声優デビュー25周年、2021年10月28日に発売した初エッセイ集「47歳、まだまだボウヤ」(KADOKAWA)も重版がかかるなど、大人気の声優・櫻井孝宏さん。
今回は櫻井さんの演じてきたキャラクターを振り返りつつ、声の魅力と本人が愛される理由に迫ります。
新境地を拓いた‟あの”キャラクター、そしてたくさんの人が共感した「アナログ声優」の考え方とは?
DVD『P.S.元気です。孝宏 FUWAKUWAKUさせてよ 復刻版』
via DVD『P.S.元気です。孝宏 FUWAKUWAKUさせてよ 復刻版』
世界的代表作『FF7R』や『呪術』『鬼滅』で世間に浸透
櫻井孝宏さんは1996年に声優デビュー。『ゲートキーパーズ』の浮矢瞬役で初主演に抜擢されてから、アニメにゲームにと数えきれないほどの作品に出演し、
海外でも名の知られている声優です。
有名どころでは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』の枢木スザクや『金色のガッシュベル!!』の主人公・高嶺清麿など未熟さや熱さがある若者も演じていますが、『モノノ怪』の“薬売り”や『東京喰種』のウタなど、静かで知的な役、謎めいた役のイメージも定着してきました。
その柔らかく芯のある声から、「誰にも真似できない」と言われる櫻井さんの声。中でも魅力を世界で発揮したのが、大ヒットゲーム『FINAL FANTASY VII』シリーズのクラウド・ストライフです。
Blu-ray『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE』
via Blu-ray『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE』
冷静沈着な元ソルジャーである一方、不器用で照れ屋な面を持つクラウド──既に有名なゲームのキャラクターに声をつけるということで、かなり慎重に役づくりをしたそうですが、今や「櫻井さん以外の声はイメージできない」と言われる世界的代表作となりました。
そんな経歴を持った櫻井さんの名をさらに知らしめたのが、続けて映画化された
『鬼滅の刃』の冨岡義勇と
『呪術廻戦』の夏油傑でしょう。
物語序盤で炭治郎を導く鬼殺隊“水柱”の義勇は、アニメ化で特に女性人気が爆発。まさに水のように透き通っていながら芯のある櫻井さんの声が、義勇の強さと‟不器用”“天然”な魅力にぴたりとハマり、義勇が一言しゃべるだけで「義勇さん」「櫻井さん」がトレンド入りする日も。
『劇場版 呪術廻戦 0』で敵として立ちはだかる夏油も、やさしい声と腹黒キャラのギャップが女性たちを虜に。五条悟を演じる
中村悠一さんとの組み合わせも、胸を熱くしたようです。
この二作品の大ヒットは、声優に詳しくなかった層にも櫻井さんの名を広めるきっかけとなりました。
Blu-ray『鬼滅の刃』2巻
via Blu-ray『鬼滅の刃』2巻
『平家物語』で新境地を開拓。渋みのある声優へ
上述したシリアスな作品以外にも、『しろくまカフェ』ではお茶目なシロクマくんを、『おそ松さん』ではクズなニート・おそ松を演じ、どんなキャラにも化ける演技力を持った櫻井さん。
そんな中さらに新境地を開いたのは、この冬に放送された『平家物語』の平重盛ではないでしょうか。
『平家物語』公式インタビュー動画で「本当に出られてよかった」と櫻井さん自身も語っている、『平家物語』の平重盛。
最初は、烏帽子をかぶりヒゲのある重盛のビジュアルと‟父親”という設定を知り、これまで若い役が多かった櫻井さんの起用に驚いたファンもいたようです。
【公式】TVアニメ「平家物語」悠木碧・櫻井孝宏・早見沙織インタビュー
癒しと儚さを持った櫻井さんの声が、平家と周囲の板挟みで
苦悩しながらも自身の役目をまっとうする、温厚で実直なアニメ版・平重盛をナチュラルに表現。最終回では声のみの登場にも関わらず、「最後の最後に櫻井さんが来てくれた」、「声だけでこんなに感慨深い最終回にできるのはすごい」と多くの人の胸に響いた様子です。
今後はより渋みのある役や、貫禄のある役での活躍も増えていくのかもしれません。
SNSをやらないアナログ声優の信念。“世界一のレシーバー”の異名も?
