職業・声優、そして会社代表 岡本信彦がドラクエと歩んだ36年。『ドラゴンクエスト』は「ずっと共通言語でいてくれた」

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職業・声優、そして会社代表 岡本信彦がドラクエと歩んだ36年。『ドラゴンクエスト』は「ずっと共通言語でいてくれた」
【ドラゴンクエスト 36周年記念インタビュー】「ずっと共通言語でいてくれた」職業・声優、そして会社代表 岡本信彦がドラクエと歩んだ36年。
 日本を代表するRPG『ドラゴンクエスト』が、2022年5月27日“ドラゴンクエストの日”に36周年を迎えた。
 1986年に誕生したファミコン用ソフト『ドラゴンクエスト』は、現在までにナンバリングタイトルだけでも11本、派生シリーズは80をも超えるタイトルが発売。全世界でシリーズ累計8400万本以上の出荷・ダウンロード販売を達成(2021年9月時点)しており、国民的RPGとして愛されている。
 36年の歴史を誇る『ドラゴンクエスト』シリーズ。その歴史の長さが表すように、『ドラゴンクエスト』から影響を受けたという人は非常に多いのではないだろうか。移動中に「ルーラが使えたらなぁ」と思ったり、ビアンカとフローラのどちらを花嫁にするかで友人と言い争ったり、誕生日を迎えるたびに「レベルが上がった」と茶化してみたり、勇者という存在から勇気をもらったり。
 『ドラゴンクエスト』はその知名度とクオリティーの高さから、プレイした人にさまざまな影響を与えており、それは声優界も例外ではない。『ドラゴンクエスト』から強く影響を受けている一人が、声優 岡本信彦氏だ。
 今年1月に声優事務所ラクーンドッグを立ち上げた声優の岡本信彦氏。岡本氏は今年10月に36歳を迎える『ドラゴンクエスト』の同級生。「ゲームは1週間に1時間」と厳しい環境で育ちながらも『ドラゴンクエストモンスターズ』【※1】をやり込んだ幼少時代。幼少期に出会った声優を目指すひとつのきっかけとして『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』【※2】を挙げており、運命的に現在放送中のアニメ『ダイの大冒険』でノヴァを演じている。
※1『ドラゴンクエストモンスターズ』:
1998年にエニックス(当時)より発売された、育成RPG「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズの総称。『ドラゴンクエスト』シリーズの外伝的な作品にあたる。第1作目はゲームボーイ用ソフト『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』。

※2『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』:
1989年に集英社の週刊少年ジャンプより連載スタートした、三条陸氏(原作)、稲田浩司氏(作画)による「ドラゴンクエスト」シリーズの世界観・設定を元にした漫画作品。ゲーム作品との接点はないオリジナルストーリー。1991年、2020年にアニメ化。
 そこで、『ドラゴンクエスト』36周年を記念し、岡本氏に『ドラゴンクエスト』愛を語っていただくインタビューを敢行。『ドラゴンクエストモンスターズ』のマニアックな話を含めた『ドラゴンクエスト』遍歴や『ドラゴンクエスト』と歩んできた声優のキャリア、会社の代表という新たな“職業選択”をした岡本氏の今を直撃すると、岡本氏にとって『ドラゴンクエスト』は人生であることが見えてきた
聞き手・編集/豊田恵吾
文/阿部裕華

布団に隠れながらプレイした『テリーのワンダーランド』

──本日はよろしくお願いします。岡本さんは『ドラゴンクエスト』と同い年になるわけですが、初めてプレイした『ドラクエ』シリーズは何だったのですか?

