電ファミ編集部
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ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、D&D)の新作アドベンチャー集『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』を12月3日(日)に発売する。これに先駆け、約20年間にわたって『D&D』の翻訳に携わってきた柳田真坂樹氏への巻末特別インタビューが公開された。
『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』は『レイディアント・シタデル:光の城塞より』に続く3つ目のアドベンチャー集となり、伝説の“竜槍戦争”を舞台にした戦争と抵抗の物語を描く。新種族の「ケンダー」や、新背景「ソラムニアの騎士」、「上位魔法の塔の魔道士」のキャラクターを作り、ドラゴン軍との戦いの最前線へ赴くことができるという。
今回、インタビューの対象となった柳田真坂樹氏は小学生のころに遊んでいた「ゲームブック」のルーツとして『D&D』を知り、大学時代には海外版を身内で遊ぶために個人的に翻訳を行っていたという。その後に東京大学大学院を卒業し、公務員を経て『D&D』翻訳チームへ参加したという経歴の持ち主である。
これまでに80タイトル分ほどの翻訳を手がけており、同氏が所属するチームは日本語訳の5分の4程度を請け負ってきたとのこと。ペースとしては11万ワード(220ページ程度)の製品を1冊1か月半ほどで翻訳するという。
『D&D』の翻訳をする上では、本作が会話を通じて遊ぶゲームであることから、紛らわしい同音異義語を用語にしないように気を使っているという。また対象年齢が13歳以上という点も踏まえ、なるべく平易な文章にするよう意識を配っているそうだ。
「翻訳の楽しさや、やり甲斐は?」という問いに対しては、「『狂える魔道士の迷宮』だとか『Blade of Disaster(破滅の剣)』なんて言葉を書いてお金もらえることは他になかなかないので、これが楽しいです!」とコメント。一方で、翻訳者よりもくわしいファンに満足してもらえるかどうかについては「内心ヒヤヒヤしています」と語った。
『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』は12月3日(日)の発売を予定しており、10月5日(木)には予約を開始する見通し。インタビューの全文や商品の詳細については、以下のリリースを参照されたい。
プレスリリースの全文は以下のとおり。
INDEX
「ダンジョンズ&ドラゴンズ」ウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本語版伝説の“竜槍戦争”が舞台のアドベンチャーが収められた新作『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』発売日:12月3日(日)/予約開始日:10月5日(木)
~特別インタビュー:D&D翻訳歴20年の柳田氏が語る翻訳の舞台裏とは~
最初のロールプレイング・ゲーム(RPG)であり、5千万人を超える世界中のゲームファンから愛されるファンタジー・テーブルトップRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ(以下、D&D)」を製造・販売する世界的ゲームクリエイティブカンパニー「ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(本社:ワシントン州レントン, アメリカ合衆国、 CEO:シンシア・ウィリアムズ、以下WotC)」は、D&DのWotC日本語版の新作アドベンチャー集『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』を2023年12月3日(日)に発売します。また店頭やECサイトの予約は10月5日(木)より開始します。
また巻末特別インタビューとして、D&Dの翻訳に約20年携わり、本作も手掛けている柳田真坂樹氏に翻訳の舞台裏や想いについて伺いましたのでご紹介します。
■「ドラゴン軍へと立ち向かう、戦の道へ踏み出そう」伝説の“竜槍戦争”が舞台の戦争と抵抗の物語
『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』は、『レイディアント・シタデル:光の城塞より』に続く3つ目のアドベンチャー集で、伝説の“竜槍戦争”を舞台にした戦争と抵抗の物語です。
