ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと小説とマンガがあったら生きていける。
――12月13日発売のミニアルバム『変身』では、6曲中全曲作詞、5曲の作曲を仲村さんが手がけています。バンドサウンドが軸にあると感じたのですが、本作はどのようなテーマを掲げていたのでしょうか?
仲村:
『変身』というタイトル通り、「1枚のアルバムの中に何人いるんだ?」と思ってもらえるような楽曲にしたいと思ったんですよ。以前から、「これって同じ人が書いているの?」と思ってもらえるような、いろんなジャンルで書くのが好きだったんですね。
とはいえ、1つのアルバムでもあるので、バンドサウンドを軸に楽曲を制作しました。
また、「アルバムの楽曲すべてに1つの違和感を持たせよう」というのも自分の中のテーマとして掲げていました。
――「楽曲に違和感」というのは?
仲村:
最近の楽曲って“ながら聴き”できるような「BGM音楽」が流行っていると思うんです。僕はそこに逆行して「BGMにしたくない」という思いがありました。もちろんBGMのような音楽が悪いとは思っていないけど、「音楽と向き合えるあの時代、また来い!」という願いや反骨精神みたいなものを込めて、このアルバムを作っています。
例えば、アルバム1曲目の「奇跡だ」は、「ツアーをやっている中でお客さんがアガる楽曲がほしいな」という意識で作ったんですけど、メロディやサウンドはアガれる明るい楽曲だと思いきや「えっ、どうしたの?」と違和感を抱くはず。
というのも、冒頭の歌詞<命をかけて紡いだものがあっさり否定されてしまったよ>、つまり「自分にとっては特別だけどほかの人にとっては特別じゃないんだな」という意味の歌詞から始まります。
ほかの楽曲も同じような意識でつくっているので、曲や歌詞の書き方はチャレンジが多くて。おかげで「今までは平面的に捉えていた物事を、立体的にして書いてみよう」という思考で書けるようになりました。
――ほかの楽曲にもどんな“違和感”を詰め込んだのかお聞きしたいです。
仲村:
このアルバムの中で最初に制作した「NOTE」は、もともとハネ曲(軽快さのある楽曲)だったのですが、最終的にはスクエア曲(厳密なリズムアプローチ)になりました。
「NOTE」はライブで作り上げて育てていった楽曲でした。楽曲のタイトルが決まっていない時、家でつくった弾き語りの状態でライブ演奏してみようという話になって、ツアー(『SHUGO NAKAMURA 3rd LIVE TOUR ~NOISE~』)の初日に演奏したんですね。
その次の公演はスリーピースバンド、その次はフルバンドで……と徐々に演奏を変化していき、最後の追加公演(23年9月16日のLINE CUBE SHIBUYA公演)では、アレンジ込みの状態で演奏しました。
アレンジ込みになったら、最初の弾き語りから曲調がガラッと変わりましたね(笑)。毎公演来てくださるファンの方たちには、楽曲が変わっていく過程を見ていただけたのも良かったなと。
――「NOTE」も楽曲の印象とは異なり、歌詞には“大切にしていることを記した遺書のようなもの”という想いが込められているのも、いい意味で“違和感”でした。
仲村:
この楽曲を最初につくったからこそ、『変身』はバンドサウンドと違和感が軸になったのだと感じます。
――ここからはアルバムの楽曲順にお話を聞いていきたいと思うのですが、まずは「don't disturb me」。ギターが引き立つ、強めのバンドサウンドですね。
仲村:
これはすぐにできた楽曲なんですけど、“激しめの音楽”をイメージして書いたら、アメリカンなイメージに仕上がりました。
強めのメロディだったので、歌詞もそこに引っ張られて、ガンガン行く系の歌詞になりました。サビを全編英語詞にしたのは挑戦だったのですが、「この楽曲は英語の良さが引き立つな」と思って。とはいえ、英語ができるわけではないので、ネットで調べて書きました(笑)。
ほかの楽曲が全部日本語の詞だからこそ、「don't disturb me」の英語詞に違和感を与えられるのではないかと思います。
――いい意味で引っ掛かる楽曲でした。続いて「bug」。哀愁漂う曲ですね。
仲村:
兄貴の影響で昔はスカを聴いていたので、「スカ系の楽曲がほしいな」とギターを裏打ちしながらノリの良いメロディを書いたんですけど、歌詞はわりと暗いことを歌っています。
「暗い歌詞なのにメロディと合わせて聴いたらそんなに重たく感じない」というバランスを意識しながら作りました。自分でも好きな1曲ですね。
――「ダメな時があってもいいじゃん」とそっと隣にいてくれるような楽曲だなと思いました。
次にお聞きしたいのが、個人的に1番違和感を覚えた「輝きますように」。最初は王道のミディアムバラードなのに、2番に入る前から転調して雰囲気がガラッと変わってめちゃめちゃ驚かされました。
仲村:
片想いの歌を書いたのですが、片想いをしている時って日々目まぐるしくいろんな思いが変わっていくし、相手の言葉に喜んだり悲しんだり、一喜一憂しますよね。その時々の心臓の鼓動をテンポで再現したいと思ったんです。
イントロからすごく穏やかに始まるけど、2番に入ると心臓の鼓動が速くなるようにテンポが上がっていくんです。
――そして最後に、本アルバム唯一の提供曲「ららら」。風味堂のボーカル・渡和久さんが作曲を担当しています。
仲村:
プロデューサーの鶴の一声から、ありがたいことに楽曲を提供していただきました。今回のアルバムに提供曲を入れようと思い、何人かの方に曲を書いていただいたんですね。その中から僕が選ばせていただいたデモが渡さんの楽曲でした。
人に曲を書いてもらう時、「自分の引き出しにないところから表現を持ってきてくれること」「自分が歌ったらハマりそうであること」を大切にしていて。その中で、渡さんの曲がすごく刺さったというか……最初にデモを聴いた時に、「ピアノ弾きの作り方だな」って思ったんです。
収録されているものはアレンジされてジャジーになっていますけど、デモの中では四つ打ちでシンプルに弾かれていたんです。それでも伝わってくるメロディの良さで選ばせてもらいました。
――歌詞はどのようにつくり込んでいったのでしょうか?