岡本信彦氏(以下、岡本氏):
 小学生のとき、誕生日か何かのプレゼントで両親に買ってもらった『テリーのワンダーランド』【※】が最初です。

『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』

※『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』: 1998年にエニックス(当時)より発売された、ゲームボーイカラー用ソフト。モンスターの育成・対戦要素に特化した「ドラゴンクエストモンスターズ」シリーズの第1作目。主人公のテリーを操作してモンスターを育成し、モンスター闘技大会「星降りの大会」の優勝を目指す。(画像:電ファミニコゲーマー編集部撮影)

──ナンバリングタイトルではなくいきなり『モンスターズ』だったのですね(笑)。

岡本氏:
 なぜかというと、1週間に1時間しかゲームが許されない厳しい家庭で育ったので、ナンバリングタイトルをプレイするのが難しくて。そんな中、ゲームボーイやゲームボーイカラーは隠れて1週間に1時間以上できちゃうんです。本当はやっちゃダメだけど、布団の中に懐中電灯を持ち込んで隠れてめちゃめちゃやっていました(笑)
──当時の子どもたちはみんなそうやってゲームをしていましたよね(笑)。

岡本氏:
 しょうがないですよね(笑)。
 『テリーのワンダーランド』と一緒に攻略本も買ってもらって、親の目があるときはずっと攻略本を見ていました。ダークドレアムが強いと思って、「これとこれを配合してつくろう」と頭の中でずっと考えていました(笑)。『テリーのワンダーランド』は当初、マダンテゲー【※】だったんです。
※マダンテゲー:
『ドラゴンクエスト』シリーズに登場する呪文のひとつ「マダンテ」。MPをすべて消費して敵全体に大ダメージを与える呪文のため、どれだけ速くマダンテを撃てるかが勝負の鍵を握った。
──ゴールデンスライムが強かったですよね。

岡本氏:
 そうです、そうです。だから友達と対戦するときは「マダンテなし」というローカルルールができて(笑)。そこからは基本的にゾーマが強かったんですよね。ダークドレアムはザキに弱い【※】ことがわかってゾーマ推しになりました。

※ザキに弱い:
『テリーのワンダーランド』に登場するモンスターは、メラ系に強い、ヒャド系に弱いなど、特技・呪文に対する耐性があり、???系モンスターは耐性の高さが特徴だった。しかし、ほかの魔王がザキ耐性を持っている中、ダークドレアムだけがザキがたまに効いてしまう耐性だったため、対戦ガチ勢はダークドレアムを使用していなかった。
──そのエピソードだけで、かなりやり込んでいたことが伝わりました(笑)。『テリーのワンダーランド』が発売された1998年は、『ポケットモンスター』(以下、『ポケモン』)も人気があったじゃないですか。『ポケモン』を経験しての『テリーのワンダーランド』だったのでしょうか?

岡本氏:
『ポケモン』もめちゃくちゃやっていました。ただ『赤・緑』のときは、圧倒的な強さからここでも「ミュウツーなし」のローカルルールができたんです。それで通信ゲームの面白さにハマり、『テリーのワンダーランド』に。
──『ポケモン』で対戦ゲームやモンスターを集めて戦う面白さがわかっていたからこそ『テリーのワンダーランド』にハマった、というわけですね。

岡本氏:
 そうなんです! 『テリーのワンダーランド』は同級生みんなで買って、通信ケーブルを使って対戦しまくっていました。
──通信ケーブルを使ったプレイでは、対戦だけではなくて配合も行えましたが……。

岡本氏:
 配合はほとんどやらなかったです。“ようがんまじん”、“ひょうがまじん”でゴールデンゴーレムをつくるときしか通信による配合(お見合い)はやっていなかった気がします。週末に友達と別れるときは、「来週また勝負だ!」って各々強くなっていく感じでした。
──自分の集めたモンスターだけで進めるとは、かなりストイックなプレイですね。『テリーのワンダーランド』以降も『モンスターズ』シリーズはプレイされていたんですか?

岡本氏:
 『テリーのワンダーランド』と同じくらいやり込んだのは『ジョーカー』【※】でしたね。何百時間もやっていました。

※『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー』:
2006年にスクウェア・エニックスより発売された、ニンテンドーDS用ソフト。「ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー」シリーズの第1作目。シリーズ初のインターネット対応作品。
──それは何歳ぐらいのときですか?

