宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
漫画家の荒川弘が自らを題材として描いたエッセイ・コミック『百姓貴族』のアニメが放送中です。
荒川先生といえば『鋼の錬金術師』『銀の匙』を始めとした多くの人気作品を生み出している超人気の漫画家。現在ガンガンにて連載中の『黄泉のツガイ』も既刊四巻にしてアニメ化を待望する声が上がるほどに好評を博しています。
「とにかく漫画が上手い」と評されるだけあり、バトル描写やストーリーテリングの手腕は圧倒的な実力を誇る荒川先生。純粋に漫画が面白いのはもちろんのこと、先生自身の哲学や人生観が深く反映された物語の芯の強さも魅力の一つです。
今回は、そんな荒川先生がこれまでに漫画を通して世界へ伝えてきたメッセージを探っていきます。
INDEX
言わずと知れた超人気作品。連載開始から20周年を超えた今でもメディア・ゲーム・コラボカフェなどへの展開が多く実施されています。どこから見ても完成度の高い作品ですが、幅広い世代に愛され続け「人生の教科書」と評されるほどにそのメッセージ性の強さも高く評価されています。
『ハガレン』にはさまざまなメッセージが込められていますが、最終的に辿り着くのは「人間はいつだって前を向くことができる」ということ。
そのことが直接的に表現されているのが第18巻に収録されている「第72話 負の連鎖 正の一石」。自分の両親を手にかけた仇敵・傷の男(スカー)と対峙することになったウィンリィ・ロックベル。傷ついて動けない傷の男を問い詰めて罵ることもできたはずですが、ウィンリィは少しの問答をしたのちに手当てをします。
驚く傷の男に対して「理不尽を許してはいない」と怒りとやり場のない悲しみを露にしつつも、その感情に流されず負の連鎖を断ち切ったウィンリィの姿には、ある種の高潔さのようなものを感じます。
宮本デン
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