仲村:
デモの時に、渡さんが全編「ラララ」で歌っていたんです。僕自身もデモをつくる時に、「ラララ」で歌うことはあったのですが、渡さんのつくったメロディと「ラララ」が妙に頭に残っていて。「ラララ」を引用させてもらいました。
また、自分が作曲をしている時に「よし、曲づくりするぞ!」と意気込むのではなく、なんとなく散歩とかしている中でふとメロディが降りてきて思わず口ずさんでしまう瞬間というのがあって。渡さんの楽曲を聴いて、そういうことを歌詞にしようと思いました。
――仲村さんは一度音楽から離れ、声優になってから音楽活動を再開し、今に至ります。今こうやって自分の好きな音楽に向き合っている状況をどのように感じていますか?
仲村:
僕自身、実は「音楽から離れた」という感覚があまりないんですよ。どちらかというと「プロになることをやめた」という状態だったと思います。
プロになることをあきらめても、自分の周りに音楽は溢れているし、音楽を聴いて「好きだな」と感じることは自由じゃないですか。介護の仕事をしていた時も、どこに出すわけでもないけどオリジナル曲を書いていましたしね(笑)。「別に好きなものを遮断する必要ないよな」という感覚がありましたから。
だけど、ありがたいご縁から30歳を超えてアーティストデビューをさせてもらった時は、やっぱり感慨深いものがありました。同時に、「今がベストだったんだろうな」とも思いました。プロをあきらめる前、万が一いろんな歯車がかみ合ってデビューできていたとしても、きっといろいろ足りていなかったと思います。
――今だからこそ自由に音楽活動ができている、と。
仲村:
それは間違いなくあると思います。今回のアルバムを含めて、好きな楽曲を書かせてもらっているので。それができない状況だったら、音楽活動をする意味もなかっただろうなと。
――そんな仲村さんにとって音楽はどんな存在ですか?
仲村:
そうだなぁ……その時その時の感情に寄り添ってくれる存在かなと思いますね。
常に隣にいるような存在でもあり、感情の吐き出しどころでもある。普通の会話の中では言い出しづらいような気持ちも曲になら封じ込めることができる。音楽の中でなら気持ちを伝えられる。そういう意味で音楽は感情に寄り添ってくれる存在です。
(執筆:ふくだりょうこ、取材&編集:阿部裕華、撮影:小川遼)
声優・シンガーソングライター 仲村宗悟
ミニアルバム『変身』2023年12月13日発売
-INDEX-
1. 奇跡だ
作詞・作曲:仲村宗悟 編曲:村山☆潤
2. NOTE
作詞・作曲:仲村宗悟 編曲:村山☆潤
3. don't disturb me
作詞・作曲:仲村宗悟 編曲:村山☆潤
4. bug
作詞・作曲:仲村宗悟 編曲:村山☆潤
5. 輝きますように
作詞・作曲:仲村宗悟 編曲:村山☆潤
6. ららら
作詞:仲村宗悟 作曲:渡 和久 編曲:村山☆潤
【初回限定盤】
LACA-35074
¥3,700(税別)
Blu-ray付き / スペシャルブックレット仕様
【通常盤】
LACA-25074
¥2,000(税別)CDのみ
仲村宗悟(なかむら・しゅうご)
1988年7月28日生まれ、沖縄県出身。B型。
仲村宗悟 Official Website:https://shugo-nakamura.com/
仲村宗悟 公式X(旧:Twitter):https://twitter.com/ShugoAbc
仲村宗悟 公式Instagram:https://www.instagram.com/nakamura_shugo_official/
仲村宗悟 公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@nakamura_shugo_official
ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと小説とマンガがあったら生きていける。
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます
特集記事
ランキング
電ファミ新着記事
六本木、Follow Me!!と言いたくて…秋【黒木ほの香のどうか内密に。】
2024.11.21