岡本氏:
 大学生の時です。1週間に1時間というルールがなくなり、さらにちょうどニンテンドーDSやプレイステーション・ポータブルなどの携帯ゲーム機が流行っていたタイミングでもあって(笑)。『ジョーカー』以外にも『モンスターハンターポータブル 2nd G』『ポケモン ダイヤモンド・パール』もやっていました。
──全国の親御さんにお子さんにゲームを厳しくすると反動でこうなるんだよ、と伝えたいですね。

岡本氏:
 そうなんですよ! テストでいい点を取った成功報酬でもいいから、やらせてあげたほうが僕はいいと思います。どれだけがんばっても1週間に1時間だと、やりたくてしょうがな過ぎる(笑)
──それでタガが外れたように『ジョーカー』もやり込んでいた。

岡本氏:
 めちゃくちゃやっていました。普通に強かったと思います(笑)。

大人になってハマったナンバリングの『ドラゴンクエスト』

──ナンバリングタイトルをプレイしたのは大人になってからなのですか?

岡本氏:
 そうですね。大人になってようやくプレイしたナンバリングタイトルが『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下、『DQⅢ』)と『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(以下、『DQV』)でした。この2タイトルは「名作だ」とオススメされてプレイを始めたのですが、紛うことなき名作でした
 最初に『DQⅢ』をやったとき、前情報でラスボスがゾーマだと聞いていたのにバラモスが出てきて「あれ?」と思いながらプレイしたんです。でも、そのあとにちゃんとゾーマが現れて。バラモスを倒してからアレフガルドに行く、あの流れは特に良かったです。『テリーのワンダーランド』でゾーマが強かったので、本家の『DQⅢ』でもさぞ強いんだろうと思っていたら、やっぱり強くて。すごく嬉しかった記憶があります。

 『DQV』も前情報ありでプレイしたのですが、めちゃくちゃ面白かったですね。

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』

『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(画像:電ファミニコゲーマー編集部撮影)

『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』

『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(画像:編集部撮影)

──ビアンカとフローラの話【※】も前情報で聞いていたのですか?

岡本氏:
 聞いていたんですけど、やっぱり迷いました。でも僕はビアンカでした。完全にビアンカ派ですね

※ビアンカ・フローラ論争:
『ドラゴンクエストV 』の“人生最大の選択”において生まれた論争。幼馴染の「ビアンカ」か、お金持ちの娘「フローラ」のふたりから花嫁を選ぶことになる。2008年発売のDS版では、第三の花嫁候補「デボラ」が登場した。
──36歳になったいま選ぶとしてもビアンカですか?

岡本氏:
 ビアンカですね。普通にかわいかったんです。絵だけだったらフローラ派になっていたかもしれないけど、幼少時代のビアンカを使っているとどうしてもかわいく見えてきちゃうマジックがありました

 ただ、フローラはイオナズン役として選んでみたいと思います(笑)。
──呪文要員として(笑)。

岡本氏:
 一度も使ったことがないので、使ってみたい気持ちはあります。
──『DQV』はいくつくらいのときにプレイをされたのですか? というのも、『DQⅤ』って親子3代にわたる物語じゃないですか。父親との冒険にはじまり、主人公、そして子どもへと引き継がれていく。プレイする年齢によっては感想が大きく変わりそうだなと。

岡本氏:
 確かに、かなり変わるかもしれないですね。プレイしたのは20代だったと思うのですが、もっと子どものときにやっておきたかったなと思いました。どのナンバリングでも『ドラクエ』は子どもの頃にやるのがベストだと思います。もちろん人それぞれベストは違うものの、子どもの頃にプレイしたら絶対違う感覚があったんだろうなと。自分が子どもの時にはプレイできなかったからこそ、そう強く感じますね。
『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(以下、『DQⅪ』)も大人になってからプレイしましたけど、子どもの頃の僕がプレイしたらぜんぜん違ったんだろうなって。例えば、パーティのメンバーとか。
──すごくよくわかります。

岡本氏:
 小学生のころは、女の子をパーティに入れるのはなぜか恥ずかしい自分がいて(笑)。むしろいまはガンガン入れているのに(笑)。
──あとひとりいれば(女子キャラで)パーティが埋まるのに! とかですね(笑)。

岡本氏:
 そうそう(笑)。パーティに入れるのと入れないのとでは、グッとくる場面も変わってきそうですし。そういった意味でもぜんぜん違うんだろうなって。
──『DQⅪ』はPlayStation 4版と3DS版どちらでプレイを?