新種族ケンダーや、新背景“ソラムニアの騎士”、“上位魔法の塔の魔道士”など、ドラゴンランスの背景世界であるクリン出身のキャラクターを作り、恐ろしいドラゴン軍との戦いの最前線へと赴くことができます。
<ストーリー>
“ドラゴンの女王”タキシスがクリンの世界へと帰還した。大陸各地で、狂信的なドラコニアンの軍隊が、苛烈な征服戦争を繰り広げている。備えなきソラムニアへと進撃するドラゴン軍、その道を阻むのは、カラマン市を守る者たちだけだ。だがドラゴン軍の狙いは、敵を叩き潰すことだけにあるのではない。ドラゴンの女王に仕える旧き邪悪なる者が、クリンを永遠に支配しうる、魔法の兵器を探しているのだ。
■『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』製品情報
【発売日】2023年12月3日(日)
【予約開始日】2023年10月5日(木)
【製品タイプ】アドベンチャー集
【製品URL】 https://dnd-jp.com/products/dragonlance/
【取扱い店舗(販売店舗)URL】https://dnd-jp.com/shop/<主な内容>
•戦争というテーマを導入。
•『ドラゴンランス』の背景世界を“竜槍戦争”に焦点を当て、世界全体を巻き込むこの紛争で冒険を行なうためにプレイヤーやDMに必要なものを紹介
•ドラゴンランス背景世界の中核となる要素に脚光を当てたキャラクター作成ルールを提供。新種族ケンダーや、新背景“ソラムニアの騎士”や“上位魔法の塔の魔道士”などが登場する。また、ソーサラーのサブクラス“月の魔術”は、クリンの神秘的な3つの月にキャラクターを結びつけて、その月の魔術を吹き込む。
•悪名高きデス・ナイト、ソス卿とその軍のドラコニアンが登場。<巻末特別インタビュー:D&D翻訳歴20年の柳田真坂樹氏が語る翻訳の舞台裏>
——柳田さんがD&Dを知ったきっかけやゲーム翻訳者になったきっかけは?
僕は1974年生まれで、小学校5、6年の頃にゲームブックにはまりました。その時にゲームブックのルーツに「D&D」というものがあると知ったことがきっかけで、日本で翻訳されていた「赤箱」と呼ばれるD&Dを購入しました。その後、大学生の頃、D&Dの3版が海外で出た際に英語版を購入し、身内で遊ぶために個人的に訳したのが最初の翻訳です。そして大学院を卒業し、3年働き退職したころに当時のD&D翻訳チームに入っていた先輩とのつながりで翻訳の仕事を始め、今もずっと続いています。
——翻訳はどのような体制で行っているのですか?
現在のチームは桂令夫、楯野恒雪、塚田与志也、僕のコアメンバーがほぼ固定で、作品により追加メンバーに参加してもらっています。翻訳チームでは桂令夫氏のキャリアが一番長く、僕が参加した時からのリーダーです。僕は翻訳会社のAlpha Games(http://games.alphacrc.com/)に所属しつつ、このチームで連絡をまとめたりもしています。
—— 1冊にどれくらい時間がかかるものですか?また手掛けた翻訳の冊数の量は?
だいたい11万ワード(220ページくらい)の製品を1冊1カ月半くらいで訳します。訳して出した後にレイアウトの確認やルールは本当にこれでいいのかといった確認があります。翻訳そのものよりもブラッシュアップに時間がかかったりします。
D&Dの3版から手掛けているので、現在80タイトル分くらいは手がけてきたと思います。日本訳の4/5くらいは僕たちがやっていると思うので、このチームが日本で一番D&Dを訳していますね。
——翻訳をする上で意識をしているポイントは?
D&Dは会話して遊ぶゲームなので、同音異義語を用語として使うと、紛らわしく、遊びにくくなるので、その辺はかなり気を付けます。
それと、テキストで書いているとつい、かっこいい漢字に難しい読みを付けてしまいたくなりますが、口頭で音にするとわからなくなったりするんですね。それから、対応年齢が13歳以上なので、なるべく平易な文章にしようとしています。
——ゲームの翻訳ならではの難しさとはどういうところですか?
ルールを運用する、つまり遊ぶ時に誤解が生じないように訳し、なおかつ極力原文に忠実に訳すところですね。わかりやすいようにと翻訳者の方で運用を判断し、そのように訳すと良くないことがあります。例えば、あるルールに後から修正が入ったときに、我々の判断した運用と違った場合、翻訳にかなり手を入れなくてはいけなくなる。技術書を訳すときと同じような厳密さが必要になるところがあります。
—— D&Dの翻訳ならではの難しさはありますか?
