深かったですね。

(※)ビックリマン 悪魔VS天使に登場する、“武”の神様のスーパーゼウスと並ぶ“文”の神という設定のキャラクター

TVアニメ『ビックリメン』第1話

TVアニメ『ビックリメン』第1話より 小西克幸さん演じるマリス

――現在8話まで放送されていますが、アニメ制作サイドとして視聴者の反応はどのように感じていますか?

清水:
放送後にX(旧Twitter)を見ると、当時からビックリマンをお好きな方にも喜んでいただけている様子が見えて、胸を撫で下ろしています。

実は作品内にはちょっとした仕掛けなんかも入れています。

例えば、ビックリマン工場の営業課長として登場する照光子というキャラが乗っている車のナンバープレート。アニメのあらすじにもある“ビックリマンシール三億枚事件”の輸送トラックは「1985」、普段乗っている社用車は「555」という番号を使っているのですが、これはビックリマンシール第1弾の発売年号(1985年)や照光子のキャラナンバー(第5弾の55番目のキャラクター)と掛けているんですよ。

TVアニメ『ビックリメン』第1話

TVアニメ『ビックリメン』第1話より トラックに乗っている照光子

――コアファンにしか分からないような仕掛けが入れられていたとは……。

清水:
ファンの方の中にはそうした小さなポイントに気付いてくださっている方もいて、こちらも「やってよかったなあ」という気持ちでいっぱいです。

オープニングやエンディングも、ビックリマンを知らない方が観て聴いて楽しめる内容に仕上げているのはもちろんですが、ビックリマンをお好きな方が楽しめるような要素もいろいろと仕込んでいるので、ぜひじっくり観ていただきたいですね。

 

これからアニメの終盤までさまざまなキャラクターが登場していきますし、ストーリー展開もより深くなっていくので、引き続き楽しみにしていただきたいです。

――さまざまなコダワリとビックリマンへのリスペクトが込められていることが伝わってきました。そんな『ビックリメン』が、ビックリマンにどのような影響を与えていきたいと考えていますか?

清水:
理想としては『ビックリメン』が、ビックリマンの当時の熱狂を知る世代の方々と、若い世代とのコミュニケーションのきっかけになったら良いなと思っています。

ビックリマンシールはもともと「どっきりシール」という、いたずらによってコミュニケーションを生むツールとして誕生したと聞きます。この作品によってマリス役の小西さんとヤマト・牛若・ジャックを演じる3名のように、世代を超えて会話が生まれたり、再びシール交換がブームになったりする未来が訪れたら素敵ですよね。

(執筆:河西ことみ、取材&編集:阿部裕華)

『ビックリメン』作品情報

<放送>
TOKYO MX:2023年10月5日(木)23:30~
BS朝日:10月6日(金)23:00~
<配信>
各種プラットフォームにて、10月5日(木)24:00~より順次配信開始
※放送・配信日時、内容は変更になる可能性がございます。

■STAFF:
原作:ロッテ
監督:月見里智弘
シリーズ構成:綾奈ゆにこ
キャラクター原案・メカニック原案:武井宏之
キャラクターデザイン:大和田彩乃
メカニックデザイン:武井宏之、射尾卓弥
美術監督:田山 修
色彩設計:のぼりはるこ
撮影監督:久保田 淳
編集:松原理恵
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:INSPIONエッジ
音楽:三澤康広
制作:シンエイ動画
アニメーション制作:レスプリ
製作:ビックリメン製作委員会

■CAST:
ヤマト:梶田大嗣
牛若:森嶋秀太
ジャック:橘 龍丸
フェニックス:斉藤壮馬
マリス:小西克幸
フッド:阿座上洋平
ピーター:榊原優希
アリババ:田丸篤志
一本釣:梅原裕一郎
照光子:市来光弘
十字架:小倉 唯
オアシス:小林ゆう
カーン:宝亀克寿
タカやん:徳留慎乃佑

(C)ロッテ・ビックリマンプロジェクト/ビックリメン製作委員会

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河西ことみ

ライター/編集者/Webディレクター。IT系、ビジネス系、美容系、ゲーム系などさまざまな系統の記事を執筆・編集していました。

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