岡本氏:
 3DSでした! 最初にプレイしたときは正直に言うと「これが勇者なのか?」と少し違和感を覚えました
──たしかに、すごく勇者という存在を問われる作品です。

岡本氏:
 とはいえ、女性パーティにしていたので、その分「助けなきゃ!」と勇者的な気持ちになっていましたけど(笑)。
──(笑)。ほかのナンバリングタイトルについてはいかがですか?

岡本氏:
 『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』(以下、『DQⅨ』)は個人的に一番びっくりしたタイトルでした。すれちがい通信でみんなが「まさゆきの地図」【※】を探し求めていて。強い宝の地図が出たときには、友達とカフェに集まってみんなで戦った記憶があります。

※まさゆきの地図:
2009年にまさゆきというユーザーが発見した地図。掲示板で予告して秋葉原にてすれちがい通信で配布した。メタルキングのみが発生する階があり、レベル上げに最適な内容から、日本全国に拡散していった。
──4人で役割を持ってボス戦に挑んでいたのですね。

岡本氏:
していましたね。オンラインの良さももちろんあるけど、みんなで顔を突き合わせてプレイするのはすごく楽しかった記憶があります。いい時代だったな……。
──そういえば、『テリーのワンダーランド』の主人公、テリーが活躍する『ドラゴンクエストVI 幻の大地』はプレイされていないんですか?

岡本氏:
 やってないんですよ! だから、大人テリーのカッコよさを知らないんです!
──「テリー」といえば子どものほうをイメージしてしまうわけですね。

岡本氏:
 ただテリーは、アプリゲームに登場していたので「CV:神谷浩史さん」のイメージがあります。舞台版では「風間俊介さん」のイメージ【※】がめちゃくちゃありますね(笑)。

※ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー:
2016年「ドラゴンクエスト」30周年プロジェクトのひとつ。『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』がストーリーのベースとなっている。

“黒竜”好きが選ぶ、No.1ドラゴンクエストモンスターは?

──『ドラクエ』シリーズの中で岡本さんが特に好きな呪文やモンスターは何でしょうか。

岡本氏:
 呪文は「ジゴスパーク」語感がすごく好きで、「ジゴスパーク」ってよく口に出してましたね。カッコいいなって思っていました。濁音と破裂音が続くからですかね。同じく濁音と破裂音が続く「ビッグバン」より「ジゴスパーク」派でした(笑)。

 一番好きなモンスターは、凶魔獣メイザー。デザインが超好きなんです! 黒い竜だし筋肉質だし、すごくカッコいい。最終的にめちゃくちゃ育てて最強にしました。
──こう、男らしい感じのモンスターがお好きなんですかね?

岡本氏:
 まず黒竜が好きなんです。黒竜こそ至高。これは(『幽☆遊☆白書』の)飛影【※】の影響なんですけど……(笑)。

※飛影:
集英社の週刊少年ジャンプにて1990 – 1994年に連載されていた冨樫義博氏による『幽☆遊☆白書』のキャラクター。黒い髪、黒いコート、黒いパンツ、黒いブーツといういで立ちで、第三の眼・邪眼を持つ。飛影の必殺技にして邪王炎殺拳の最大・最強奥義、邪王炎殺黒龍波は中二病の始祖的存在。