D&Dはファンタジーゲームなので、フレイバー・テキスト(※ゲームのルールに直接関係のない、背景設定や世界観を表現した文章)が重要になります。フレイバーには古文や、ポップカルチャーからの引用、英語圏の人ならニヤっとするような身内ネタやダジャレが入っていることがよくあります。これは、アメコミや古典劇といった文化的な背景の知識がないと見過ごすこともあります。正直、僕だけじゃ全然ダメで、翻訳チームの集合知で何とかするので、メンバーの知識の広さと深さが大事です。
そのほか、D&Dは来年で50周年になるのですが、登場するモンスターにも、最初は単なる邪悪な種族とされていたものが、情報や個性が蓄えられるにつれ、扱いがどんどん変わっています。そういった変遷のコンテクストが分かっていないと取りこぼす情報があるので、過去の版の知識も必要ですね。
——翻訳の楽しさや、やり甲斐は?
「狂える魔道士の迷宮」だとか「Blade of Disaster(破滅の剣)」なんて言葉を書いてお金もらえることは他になかなかないので、これが楽しいです! 翻訳は決して題材が好きじゃなければできない仕事ではないですが、好きであるかによって、出来上がるものに違いは出てきます。その上で、僕たち翻訳者よりも詳しいファンはいらっしゃるので、その方々が満足できる翻訳になっているのか、いつも内心ヒヤヒヤしています。ユーザーとして言うならば、誰よりも早く、D&Dの最前線を目撃できるというのはすごく面白いですね。
そして、僕はD&Dを巨大で歴史あるポップカルチャーだと思っているので、自分達が訳した製品を使って日本のプレイヤーの皆さんが遊んでいるのを見ると、その歴史の一部を担えていることを光栄に感じています。
——翻訳で苦労する点は?
書式や表記、訳語の方針などといった、翻訳の際の基準を作ることではないでしょうか。取りかかる前や作業中にその基準を定めるのに一番議論する気がします。
自分の担当箇所だと、クリーチャーの中で出てくる動物の書式です。僕の好みは、「wolf」ならカタカナで「ウルフ」でなく「オオカミ」にしたいのですが、登場するすべての動物にちょうどいい読みがあるわけではありません。例えば原始的な動物の「Giant Sloth」が「巨大ナマケモノ」となると、だいぶ日本語でのイメージに引っ張られて雰囲気が変わってしまう。なら、それぞれ表記を変えようとなると、ウルフと狼とオオカミに訳し分ける基準はなにか。その基準を個人のセンスに任せてしまうと、我々ではない他の人が作業する時に混乱するし、プロダクト全体の統一性が取れなくなるので、安直であっても分かりやすい基準でやった方がいいかもといったことを議論していましたね。
—— D&Dで印象に残っている翻訳は?
『ザナサーの百科全書』という製品に登場する、ザナサーのセリフのダジャレですね(笑)。分担して訳した後にザナサーのクォートを全部並べて、ザナサーは果たしてどういったキャラクターであるべきか、このシナリオ、この製品にどういったスタンスで出ているかという話をしました。面白くもないシャレや脱力系のギャグが多いキャラクターなので、このダジャレは決まりすぎているからやめましょうとか、もうちょっと下手にしましょうみたいなことを議論していたのが面白かったです。
——「これはすごい」と思った翻訳は?
D&D第4版時代の訳で、翻訳チームのリーダー・桂さんによる「Come and Get it」という技の訳です。ファイターが周りの敵を集めてその全員を攻撃するという技なのですが、これを「来たな馬鹿ども」と訳していました。あとは、一体選んだ敵に大ダメージを与える「Villain’s Menace」を「悪党死すべし」と訳したのもカッコ良かったです。
現在の5版ですと、やはり桂令夫氏の訳で、酔拳使いドランクン・マスターの技、「Drunkard’s Luck=酔っ払いの幸運」を「天地既愛酒(天地既に酒を愛す)」へ、「Intoxicated Frenzy=酔っ払って狂乱する」を「呑一升天下無敵(一升呑めば天下無敵)」へと訳しました。これは中国の漢詩[
※長金仙「呑酒之十徳」]を引用したもので、意味としてこういうことじゃないか、と訳したそうです。教養があるって強いと思いました。—— D&Dの魅力は?
