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2015年上演の舞台『メサイア ―鋼ノ章―』より加々美いつき役で出演している杉江さんに、作品と役にかける想いなどたっぷりと語っていただきました!
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杉江大志さん(以下、杉江) 『メサイア』シリーズはとても長く続いている作品で、スパイによる諜報戦を描いた物語なんですが……う~ん、むずっ!(笑) 一言では語りつくせません!
――では、 “メサイア”が意味するものとは?
杉江 “サクラ”と呼ばれるスパイにとっての、唯一の心の拠り所で……それをなんて表すのかと言われたら、やっぱり“メサイア”という言葉が一番しっくりくるんですけど、言い換えるなら“相棒”って言うのかな。そのメサイア同士である2人の絆、そして生きるとはどういうことなのか。テーマとしては重く、大きなものを描いた作品です。
――そんな本シリーズの魅力とは、どのあたりでしょうか。
杉江 メサイアである2人の絆、バディアクションとしての面白味。そして登場人物はみんな、大きな壁に対する大きな葛藤を抱えています。僕たちが演じるにあたって大切にしているのが、それをいかにリアルに感じて、表現するかというところ。『メサイア』の持つ魅力は、そういう葛藤の表現にあるんじゃないかなと思います。
杉江 壮絶な過去という点で言えば、もっと重たいものを背負っているキャラクターはたくさんいるんですが……。僕も、加々美として長く『メサイア』に携わらせていただいた分、色んな姿を描いていただきました。
その中で見えてきたのは、加々美は人としての弱い部分をたくさん持っているからこそ、大切なものを見つけたときには、それを守るための強さや、信じ抜く強さを持っている人。踏ん張る強さを持った子だと思います。
――前作の舞台『メサイア ―月詠乃刻―』(2018年上演)では、加々美が卒業ミッションを経て、メサイアである有賀涼(井澤勇貴さん)が登場しない中での単独主演作となりましたが、プレッシャーもありましたか?
杉江 今までは2人が本当の相方になるまでの揺れ動きを描いてきていたから、相方がいない不安はあったんですけど……。それよりも、”卒業ミッションを終えた後を描く”っていう部分への不安の方が大きかったですね。
――加々美にとっては、描かれる内容が少し違う物語でしたね。
杉江 サクラ候補生の柚木小太郎(山沖勇輝さん)と御池万夜(長江崚行さん)の関係が中心に描かれる作品でもあったので、物語の中で自分が2人のことをどう生かすか。それは次の世代へと物語が続いていく、『メサイア』シリーズならではの難しさでした。
杉江 僕が作品ごとに大きく意識して変えているということはないんですが、加々美自身は少しずつ、心が成長していますね。元々は多分、色んなものを失って、からっぽになったところに暗いものばかりが入っていたんですが、そこへ有賀という光がひとつだけ差してきて。
その光が、作品ごとに少しずつ大きくなっていって、今となってはどんな闇が入ってきても、その光がひとすじでもあれば立っていられる人間に成長したんだな、と思います。
――加々美と有賀の卒業ミッションが描かれた舞台『メサイア―悠久乃刻―』(2017年上演)は、2人にとっての大きなターニングポイントだったと思います。
杉江 加々美って、初めて『メサイア』に登場した頃は、もっと明るい子だったと思うんです。でもそれは、自分の中の闇を隠すための明るさだった。
そのあとに舞台『暁乃刻』(2017年)で、自分を守るための壁だった明るさが少し崩れて、その壁を壊した向こう側まで有賀が入ってきたのが舞台『悠久乃刻』(2017年)。そこからさらに一歩を踏み出すことができたのも、舞台『悠久乃刻』だなって思います。
――杉江さん自身もシリーズ初登場時からキャリアを重ねてきていますが、作品ごとにどんどん難しいことが要求されるようになっているのでは?
杉江 そうなんです! アクションもですし、もちろんストーリーの面でも。誰の仕業なのかは知らないですけど……脚本の毛利 (亘宏)さんのせいかなって!(笑)
――どんどん、毛利さんからの期待が大きく(笑)。
杉江 毎回、本当に「前回はなんとかクリアしたな」って思うのに、また新しい作品になると、とんでもない壁が用意されていて(笑)。前作を超える、ものすごい心の葛藤を毛利さんが投げつけてくるんです。それは多分、一つ前の作品の時にぶつけられていたら、もしかしたら演じ切れていなかったかもしれないし、表現できなかったかもしれない。でも、そのおかげで成長できたなとも感じています。
杉江 う~ん、一番ワケが分からなかったのは舞台『鋼ノ章』(2015年)かな。本当になにも分からない中で飛び込んだので……。今となって振り返ると、その時に演出の西森 (英行)さんから言われていることって難しいことじゃなかったんですけど、それすらも僕には分からなくて。
――今なら簡単に分かることでも、その時は分からなかったと。
杉江 でも、そんな状態でも丁寧に向き合ってくださった西森さんにはすごく感謝しています。それにすごい先輩たちが周りにたくさんいて、その中で「思っていたよりも、もっともっと自分はなんにもできないんだな」とか、「芝居って奥が深いな」って思えたのは、自分の役者人生の中では本当に大きいなって思っています。
芝居を模索していく方法も、そこで先輩たちからちょっとずつヒントをもらった気がします。
――そんな舞台『鋼ノ章』が加々美の初登場作ですが、実は公演前に映画『深紅ノ章』(2015年)が先に撮影されていたそうで。
杉江 初めての映画撮影で、もうホント、ワケが分からなかったです! ワンカット目は、足が震えて……自分でもびっくりしました(笑)。「こんなに緊張したりするタイプじゃないんだけどな」って思いながらも震えていたことを、すごく覚えていますね。
何も分からないまま台本をもらって、内容も難しくて。でも、その時できる精いっぱいをやらせていただきました。
杉江 今回は、『メサイア』シリーズの中でも初めての密室劇です。今までになかった作り方なのですごく挑戦作ではあるんですけど、『メサイア』らしさはすごく残っていますし、『メサイア』で一番描かれるべきである心の葛藤という面では、もしかしたら他の作品よりも濃く描かれているんじゃないかなって思います。
そこが今回の見どころでもあり、前作までに散りばめられていた謎に対して、『メサイア』はどの作品もそうですけど(笑)、今回も皆さんの想像の斜め上をいく答えが待っていると思いますので、ぜひ楽しみにしていただけたら!
――舞台ではなく、映画だからこそ描けるストーリーになっているのではないかと期待しています!
杉江 そうですね、映画ならではの作品になっていると思います。舞台と映画で見せ方を変えようとはあまり意識していないんですが、自然と違うようには見えるかと。だからこそ、『メサイア』っていう作品の空気感だけは一貫できたらなと思っています。
――ありがとうございました!
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