──中二病感が極まっていますね(笑)。

岡本氏:
 フォロボスやバルボロスだと、ちょっと“黒成分”が足りないんですよね。ブラックドラゴンだと、ちょっとかわいすぎるし。凶魔獣メイザーは真っ黒な竜でかっこいい!(笑)。
──凶魔獣メイザーは『モンスターズ』にしか登場しないのでちょっと意外でした。

岡本氏:
 たしかにそうですね(笑)。
 有名どころだと、デザインでいえば破壊神シドーが好きかもしれないです。とはいえ、シドーってベホマを使うじゃないですか。破壊を司る邪神といわれているのに、破壊でも邪でもなく治癒能力に長けているなんて、と思っていました。ハーゴンのほうが攻撃的なんじゃないか、って。
──当時『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』をリアルタイムでプレイしていた立場からちょっとフォローさせていただくと、ハーゴンを倒してシドーが出てきたとき、HPやMPが疲弊した状態でがんばって戦って「あ、もう少しで倒せそう」と一瞬思うわけです。そこであのベホマを使われると心を折られるんですよね(笑)。シドーがベホマを唱えた瞬間、無言でコントローラーを置きましたもん(笑)。

岡本氏:
 なるほど、そこに邪神感があったんですね(笑)。あとは、キラーマシンのデザインもすごく好きです。かわいさもカッコよさもある、すばらしいデザインですよね。そのほかは、はぐれメタルの造形も好きです。Zoffとのコラボでは、はぐれメタルモデルのメガネを買いました。ああいうデザインがめちゃくちゃ好きだったのかもしれないです。
──鳥山先生らしい、かわいさとカッコよさを両立させたようなデザインですね。

岡本氏:
 子どものころから鳥山(明)先生の描くモンスターの造形はとっても好きでした。大人になって行った六本木の『ドラクエ展』で堀井(雄二)さんの描いた「スライム」の原案【※】を見たときには「鳥山先生はやっぱり天才だ!」と思いました(笑)。

※堀井雄二氏の「スライム」原案:
『ドラゴンクエスト』25周年記念の「ドラゴンクエスト展」にて展示。イメージ絵と「ゼリー状のドロドロしたモンスター」との記載があった。
──あの原案から、よくあの造形に落とし込めたなと思いますよね(笑)。あと、『ドラクエ』といえば、貯めたゴールドを使うときに武器を買う派か防具を買う派で分かれるじゃないですか。岡本さんはどちらでしたか?

岡本氏:
 武器を買いがちだったかもしれませんね。子どものころはとりあえず倒せればいい、と思っていました。防具の大事さは大人になってから知りました(笑)。
 だけど、大人になってからプレイした『DQⅤ』で、グリンガムのムチは一回も手に入れたことがないですね。喉から手が出るほど欲しかったはずなのに
──欲しかったのに手に入れなかったのですか?

岡本氏:
 カジノもちゃんとやり込んでいたんですけど……。たぶん全体攻撃は呪文でいいか、と思っていたんでしょうね。

「クロコダインはボラホーンより強いんだ!」

──岡本さんが初めて仕事で関わるようになった『ドラクエ』作品は何でしょうか。

岡本氏:
 3DS版『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』のナレーションに関わらせていただいたのが最初です。
──最初にお話が来たとき、めちゃくちゃ嬉しかったんじゃないですか?

岡本氏:
 嬉しかったのと同時に僕でいいのかな?と思いました。それまでは中田(譲治)【※1】さんや安元(洋貴)【※2】さんなど、声が低めの方がナレーションをやられていたので、「本当にいいんですか?」とスタッフさんに聞きました(笑)。よろこんでやらせていただきました。

※1中田譲治:
1954年生まれ。声優。「ドラゴンクエスト」シリーズでは、ニンテンドー3DS版『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』でモリー役を演じる。

※2安元洋貴:
1977年生まれ。声優。「ドラゴンクエスト」シリーズでは、『ドラゴンクエストヒーローズII 双子の王と予言の終わり』でハッサン役を演じる。

──『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカの不思議なふしぎな鍵』の公式大会にもゲスト解説で出演されていましたよね?

