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梅津さんは舞台『刀剣乱舞』山姥切長義役、ミラクル☆ステ―ジ『サンリオ男子』梅崎慎矢役、ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計役などで知られる人気俳優。人気の2.5次元作品に多数出演する一方で、鴻上尚史さん主宰の「虚構の劇団」に所属、日本テレビ系にて放送中のバラエティ番組『ろくにんよれば町内会』にもレギュラー出演するなど、“2.5次元俳優”の枠におさまらない活躍と演技力が注目を集めています。
この度、梅津さんの30歳の誕生日でもある12月8日に発売された『残機1』には、『CONTINUE』Vol.80(11月発売)掲載分までの全コラムと共に、今回の書籍のために書き下ろされた短編小説(4篇)が収められています。
発売を記念して本文サンプルの一部も公開されています。独特な感性で綴られた、どこかクセになる“梅津ワールド”、ぜひ美麗な撮り下ろし写真とともに堪能してみてはいかがでしょうか。
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舞台『刀剣乱舞』(山姥切長義役)など人気作品に多数出演する傍ら、鴻上尚史主宰の「虚構の劇団」に所属し役者としての高い実力と類稀な美貌で注目を集めている俳優・梅津瑞樹。いわゆる“2.5次元俳優”として日本テレビ系『ろくにんよれば町内会』へのレギュラー出演や『バケット』で食レポに挑戦するなど、TVバラエティでも活躍の場を広げている彼による初のコラム連載と書きおろし原稿を収めた随筆集・『残機1』が2022年12月8日、太田出版より発売されます。
華やかな業界で人気を集める梅津瑞樹ですが、そんな彼自身は“スターバックスに入れず”“神保町の古書店に足しげく通う”生粋の文学青年。バラエティ出演の際にも、“キラキラのイケメン枠”ではなく、独特のシュールな感性を見せる“飛び道具”的な活躍を見せ従来の俳優ファンに加えて新たなファン層を拡大しています。
実はもともと芸術系の大学にて文芸を専攻し、文筆活動はもちろん立体物の制作・イラストの執筆・動画編集など才能の翼を多数持つアーティストとしての顔も持つ梅津瑞樹。なかでもひと際その個性が光る彼の文才を世に伝えるべく、初の連載コラム「残機1」を太田出版のカルチャー誌『GIRLS CONTINUE』『CONTINUE』に同時掲載中。2020年2月発売号より約3年弱継続中で、現在11月発売の『CONTINUE』には第22回目の原稿が掲載されています。
「残機1」とは、ゲームなどでの“ライフ(命)が残り1”の状態を指す言葉。このライフが消えてもあともう1戦できる、ギリギリなようでまだ余裕のある状況でどこか俯瞰し斜に構えて世の中を、自身を顧みた中で彼が今、思うことを梅津瑞樹ならではの感性で綴る本連載。『CONTINUE』Vol.80(11月発売)掲載分までの全コラムと共に、今回の書籍のために書き下ろされた短編小説(4篇)を収めたのが、今回の書籍『残機1』。彼の30歳の誕生日となる2022年12月8日に上梓致します。
“常に時計の針の音に背中をどつかれている”と語り、誰かとわかり合いたいけれど完璧にはわかり合えないのだと諦観もする梅津瑞樹が戦い続け、時に愛するようにも見える“孤独”や“自意識”とは――? 「“ない状態”がある」“穴”を愛し、そこに潜んで生きてきたからこそ見えてくるものをシニカルかつユーモアあふれる筆致で描き出す“気鋭の文筆家”梅津瑞樹、初となる珠玉の随筆集『残機1』を是非ともご一読いただき、本の紹介等ご検討をいただければ幸いです。
INDEX
【通常版】
発売日:2022年12月8日(火)
定価:本体1800円(+税)
ISBN978-4-7783-1835-2
お問い合わせ
株式会社太田出版
〒160-8571 東京都新宿区愛住町22 第三山田ビル4F
TEL:03-3359-6262 FAX:03-3359-0040
散歩でもしないか、と彼を誘った。
彼奴とはかれこれ10年以上の付き合いがあり、私の住む家から歩いてすぐのところに居を構えていた。時刻は既に0時を回っていたが、今更そんなことを気にする間柄でもない。
知っての通り、夜な夜な辺りを徘徊するのは私の悪癖であり、都の怪異としての矜持もまた夜の街へと私を駆り立てているに相違ない訳であるが、孤独を愛し、それを誇りに思う私も時に人恋しくなることがある。そうした折、気まぐれに「今からこの夜を僕たちだけのものにしてやろうぜ」と誘うと、大概二つ返事でのそのそと出てくる気の良い奴であった。そんな鼻の曲がりそうな台詞を本当に言ったかどうかは定かではない。
果たして、数刻後彼はやってきた。
歩きながら私たちは、ここしばらくのこと、共通の友人のこと、変わりゆく季節と街並みのことを何とはなしに話した。
次第に話は仕事の話へと移っていった。
彼は言った。
「でもお前は本当に恵まれているよな」
私は腹の内側で、毛羽立った表皮の醜悪な怪物の様なものがむくりと起き上がる気配を感じた。
その鋭く伸びた爪の先が喉元を迫り上がってくるのを堪えながら、私は何故と聞き返した。
「俺はどんなに頑張ってもどうにもならなくて芝居を辞めた奴を沢山見てきたから」
腹の中で奴が吠えた。
私は暴れ駆けずり回る代わりに、今自分がどのように生きているか、そしてこれまでどの様にして生きてきたかを一言一言、熟考しながら彼に伝わる様に話した。10年来の仲である。それを知らない彼ではなかった。それもまた無性に口惜しかった。
彼はこうも言った。それは旅路を終えて何がしかを掴み取った者だけが口にする強者の譫言だと。
此奴には分からないのだ。
先刻彼が引き合いに出した彼の周りの者達とは、正しくかつての私であり、そして暗闇の中で一条の白線を引き続ける様なこの行脚には恐らく果てなどなく、今も尚旅路が続いているということが、きっと此奴には分からないのだ。
途方もない憂愁を生涯の伴侶として選ぶ覚悟もない者に、私の一片たりとも掴ませてなるものか。
捨て鉢になって言った。
「四の五の言わずにやりたいことがあるならば何事をおいてもやれば良いんだ。結果なぞ知るか。やれないことなんて無いのだ」
己の真に願うことを見つけ、果たそうとする、またそのような目標までの道中はややもすると寄る辺なく、その様な旅路をいくには勇気がいる。それこそ人生などという正体不明で、しかし確かに、とてつもない強度を持ってそこにあるアレを捕らえ(あるいは捕らえたと思い込んでいるだけかもしれない)炉に焚べるだけの勇気が。その行いだけが道標となるのだ。そして決して炉の火を絶やしてはならない。絶やせば忽ち道標は失せ、立ちどころに足元は覚束なくなって暗中転がって無様を晒すこととなるであろう。
私には既に手を休め立ち止まることはできない。反対に、その勇気がないのだ。
彼は押し黙った。かつて彼もまた、彼の周囲の者と同じであった。彼もまた私だったのだ。
それきり足元を見て歩いた。路傍を鼠が走るのを見つけた。
<了>
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