宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
荒川先生は度々「百姓は理不尽に慣れている」と『百姓貴族』の中で語っています。これは「理不尽を許し、我慢することができる」のではなく「理不尽に対し、切り替えて前向きに対応することができる」ことを示しています。
今もなお『ハガレン』が私たちを惹きつけてやまないのは、荒川先生の根底にある確かなものが、そのまま『ハガレン』を通して私たちに伝わってくるからなのではないでしょうか。
2014年にはSexy Zoneの中島健人主演により実写化もされ、今もなお牛乳などのコラボ商品が発売された人気作品『銀の匙』にも目を向けてみます。
『ハガレン』の連載当時から「農業高校を舞台にしたはちゃめちゃラブコメディを描きたい」と言っていた荒川先生ご自身の経験が、最も直接的に反映されている作品なのではないでしょうか。
『銀の匙』に込められているのは何よりも「命をいただくことの尊さ」。昔からよく「食べ物には感謝しなければいけない」と言われますが、なぜ感謝しなければならないのか、その気持ちすらも人間のエゴではないのか、を改めて考えることのできる作品となっています。
この作品の主人公である八軒は、非農家出身にも関わらず大蝦夷農業高校に入学し、一般的な生活と自然を相手にする生活とのギャップに驚く毎日。そんな彼が一番最初に大きな壁にあたったのが、第1巻〜第3巻を通して描かれる「豚丼事件」。
自分が子豚の頃から世話した豚たちがいずれは肉となって出荷される事実を改めて目の当たりにし、どう気持ちの折り合いをつけるかという悩みに苦しむことになります。
答えが出ないことが答えとなるのですが、それを踏まえた上での八軒が下した決断は予想外のものでした。
私はこの結末を読んだ時に、「本気で自然や食べ物と向き合うということはこういうことなんだ」と自然を相手にする方々の並々ならぬ覚悟に触れたような気がして鳥肌が立ちました。
宮本デン
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