岡本氏:
 はい、イベントにゲストで参加させていただいて。エキシビション・マッチで優勝者の方と1回だけ戦わさせていただきました【※】
 たしかアスラゾーマを使っていたんですけど、ボコボコにやられましたね(笑)。バイキルトからの連打で勝とうと思ったら、一瞬にして“いてつくはどう”を出されました。まさかこんなにボコボコにされるとは……! というくらいやられました(笑)

※『ドラゴンクエストモンスターズ2 イルとルカの不思議なふしぎな鍵』スクウェア・エニックス公式 Great Masters’ GPチャンピオン大会:
2014年8月2日、東京・渋谷のアイアシアタートーキョーにて開催された「ドラゴンクエスト夏祭り」内の一コーナー。安元洋貴氏と岡本信彦氏がゲスト解説を務めた。
──(笑)。

岡本氏:
 作品としては『ドラゴンクエストX 天星の英雄たち オンライン』でキャラクター(レオーネ)を演じさせてもらって。そのキャラクターがなかなか闇深かったのが印象に残っています(笑)。
──そして現在は、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(以下、『ダイの大冒険』)に出演されています。

岡本氏:
 はい。嬉しく思います。『ドラクエ』で最初に触れたのは、マンガの『ダイの大冒険』だったかもしれません。親が漫画を読んでいたのがキッカケで『ダイの大冒険』と出会って、めちゃくちゃハマりました。アニメも好きでよく見ていましたし、声優を目指したひとつのキッカケでもあります
──『ダイの大冒険』のどんなところに惹かれたのでしょう。

岡本氏:
 いまでこそ“自己啓発”という言葉がありますが、それに近い感じがして。子どもながらに成長させてもらえたんですよね。がんばったり、努力したりすることは決してダサいことじゃない、と教えてもらえた作品なんです。
 あとはやっぱりデザインも好きで。『ドラクエ』のナンバリングタイトルにもバーンやミストバーン、ヴェルザーは登場するんだろうと思っていたら、いなかったんですよね。クロコダインすらいないんだ、と知ってちょっとガッカリしたり(笑)。ギガブレイク、獣王会心撃、メドローアも、『ダイの大冒険』で出てきた特技なんだと、あとで知りました。
──『ダイの大冒険』の特技は『ジョーカー』に多数取り入れられていますよね。

岡本氏:
 『ダイの大冒険』オリジナルの要素が『ドラクエ』の原作世界に逆輸入していくってすごいことですよね。そんな感じで、至るところに『ドラクエ』の因子を感じつつ『ダイの大冒険』としてのオリジナル要素があって、子どもの頃はすごく熱かった気がします。
──『ダイの大冒険』で好きなキャラクターは?

岡本氏:
 いまはポップなんですけど、子どものころはヒュンケルやクロコダインが好きでしたね。「クロコダインは絶対にボラホーンより強いんだ!」って思っていました。
──その言葉、記事の見出しに使わせてもらいます(笑)。

岡本氏:
 子どものころ、ヒュンケルがボラホーンに「オレの仲間には おまえの倍は 腕力の強いやつがいるぞ」と言ってたもん! って思ってましたから(笑)。いまでこそ、クロコダインのためを思ってヒュンケルはそうやって言ってくれていた可能性もあるのかなと思うんですけど、でも子どもの頃は、クロコダインがボラホーンより強いと信じて止まなかったですね(笑)。
 「VSバラン編」でギガブレイクを受け続けて、タンクとしての役割を担っているクロコダインも最高ですよね。
──令和のいま、クロコダインがまさかのトレンド入りを果たしていました。

岡本氏:
 「ギガブレイクでこい……‼︎」は名セリフですよね。アニメでは前野(智昭)【※】さんがクロコダインを演じていましたが、ずっと「ぐわあああ──ッ!」と言っていて、前野さん大変だったろうな……と思いました(笑)。何回も「クロコダイーン!」と名前を叫ばれていますし(笑)。

