坂井彩花
音楽・映画・アニメ・美術館といったカルチャー分野から、紅茶・神社巡り・ピカチュウ・占いなど、雑多に好きを展開中。興味をもったら、とりあえず突っこんでみるがモットーです。
アニメ、映画、マンガ、ドラマ、音楽、舞台など、さまざまな“沼”コンテンツを生み出す人たちから、ご自身の“沼”について聞くインタビュー連載企画「沼、聞いてみてイイですか?」。
今回登場いただくのは、「にじさんじ」に所属するバーチャルライバー(以下、VTuber)の叶さん。YouTubeのチャンネル登録者数123万人を超えるほど人気の叶さん、普段はゲーム実況を中心に配信をしており、視聴者の間では「叶=ゲーム好き」のイメージが強くあります。
しかし、雑談を中心とした配信やゲーム実況内の雑談をよーく覗いてみると、たびたびアニメトークを繰り広げているではありませんか!
また、VTuberの活動だけでなくアーティストとしても活動中の叶さんは、2023年10月1日から放送開始されたTVアニメ『オーバーテイク!』のオープニングで、初のアニメタイアップに抜擢。フォーミュラカーレースの入門カテゴリー「F4」を取り巻く人間模様を描いた作品に、音楽で爽やかな風を吹かせています。
今こそ叶さんの“アニメ沼”を深掘りする絶好のタイミングだろう! ということで、特に思い入れが深いと話す『鋼の錬金術師』への愛や、叶さん厳選のお気に入りアニメ作品4本などアニメ愛を思う存分語っていただきました。
さらに、アニメの主題歌やアニメの声優など、VTuberがアニメ業界へ進出している現状、2023年11月29日リリースの『オーバーテイク!』主題歌を含めた2nd Single『Tailwind』についてもお話を聞いています。
INDEX
――アニメを意識的に見始めたのは、いつ頃からですか?
叶:
いつからだろう……? 明確に「このタイミング!」というのは覚えていないのですが、本数をたくさん観るようになったのは、大人になってからな気がしますね。
小さい頃は夕方に放送していた『鋼の錬金術師(以下、ハガレン)』が大好きで、そこから少しずつアニメを観るようになったんですよ。そのあと、深夜帯で『黒子のバスケ』などを観るようになり、気づいたらいろんな作品を観るようになっていました。
――まず、叶さんがアニメにハマるきっかけとも言える『ハガレン』に惹かれた理由を教えていただけますか?
叶:
基本的にダークファンタジーの作品が好きなんです。なので、まずは世界観に惹かれました。
それに加えて、ストーリーに共感するというか、納得できるというか。僕としては、過去のちょっとした悪さをずっと背負いながら人生を生きているキャラクターが、すごくいいなと思っていて。
というのも、何かを抱えていたり、過去の過ちを背負っていたりするキャラクターを好きになることが多いんですよ。そのきっかけとなったのが、『ハガレン』な気がします。
――好きなキャラクター傾向の基盤をつくったのも『ハガレン』だったんですね。
叶:
ほかの作品であまり主人公を好きになることはないのですが、『鋼の錬金術師』はメインとなるエドワード兄弟(エドワード・エルリック、アルフォンス・エルリック)が好きですね。彼らは色々なものを背負っているので。
『ハガレン』は、原作漫画も大好きだし、今でも一番好きなアニメです。アニメの方は、6周くらい観ています(笑)。
――めちゃめちゃ観ていますね(笑)。では、深夜アニメではどのような作品をよくご覧になりますか?
叶:
恋愛系かダークファンタジー系ばかり見ていますね。
――ダークファンタジーと恋愛って、ジャンルの振れ幅が大きい……!
叶:
そうですね(笑)。特に、恋愛系で話題になっている作品を観ているかもしれないです。恋愛系は分かりやすい内容でおもしろい作品が多いんですよね。もともと人の恋愛を見ることや恋バナを聞くことが好きなのもあるかもしれません。
『ヲタクに恋は難しい』とか、前クール(23年夏クール)に放送していた『ホリミヤ』とかが好きです。恋愛アニメは後方で腕組みをしているモブキャラの気持ちで、「いいね、いいね」って頷きながら観ています(笑)。
――独自の楽しみ方を確立されていらっしゃる(笑)。ちなみに今期(2023年秋クール)は、『オーバーテイク!』以外ですと何のアニメを観ていますか?
叶:
『葬送のフリーレン』と『鴨乃橋ロンの禁断推理』と『シャングリラ・フロンティア』。あと、前クールから引き続きですが、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』も観ています。
『るろうに剣心』は昔放送されていたアニメを観たことはなかったのですが、昔のアニメ特有の良さを感じられておもしろいですね。
――90年代版の『るろうに剣心』を観ていなかった中で、現在放送中の『るろうに剣心』を観てみようと思ったのには何かきっかけが?
叶:
たぶんストリーミングサービスで上のほうに出てきたから。これまで観るきっかけこそなかったけど、タイトルはもちろん知っていましたしね。
アクション重視の作品なのかと思っていましたが、実際に観てみると意外と恋愛に重きを置いているなと。恋愛系が好きな身として楽しく観ています。最近はこういう作品が少ないから、惹かれて見てしまいます。
――それでは、ここからは叶さんがこれまで観てきたアニメから、お気に入りの作品を厳選してご紹介いただきたいと思います!
