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ジブリが惚れた海外アニメ映画4選。宮崎駿や高畑勲が影響を受けた名作たち

未だに国内外で圧倒的なブランド力を誇る「スタジオジブリ」は、2002年にフランスアニメ映画『キリクと魔女』を配給したり、宮崎監督、高畑監督に影響を与えた過去の名作アニメ映画を「三鷹の森ジブリ美術館」で特集上映したりと、良質な海外アニメ映画を広める活動も行っています。

今回は、ジブリがDVDを出したり、ジブリ公式サイトで特集が組まれたりしている作品のなかから、特におすすめな「ジブリ公認」の新旧海外アニメ映画をご紹介します。

『崖の上のポニョ』場面写真より

『崖の上のポニョ』場面写真より

© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT
via 『崖の上のポニョ』場面写真より

『王と鳥』

フランスのアニメ映画の巨匠ポール・グリモーの代表作。アンデルセンの童話「羊飼い娘と煙突掃除人」の映画化で、まず1953年に『やぶにらみの暴君』(66分)として公開され、高畑監督は本作を見てアニメーションの道を志し、宮崎監督も大いに影響を受けたと語っています。しかしグリモー監督は、同作が納得のいかない出来だったことから、資金を集め79年までに87分の改作として『王と鳥』を作りました。

横暴に振舞うとある国の国王シャルル5+3+8=16世は、自身の城の最上階にある絵の羊飼いの少女に恋をしていました。しかし少女は、隣の絵にいる煙突掃除屋の少年と恋仲であり、ある時不思議な鳥の力を借りて白から抜け出します。怒り狂う王は二人を追いかけてきて…。

DVD『王と鳥』より

DVD『王と鳥』より

via DVD『王と鳥』より
宮崎駿監督は同作の狂いのない緻密な城の背景描写や奥行きのある空間感覚、上下移動の多い場面転換と「カメラワーク」に大いに影響を受けたと語っており、特に『カリオストロの城』にその影響を多く感じ取れます。

また、途中から出てくる「ロボット」も実にジブリっぽく、日本人には親しみやすいデザインです。王=権威をデフォルメしてばかばかしく描く、という社会派アニメとしての側面も高畑監督に影響を与えています。

『動物農場』

「1984年」で有名なイギリスの作家ジョージ・オーウェルが、動物たちを題材に全体主義批判を盛り込んで描いた同名風刺小説のアニメ映画化作品『動物農場』です。

40~70年代にかけてイギリスで最も影響力の大きかったハラス&バチュラー・カートゥーン・フィルムズの代表作であり、宮崎監督も監督のジョン・ハラスのアニメ技術本込みで影響を受けたと語っています。

DVD『動物農場』

DVD『動物農場』

via DVD『動物農場』
農場主の横暴なふるまいに不満を募らせた動物たちが、豚のナポレオンとその仲間たち主導のもと、人間を追い出し、自分たちのための平等な楽園を作ろうとするのですが、だんだんと豚たちが食料や快適な寝床を独占し始め、当初掲げた理想も形骸化していくという物語。

原作や映画が公表された時は、共産主義、社会主義を掲げながらも独裁国家となっていたソビエト連邦を風刺したものとみられていましたが、それ以上にいつの時代も変わらない社会の「搾取の仕組み」を巧みに描き出している作品です。

搾取される側の動物たちに同情してしまう作品ですが、豚たちが特段悪というわけではありません。優位に立つと弱者に厳しくなる人間の性を風刺して描いていると考えてみると、ゾッとさせられる映画です。

『しわ』

スペインのパコ・ロカ氏による同名マンガを映画化した『しわ』。そのシンプルなタイトル通り、老人たちを主人公に「老い」をテーマにした物語の渋くて心に残るアニメです。自身も70代後半の老境で同作に出会った高畑監督は「アニメーション映画の持つ可能性がまたひとつ広がった」「映画「しわ」に心から敬意を表します」と絶賛コメントを残しています。

元銀行員で、養護施設に入ったエミリオは、さまざまな人生を送ってきた仲間と出会い、そこでも人生を楽しもうとします。しかし、ある時、自分がアルツハイマーだと知ってしまい…。

DVD『しわ』

DVD『しわ』

via DVD『しわ』
アニメだからこそできる、気持ちはまだ若いままのつもりの老人たちや、過去と現在が混同されている現実認識の描写など、「親や自分もいつかこうなるのか?」とハッとさせられる要素が多い作品です。

しかし、けっして老いを否定的に描いているわけではなく、どう受け入れていけばいいのか、また過去の思い出が自分を救ってくれるということも教えてくれます。年を取るたびに定期的に見返したくなる映画と言えるでしょう。

『ディリリとパリの時間旅行』

フランスのアニメーション作家ミッシェル・オスロ監督は、前述の『キリクと魔女』の日本公開時に高畑監督が翻訳・演出を手掛けて以降、彼と親交がありました。そしてジブリは『アズールと明日マール』『夜のとばりの物語』など、継続してオスロ監督作品を日本に広めています。そのなかでおすすめしたいのが、2019年の最新作『ディリリとパリの時間旅行』です。
20世紀初頭、「ベル・エポック」時代のフランスが舞台で、ニューカレドニアからパリにやってきた少女・ディリリが、市内で起きている少女誘拐事件を解決すべく奔走する物語。

シンプルでわかりやすい活劇エンタメ要素もありつつ、「ベル・エポック」時代の小ネタや主人公に協力する当時を彩った天才、キュリー夫人やパスツール、ピカソ、ボードレール、モネらが次々登場するのも面白い点です。

DVD『ディリリとパリの時間旅行』

DVD『ディリリとパリの時間旅行』

via DVD『ディリリとパリの時間旅行』
時の写真をトレースした忠実かつ幻想的な背景のなかで、切り絵風の2次元キャラたちが細かく動き、たまにカメラワークを感じさせる大胆な3D的な演出もあるなど、独特なアニメーションが全編を彩ります。

エンタメ、アートとしても楽しめるのですが、悪役が「男性支配団」という直接的に家父長制を重んじる旧体制的な白人男たちで、劇中で搾取されているのは女性や子供や有色人種といういまだ消えない社会問題も真っ向から描いており、考えさせられます。アニメだからできる、華々しくも恐ろしい過去のパリを忠実に、かつ独自視点もいれて再現した意欲作です。

世界各国の映画に通じているジブリ作品。これらの影響が作品に深みを与えてるのでしょう。
映画を知るとよりジブリ作品の本質を知ることができるのかもしれません。

(執筆:今泉)

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