※1982年生まれ。声優。アニメ『ダイの大冒険』でクロコダイン役を演じる。
──(笑)。話を戻しますが、岡本さん演じるノヴァもすごくいいキャラクターだと思います。

岡本氏:
 北の勇者として戦って成長していく姿やロン・ベルクさんとの今後の関係についても考えさせられて。ずっと師匠としてあがめるんだろうなというエモさがあります。
 でも子どもの頃はあんまり好きじゃなかったんですよ(笑)
──そうだったんですね。

岡本氏:
 子どものころはロン・ベルクのほうが好きでしたね。漫画で「もうひとりの勇者」の話を読んだときには、もうひとりの勇者=ロン・ベルクだと思っていました。
──でも大人になると印象が変わった、と。

岡本氏:
 大人になってからノヴァの良さがわかりましたね。生命エネルギーをオーラブレード(闘気の剣)へと変えて戦う姿はカッコいいなって思います。

声優から会社経営は「遊び人」から「賢者」と同じ

──ちょっと子どもっぽい質問ですけど、声優という職業を『ドラクエ』世界の職業にたとえるとしたらどんな感じだと思いますか?

岡本氏:
 魔法使いに近いのかなと。声優さんが『ドラクエ』の職業にあったら大声で戦うしかないですから。「言霊師」みたいなイメージですかね。だから、MPが重要な気がします。安元さんみたいなタイプはモンクでいけそうな気がしますけど(笑)
──安元さん、会心の一撃を連発できそうですもんね。

岡本氏:
 出せそうですよね。ずっと魔神斬り、みたいな(笑)。
──(笑)。『DQⅢ』から「職業」が登場しましたが、岡本さんは今年から声優業だけではなく会社代表という職業に就かれました。まだ代表になってから間もない状況だと思いますが、声優と会社の代表という「職業」を振り返ってみていかがですか?

岡本氏:
 いままでプレイヤーとして仕事をしてきて、社会勉強を全くしてこなかったですし、社会に溶け込むのが苦手な部分もあり役者をやっていたんです。でも、会社を立ち上げて一気に社会へと関わらざるを得なくなったわけですから、「遊び人」と「賢者」くらい差がありますね(笑)
──でも「遊び人」は「賢者」になれるわけですからね。

岡本氏:
 そんな感じで変化したイメージです(笑)。声優だけのときは自分の演じる役のことだけを考えればよかったのですが、この歳になって「常識とは?」など悩み出す感じでした

 いまは所属するメンバーたちには、健康で過度なストレスがない範囲でがんばってもらえたら一番いいなと思っています。
──ご自身の中で考え方がだいぶ変わってきたと。

岡本氏:
 だいぶ変わりました。
 あと、マネジメントやデスクなどに対して、こんなに大変な仕事をやってくれていたんだ、と職業の見え方も変わりました。役者だけのときはマネージャーがどんな仕事をしているのか、やっぱりあまり考えていなかったんですよ。そういったことを考えずに意見をぶつけていたんですけど、マネージャーの仕事を知れば知るほど頭が上がらないです
──「ガンガンいこうぜ」だけじゃダメだ、となったわけですね。

岡本氏:
 はい。「いのちだいじに」で健康を大事にして、「いろいろやろうぜ」で幅広く、という感じになりました。役者だけだったころは、自分ひとりで何とかなるんじゃないかと誤った考え方をしていたかもしれないです。
──「おれにまかせろ」だけではなく、周りの力があってこそということですね。その考え方は年齢を重ねて気づいたというよりも、立場が変わったことで気づいたのでしょうか?

