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「婚約破棄系」(こんやくはきけい)とは、「小説家になろう」などの小説投稿サイトで投稿されているいわゆる「なろう系」のジャンルの一種である。主人公が「婚約破棄される側」と「婚約破棄をした側」のどちらのパターンも内包しており、「悪役令嬢」や一般的なヒロインが主人公であるなど多種多様な作品が誕生している。
「婚約破棄」とは、読んで字のごとく「婚約を破棄すること」である。
日本においては「結納」という婚約の儀式があるが、それ以前においても両家や友人、そして交際している相手が「結婚する予定である」ことを周知している状況を一般的には「婚約」と呼んでいる。その状態をまっさらな白紙に戻すことこそが「婚約破棄」であるため、よほどの特別な事情がない限り、歓迎されるものではない。
作品ジャンルとしては「悪役令嬢系」がジャンルとして流行しはじめた頃に、その中のひとつとして「婚約破棄」を扱うものが存在していた。この場合、主人公は「婚約破棄される側」であることが多い。テンプレートとしては「婚約者に悪事がばれて婚約破棄される未来を回避するために奮闘」する「異世界転生」の要素を含むものや「婚約破棄」されたあとの世界を描くものがあげられる。
やがて「悪役令嬢系」から独立した「婚約破棄系」というジャンルになると、前述したパターンはもちろん「誠実に生きていたヒロインが急に結婚破棄されてしまう」という「婚約破棄される側」ではあるものの、明らかに婚約者側に非があるテンプレートも誕生した。
なおこの場合「ヒロインに酷い扱いをした元婚約者には何かしらの不幸が起き破滅、ヒロインは別の道を見つけ、さらに元婚約者よりも素敵な男性を見つけて幸せになる」というような結末を迎えるため、同じく「なろう系」の一種である「ざまあ系」の発端になったとも言われている。
「婚約破棄をした側」のパターンは、「虎視眈々と自分がいかに潔白であるか」を証明(ただし全てが真実であるとは限らない)し、自身が愛する人と結ばれるために徹底的に婚約者を排除するというのがテンプレートである。
「婚約破棄系」の作品をいくつか例にあげる。
▼『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』(※1)
公国令嬢のリーシェは、既に人生を6回ループしている。15歳の時に王太子に婚約破棄を言い渡されたあと、「商人」「侍女」などループする度にさまざまな職に就いているが、必ず20歳で死んでしまい、婚約破棄された時に戻ってくる。7度目の今度こそは長生きしようと目論むリーシェだったが、今世では6度目のループで「騎士」になったリーシェが命を落とす原因となった張本人、アルノルトに嫁ぐことになってしまうのだった。
▼『婚約破棄が目標です!』(※2)
「深窓の図太い令嬢」として目覚めたセレンスティアは、自身がこの世界に転生した存在であることに気づく。許嫁の浮気現場を押さえ、晴れて婚約破棄して自由の身……になったのもつかの間、社交界一の美形のアルベルトに期間限定の偽りの婚約を持ちかけられてしまう。
▼『悪役令嬢なので、ラスボスを飼ってみました』(※3)
きらびやかな夜会の最中に婚約破棄を言い渡されたアイリーン・ローレン・ドートリシュは、その瞬間に前世の記憶を思い出し、ここが「聖と魔と乙女のレガリア」という乙女ゲームの世界であることを思い出す。さらに「アイリーン」の末路が悲惨なものであることも思い出してしまう。しかし、破滅の発端である魔王のクロードを攻略してしまえば結末が変わるかもしれないと思い立ったアイリーンは一念発起。クロードに結婚を宣言するのだった。
※1
『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』著:雨川透子
オーバーラップで書籍化し、2020年10月にオーバーラップノベルスfより刊行。
2024年にテレビアニメが放送予定。
※2
『婚約破棄が目標です!』著:夏目みや
Jパブリッシングで書籍化し、2016年11月にフェアリーキスピュアより刊行した。
※3
『悪役令嬢なので、ラスボスを飼ってみました』著:永瀬さらさ
KADOKAWAで書籍化し、2017年9月に角川ビーンズ文庫より刊行。
2022年10月から12月までテレビアニメが放送された。
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