作品としての魅力はもちろんですが、ファンとしての立場から言うと、D&Dという趣味を広げよう、共に遊ぶ仲間を増やそうとするユーザーが多いこと、D&Dというコミュニティーに貢献しようと考えるユーザーが多いことだと考えています。D&Dは、日本では正式な展開が何度か途絶していましたが、それでも変わらず遊び続けられたというのは、遊び続けていくコミュニティーや店舗があったからで、それが今でもずっと続いています。TRPGは製品を売るだけで成立するものではなく、体験して初めて成立します。店舗などでのイベントではダンジョン・マスター(DM)をする人が必要ですが、そこで手を挙げてくれるユーザーがいる、時には店舗のスタッフや経営者がDMをしてくれるというのは大変な強みだと思います。
—— 12月3日発売の新作『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』のアピールポイントは?
D&Dにはいろいろな背景世界があり、「ドラゴンランス」もその一つです。そしてこのドラゴンランス世界は、主要な小説が全部翻訳されている、日本で一番知られているダンジョンズ&ドラゴンズの背景世界なのです。つまり今作は「ドラゴンランス」の背景世界をちゃんと知った上で遊べるという点が大きいです。
今回の冒険は、小説第1話前後と同じ時間軸の別の地域を舞台としており、小説を読んだ人ならば、「レイストリンたちが冒険しているころ、アンサロン大陸の他の所ではこんなことが起きていたのだ」と分かるようになっています。物語も「悪いドラゴンの軍隊が攻めてくる! 戦え、冒険者達」という、まさにダンジョンとドラゴンの話で、かなりおすすめの冒険ですね。
また、今回の訳はドラゴンランスの最新刊『レイストリン戦記戦場の双子』(シリーズ3巻4巻)を訳した羽田紗久椰さんに参加してもらったので、訳語も完璧だと思います。
——翻訳という仕事の魅力とは?
先ほど申し上げたとおり、「こんなバカなことを文字として書いて飯を食えるって最高だな」と思っています。一方、どこかのタイミングでAI翻訳に抜かされるのではないかという恐怖もあります。でも、ゲームの翻訳はただ書いてあることを訳すだけでなく、デザイナーの意図を読む人に馴染みある文で提供する必要がある。それは翻訳者の経験、文化的背景なども全部が関わってきますし、何よりもそのタイトルやジャンルに対する知識と経験に裏打ちされた“熱意”が必要です。そしてゲームのプレイヤーは、熱意を敏感に感じ取ります。まだその点ではAIよりも人に分があると思うのです。
翻訳はクリエイティブライティングにちかいところもあり、翻訳者は原作を作っている方々と同じくらい作品に携わって、作品の善し悪しを決めてしまう立場だと私は思っています。
——最後にファンへのメッセージをお願い致します。
僕は35年ぐらいD&Dで遊んでいますが、D&Dはまさに今、最高に面白い展開になっています。各種製品の展開だけでなく、映画(『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』)やPCゲーム(『Baldur’s Gate 3』)も展開されて高評価を受けています。海外ではセッションの配信も大人気で、人気配信者によるセッションのオリジナルアニメが作成・公開されるまでいっています(『ヴォクス・マキナの伝説』)。ユーザーがD&Dの基本システムを使ってオリジナルのコンテンツを作ることも盛んです。
ですが、こういった状況は全て英語なのです。日本語化しているのは本当にその一部、本という製品の一部なのです。皆さんには、日本語だけじゃなく英語版も見て、展開し続けているD&Dコンテンツにフルアクセスしていただき、日本人デザイナーやユーザーがD&Dの配信をしたり、ファンフィクションを作ったりなど広がっていけば面白いと思っています。
ですから、まずは日本語になったD&Dで遊んでみて、その原典にどんどんアクセスしに行ってほしいなと思いますし、そのためのお手伝いができるのであれば、僕は最高に嬉しいです。
<プロフィール>
【柳田真坂樹(やなぎだ・まさき)】
翻訳家・ライター。D&D翻訳チームメンバー。東京大学大学院卒業後、公務員を経て、趣味で関わっていたD&D翻訳チームに参加。「D&D モンスター・マニュアル」第3弾を皮切りに、数多くのD&Dルールブックや関連書籍等を手がけ、今日に至る。
電ファミ編集部
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