岡本氏:
 立場だと思います。「会社とは」、「組織とは」を理解したことで、これまでどれだけ会社や組織ががんばってくれていたのかを知ることができました。それはすごく良い機会だったと思います。マネージャーやデスクなど、支えてくれる人たちがいて、初めて声優はプレイヤーになれるというか

 『ドラクエ』にたとえると声優は「キャラクター」、マネージャーが「武器」、デスクは「防具」なんですよね。「武器や防具なしで戦えますか?」という話に通じるわけです。一定の呪文は使えるかもしれないですけど、MPには限界がありますから。まあ、なかには生身でボコボコにできる人もいるとは思うんですけど(笑)。
──“やみのころも”を剥がさなくてもゾーマを倒せる人はいるかもしれないけど、“ひかりのたま”を使ったほうがいいよね、という感じですね(笑)。

岡本氏:
 そうですね(笑)。でもそんな人は一握りだと思うんです。普通は“やみのころも”を剥がさないとダメージが通らないですからね。武器や防具が強ければ、クエストをドンドコ進められる。そういうことに気づけてよかったなと思います。

岡本信彦にとって『ドラゴンクエスト』とは──。

──いま振り返ってみて、岡本さんにとって『ドラクエ』はどんなタイトルなのでしょうか。

岡本氏:
 子どものころからずっとそばにいたコンテンツであり、ずっと共通言語でいてくれていたコンテンツだと思います。小学生のころも『ドラクエ』の話が誰とでもできましたが、中高大、そして社会人になったいまでも、延々とその話ができるっていいなと。「どの呪文が使いたい?」とか、共通言語だなって(笑)。
──疲れているときに「ホイミ」と言えば通じるってすごいことですよね。

岡本氏:
 そう思いますね。
 『ドラクエ』は「少年の冒険譚」の感じがいいなって僕は思っていて。いつまでも小2の心でできるのがいいなって
──話が逸れますが、岡本さんは『ファイナルファンタジー』シリーズも遊ばれていたのですか?

岡本氏:
 幼少期に「『FF』を買ってきて」と親にお願いしたんですけど、うちの両親は『ファイナルファイト』【※】を買ってきたんです。

※ファイナルファイト:
1989年にカプコンよりアーケードゲームとして発売されたベルトスクロールアクションゲームの家庭用機種移植版。「横スクロールアクションの代名詞的作品」と称されている。
──たしかに“FF”ではありますね(笑)。

岡本氏:
 アクションゲームでしたので、1週間に1時間しかゲームができない僕にとってはちょうどよかったです(笑)。そんなこともあり『ファイナルファンタジー』はやっていなかったですね。
──(笑)。すみません、話を戻します。たしかに『ドラクエ』はピュアな心でプレイできますよね。

岡本氏:
 大人になっても純粋な感情のままプレイできる気がしますよね。
 ゲーム自体のわかりやすさというか、学ばせてくれるところもいいなと思います。ちゃんとレベル上げをしないと、しっかりやられるっていう。橋を渡ったら強いモンスターが出てくるところとか、わかりやすく勉強させてもらっている感じがしますね。いろんなことを教えてもらったと思います。
──それでは最後に『ドラクエ』36周年のお祝いメッセージをお願いします。
岡本氏:
 36周年、おめでとうございます! もう36周年なんだ、と意外な気持ちでいます。それは自分に対して思っているせいもあると思うのですが……(笑)。

 そんな36年の中でデザインやゲーム性、コマンドバトルの先駆者として一番わかりやすいものをずっと作り続けてくれた気がします。僕が『ドラクエ』に求めているものって美麗なイラストというよりも、作品の世界観や物語を通じての学び、「明日からもがんばろう」って思わせてくれる王道感なんです。
 だから、ずっと王様でいて欲しいなって思いますね。これからもずっと王座に座していただきたい、王道でいてほしいタイトルなんです。
──『ドラクエ』の立ち位置ってゲームの中でも「勇者」ですよね。

岡本氏:
 まさにそうだと思います。トリッキーなゲームに魅力を感じるのも、王道なゲームがあるからだと思うんです。野球でたとえるなら、ストレートがあるから、カーブやフォークが強くなるのと同じだなと。
 『ドラクエ』には鋭いストレートをずっと投げ続けてほしい。みんなを率先して引っ張っていく王として、君臨し続けてくれたら嬉しいなと思います

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