声優としての実力だけでなく、知的な雰囲気や、優しく謙虚な人柄でもファンが多い櫻井孝宏さんのあり方を「見習いたい」と思っている人も多く、もはや「敬われている」と言った方が正しいかもしれません。
DVD『P.S.元気です。孝宏 ~Take it オージー!!~』
via DVD『P.S.元気です。孝宏 ~Take it オージー!!~』
パーソナリティを務めるラジオ番組『P.S.元気です。孝宏』ではリスナーへの返しが優しく、話し方も「リラックスできる」と評判。
トーク番組やインタビューでは、自分の話は控えめに他キャストを立てる場面がよく見られる一方、『おそ松さん』のイベントではふざけてみたり、場に合わせた振る舞いができるスマートさが感じられます。
そんな穏やかで大人っぽさあふれる櫻井さんは、長年の声優仲間からも慕われているよう。
同い年でデビュー後すぐ打ち解けた鈴村健一さんや福山潤さん、中村悠一さんなど、特に『おそ松さん』メンバーと仲が良いことで有名です。その切り返しのうまさや、どんなトークでも受け止める巧みさに、一部では“世界一のレシーバー”と呼ばれているのだとか。
そのすべてを受けとめる“レシーバー”としての人柄は初エッセイ『47歳、まだまだボウヤ』(KADOKAWA)からも感じ取ることができます。
『47歳、まだまだボウヤ』(KADOKAWA)
via 『47歳、まだまだボウヤ』(KADOKAWA)
SNSをやらない“アナログ声優”としても有名な櫻井さんは、本書の中で「人と同じである必要はない」「人は人、自分は自分。良いも悪いもない」と話します。また、SNSをやらない理由のひとつとして「怖い言葉や強い言葉が溢れてすぎている」
「黙って考えてみるのも悪くないですよ」と語りかけています。
それぞれ意見が違うのは当たり前なのでSNSで無闇に争わないという姿勢にも、一人一人の長所を認めてくれる櫻井さんらしさが表れているのではないでしょうか。
「皆やってて当たり前」「大勢と繋がって当たり前」に染まらない、同時に人を否定しない生き方は、特にSNSがない時代から生きてきた大人たちに響いているようです。
声優仲間からも慕われ、声だけでなくその生き方でも人々を癒している櫻井孝宏さん。
今後の出演作では、唯一無二の声を生かしつつどのような新境地を拓くのでしょうか。
(執筆:ナツキ)
【47歳男性声優の”感動”について】声優・櫻井孝宏さんと呑みながらエッセイの話/「RPG外伝」第21回
櫻井孝宏さんプロフィール
櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)
所属事務所:インテンション
出身地:愛知県
誕生日:6月13日
血液型:A型
特技:音楽鑑賞
愛称:たかぴろ など
代表作:『鬼滅の刃』冨岡義勇、『呪術廻戦』夏油傑、『おそ松さん』松野おそ松、『しろくまカフェ』シロクマくん、『FINAL FANTASY VII REMAKE』クラウド・ストライフ など
■アーティスト・斉藤壮馬の確固たる音楽性。影響を与えた2つのバックボーン
https://numan.tokyo/anime/xTfAw■声優・柿原徹也、王子様のような煌めく存在感。国境も越える変幻自在な演技力
https://numan.tokyo/anime/GJiYm■福山潤、躍進しつづける声優。高音から低音までこなす一流アーティストとなるまで
https://numan.tokyo/anime/RoLqk