叶:
たくさんあるのでかなり悩みますが、中でも好きな4作品についてお話していきます。
叶:
まずは、『91Days』。家族を殺された主人公が、殺した人間に復讐するまでの91日間を描いた作品です。
僕は、復讐系のアニメも好きなんです。「復讐したい」と考えてしまうレベルの想いって、すごく壮絶で重たいじゃないですか。『91Days』を観ていると、その重たい感情がどうなっていくのかドキドキして、すごくおもしろかった。少し前の作品ではありますが、今でもすごく好きな作品です。
叶:
2つ目に、『〈物語〉シリーズ』。田舎町に住む主人公と、彼を取り巻く複数人のヒロインが「怪異」に関わっていくお話です。もともと西尾維新さんの小説を読んでいたのもありアニメを観たのですが、アニメはアニメで作品としてとてもおもしろかったです。
アニメーションの独特な見せ方がいいですよね。アニメ制作会社のシャフトが手がけるアニメーションは唯一無二だと思います。ほかではあまり観ない不思議な構図や演出……いわゆる“シャフト節”が楽しくて観ていたところもあります。
叶:
ここまで紹介してきた作品と方向性が変わるのですが、『銀の匙 Silver Spoon』も好きです。僕が大好きな『ハガレン』の作者である荒川弘先生が描かれた作品ということから、おそらく知ったのだと思います。北海道の農業高等学校を舞台にした青春ものですが、ゲームでも牧場系が好きなので『銀の匙』も楽しく観ていました。
『銀の匙』は、それまで観てきたアニメでは感じたことのない気持ちにさせてくれる作品なんですよ。命の価値の描かれ方は作品によって違いますが、『銀の匙』では命をいただくシーンが描かれます。戦闘がないのに命の重さを感じることができるのはいいですよね。重いことがちゃんと重いアニメが好きなのかもしれません。
叶:
恋愛系、ダークファンタジー系が好きなのですが、スポコン系も好きでよく観ます。最初にお話した『黒子のバスケ』のほかにも『ハイキュー!!』など、大好きで観ていました。
そんなスポコンの中でも最近特に好きなのが『ブルーロック』です。高校生のキャラクターたちを中心にしたサッカーものなのですが、僕自身は特別サッカーが好きというわけではなくて。話題になっていたので観てみたら、ストーリーのおもしろさに惹かれました。
また、キャラクターが個性的なのもいいですよね。僕、尖っているキャラクターが好きなんです。『ブルーロック』は尖っているキャラクターばかりじゃないですか。我牙丸(吟)や千切(豹馬)…あと、特に好きなのは蟻生十兵衛。「オシャ」が口癖で、人を判断する基準が「オシャか、オシャじゃないか」って、いかにも個性が尖っていますよね(笑)。そういうキャラクターに惹かれます。
アニメの第1話を観てから「おもしろい!」「続きが気になる!」と思い、マンガを読み始めました。マンガもおもしろいんですよ……。配信でも『ブルーロック』について、よく話しています。
ほかにも、最近観ておもしろかったのは『サマータイムレンダ』。物語が良かったし、アニメーションもすごく綺麗でした。何よりループものっておもしろいですよね。次がどうなるか気になる。あとは、『GREAT PRETENDER』も好きでした。好きなアニメ、意外といっぱいあるな……(笑)。
――かなり幅広い作品をご覧になられていますが、「こういう作品を好きになることが多い」という共通のポイントはありますか?
叶:
何を大事にして観ているかをあまり考えたことはなかったんですけど、世界観が好きになれるかどうかは絶対に軸としてあるかな。ご都合主義というか、納得いかないシーンが出てきた瞬間に冷めちゃうんですよね。
あと、自分の価値観と違ったりすると冷めてしまうので、そうじゃないことは大事かもしれません。
――お話を聞いていると、『ハガレン』や『ブルーロック』などアニメだけではなく漫画もかなり読まれていますよね。
叶:
とはいえ、漫画はアニメを観て好きになった作品や直観的に「これいいな」と思えた漫画しか読まないんですよね。アニメの人気作品の原作ってあまりハズレがないから、アニメを観てから漫画に手を出すことが多いかもしれません。
あとは、人のオススメで新しい作品に出会うことが多いです。
――アニメを観たり、人からオススメされたりして、ハマっている漫画はありますか?
叶:
少し前の作品なのですが『あげくの果てのカノン』はおもしろいです。始まりは主人公の女の子が片思いの相手に付きまとっているという恋愛ものなのですが、読み進めていくと地球を侵略している地球外生命体が登場するなどかなりSFチックなんですよ。
哲学的な部分があったり、主人公がオタクっぽかったり、自分にとって刺さるポイントが多い作品でした。もう完結している作品で、読みやすいのでオススメです。
あとは、『呪術廻戦』も好きですね。単行本で追いながらアニメも観ています。
――最近の流行りから少し昔の漫画まで読んではいるものの、漫画よりもアニメ派なんですね。
叶:
『呪術廻戦』を含め、漫画もアニメも好きですが、やっぱりアニメは観やすさがいいなと思っていて。マンガと違ってアニメは動きがあるから、より集中して見ちゃいますね。
逆に、作業をしながら観ることも多いので、それはそれでキャラクターがどういう心境や状況なのかが声で伝わりやすいところがいいなと感じています。
――漫画同様、アニメも話題になった作品から観ることが多いのでしょうか?
叶:
多いですね。例えば、「〇〇が死んだ」というネタバレを知った状態で観始めることも多いです。僕は気にしない性質なので「そうなんだ」って思いながら観ています(笑)。知った状態で観るのも、それはそれでおもしろいんですよね。
ただ、ネタバレを嫌がる人がいるのも事実なので、自分が配信で話すときには気をつけています。何回か地雷を踏みに行ったこともありましたけど……。最近では、「もう時効かな」というアニメの話しかしないように意識しています。
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坂井彩花
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