アニメ『風都探偵』は仮面ライダーファンを熱くする…！古参が歓喜したポイントとは？

「平成仮面ライダー」シリーズの中でも屈指の名作として知られる『仮面ライダーW』。放送終了からすでに10年以上の時が経過していますが、このほど、その正統派続編であるアニメ『風都探偵』が2022年8月よりスタート。
風の街・風都を舞台に、ガイアメモリ関連の依頼を得意とする「鳴海探偵事務所」の左翔太郎と相棒であるフィリップが、難事件を解決へと導いていく様を描き出します。

実写ドラマとして製作された『仮面ライダーW』の物語が、10年以上の時を経て、今度はTVアニメへと生まれ変わり紡がれていく――。本稿ではアニメ『風都探偵』の魅力を仮面ライダーファンの筆者がお伝えします。

「平成仮面ライダー」シリーズ10周年である2009年より放送を開始した『仮面ライダーW』は、その斬新なテーマが目を引く作品でした。二人で一人の「仮面ライダー」という前代未聞の仮面ライダーの登場に人々は驚きました。

そのストーリーの舞台となるのは、風の街・風都。気持ちの良い風の吹くこの街で、失踪したボスの跡を継ぎ、「鳴海探偵事務所」を営んでいる左翔太郎（桐山漣）は、相棒で謎に包まれた青年・フィリップ（菅田将暉）と共に、街で蔓延る「ガイアメモリ」による怪事件を「仮面ライダーW」へと変身し、解決へと導いていきます。

主人公の仮面ライダーは一人なのですが、主体となる左翔太郎とフィリップの意識がシンクロし、2人で1人の仮面ライダーとなるのです。

2本のガイアメモリをベルトに装填し、様々なタイプに変身できるというのも斬新で、左と右で異なるメモリを装填できるため、フォームチェンジが無数に存在。この革新的なフォームチェンジはのちの「仮面ライダー」シリーズに大きな影響を与え、可能性を広げたと言えるでしょう。

主人公はハードボイルドに憧れる探偵ということもあり、劇中の雰囲気はハードボイルドな空気に包まれています。この少々時代錯誤な雰囲気がまた本作を面白くしている要因で、大人が観ても楽しめる仕様になっていました。

これらの設定が推理ものとしての魅力も引き出しており、非常に面白い！
「平成仮面ライダー」という枠組みではあるものの、「昭和仮面ライダー」へのオマージュも組み込まれた作品であり、敵は街を牛耳る組織・ミュージアムであるという部分や街を守るヒーローは「仮面ライダー」であるといった描写が成されており、日本中の「仮面ライダー」ファンの胸を熱くしたのもまた事実です。

しかし翔太郎一人では太刀打ちできないところもあり、ついには敵の攻撃を生身の身体で受けそうになってしまうのです。その時、フィリップが奇跡の復活を遂げ、再び、仮面ライダーWへと変身。新たな戦いが幕を開けた…というところでTV本編は幕を閉じていました。

その後も映画やVシネマといった作品で仮面ライダーWの後日談は描かれてきましたが、完全新作の単体作品として新たなストーリーが描写されるのは、この『風都探偵』が初ということになります。

『風都探偵』は、2017年より「ビッグコミックスピリッツ」（小学館）にて連載中の漫画を原作としています。
もともと「仮面ライダー」は石ノ森章太郎原作の漫画から始まった作品。そのため「仮面ライダー」と漫画の相性というのは、言うまでもなく抜群なのです。

この『風都探偵』も然り。本作の脚本を担当しているのは、オリジナルの『仮面ライダーW』でメインライターを務めた三条陸氏。彼が再び『仮面ライダーW』の世界観を広げて描き出すストーリーは、もともとのファンを大いに喜ばせるものになっています。

それはアニメになっても変わらない本作最大の魅力でもあります。
アニメ『風都探偵』第1話の冒頭では、本作の主人公である左翔太郎とフィリップが出会った“最初の事件”の様子を駆け足ながら回想で描き出し、視聴者を風の街・風都へと引き戻していきます。

そこから、街の名所である「風都タワー」や「かもめ ビリヤード」の看板が踊る「鳴海探偵事務所」といったおなじみの風景が広がり、さらには情報屋のウォッチャマン、風都の刑事である刃野幹夫、『仮面ライダーW』最終回で姉の捜索を依頼してきた青山昌などなど、個性豊かな風都の住人たちも脇で物語を大いに盛り上げてくれます。

それだけではなく、今回のアニメ版でもっとも驚かされたのは、第2話以降の冒頭で事件の概要をキャラクター相関図を通して振り返る点です。
これは『仮面ライダーW』でも印象的だった象徴的なカットで、立木文彦さんによるナレーションも相まって、当時の空気感へと連れ戻してくれる役割を果たしてくれます。

ここまでは「古参ファン歓喜」の要素を紹介してきましたが、アニメ『風都探偵』は『仮面ライダーW』をしっかりと観たことがないという新規のファンでも比較的入り込みやすい作品になっている印象です。

本作は未だ流通を続けるガイアメモリによって人々が怪人・ドーパントになってしまい、その悪行を止めるために奔走する探偵が主人公の作品。作品全体には「昭和」の匂いすら漂わせた渋いハードボイルドな空気が流れているものの、決して仮面ライダーが主役となる作品ではないわけです。

現に仮面ライダーが本格的に姿を現すのは第3話から。事件の概要や人間関係を洗い出す作業を中心とした大人の雰囲気漂う「探偵もの」なわけです。

どうしても「仮面ライダー」とタイトルの冠された作品では仮面ライダーの活躍をメインにしなくてはなりません。しかしながら、本作のタイトルはあくまでも『風都探偵』。探偵としての翔太郎とフィリップを軸に物語を展開させることが出来るのです。そういった意味でも、ヒーローものが苦手だという人でも大いに楽しること請け合いです。

撲滅したはずのガイアメモリ犯罪が再び横行し、その背後で暗躍する「裏風都」の存在、翔太郎とフィリップの前に現れた魔性の魅力を携えた記憶喪失の女・ときめの謎……。

様々なミステリーが複雑に絡み合い、重厚な人間ドラマを生み出す『風都探偵』。左翔太郎とフィリップ…二人で一人の仮面ライダーの物語が再び動き出します！

（執筆：zash）

『風都探偵』＜全12話＞

【放送情報】
・TOKYO MX：2022年8月8日（月）より、毎週月曜22:00～

【配信情報】
U-NEXT
・配信開始日：2022年8月1日（月）0:00　※毎週月曜日0時　最新話更新
・配信形態：見放題

＜Story＞
風の街「風都」に現れた魔性の美女・ときめ。時同じくして突如出現したのは、風の止まった見知らぬ「風都」であった。左翔太郎とフィリップ＝仮面ライダーＷの新たな事件が幕を開ける！！

監督：椛島洋介
副監督：種村綾隆
シリーズ構成：樋口達人
脚本監修：三条 陸
キャラクターデザイン・総作画監督：蛯名秀和
総作画監督：小松原聖
メインアニメーター：式地幸喜、冨永一仁、横屋健太

エグゼクティブプロデューサー：塚田英明
スーパーバイザー：小野寺章
アニメーション制作：スタジオKAI
製作：「風都探偵」製作委員会
詳細：https://www.kamen-rider-official.com/fuuto

原作：石ノ森章太郎
『仮面ライダーＷ』石森プロ・東映
『風都探偵』
脚本：三条 陸
作画：佐藤まさき
監修：塚田英明
クリーチャーデザイン：寺田克也
石森プロ・東映（小学館発行「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中）

©️2022「風都探偵」製作委員会