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『おそ松さん』とは、赤塚不二夫のギャグマンガ『おそ松くん』を原作に、おそ松(CV:櫻井孝宏さん)、カラ松(CV:中村悠一さん)、チョロ松(CV:神谷浩史さん)、一松(CV:福山潤さん)、十四松(CV:小野大輔さん)、トド松(CV:入野自由さん)の6つ子が、クズでニートな大人に成長した姿を描くTVアニメ作品です。
2015年に放送されると、2016年度の流行語大賞にノミネートされるほどの大ヒットを記録。
2017年10月から待望の第2期がスタートしています。
numanの人気シリーズ、深堀考察記事の第7回をお届けします。
※本記事には、TVアニメ『おそ松さん』2期最終回『地獄のおそ松さん』のネタバレが含まれます。
INDEX
気がつくと、白装束で三途の川の目の前に立っていた6つ子。死ぬ直前に自分たちが何をしていたのかをすっかり忘れ、三途の川を渡り、天国行きと地獄行きを決める裁判を受けます。なんとか天国へ行けるよう抵抗するもむなしく、地獄に落とされてしまう6人。大きな針や熱々の鉄板の上に立たされたり、恐ろしい妖怪に追いかけられたり、乳首をちぎられたり、中高生のときの卒業文集をみんなの前で朗読されたりといった責め苦が次々と彼らに襲いかかります。
あまりの苦しみの連続に、ついに精魂尽き果ててしまう6人。しかし、おそ松の「(俺たち)まだ全員童貞じゃなかったっけ!?」という言葉をきっかけに、早く生き返らなければと奮起します。
原作者である赤塚不二夫先生、チビ太やトト子などのレギュラーキャラクター、F6や実松、チャントシターなどの『おそ松さん』オリジナルキャラクターたちの助けを借りながら、6人はなんとか地獄から抜け出そうと格闘しますが……。
前回、24話『桜』について考察したこちらの記事では、社会人として“ちゃんとする”ことと、ギャグアニメとして“ちゃんとする”ことの間で揺れる主人公・おそ松の煩悶について分析しながら、製作陣が赤塚先生の作った『おそ松くん』への回帰を強く意識して2期に取り組んできたことを解説しました。
そんな2期の最終回では、ついに赤塚先生ご本人が登場。ここからも、2期は「原作者である赤塚不二夫先生へのリスペクト」によって作られているという製作陣の強いメッセージが読み取れます。
元の世界に戻ろうと駆け出した途端、地獄の鬼たちに襲われる6つ子を見ながら、笑い転げる赤塚先生。四男・一松の「“ちゃんと”しろ不二夫!」というツッコミからも、赤塚作品として“ちゃんとする”ことは、一般的な“ちゃんとする”とは違うということが伝わってきます。
まずは、トト子が葬儀場で読み上げた「3月の26日に、みんなの訃報に接しました。長きにわたるニート生活が、ほんのわずかではありますが、回復に向かっていたのに、本当に残念です」という弔辞。
これは、赤塚先生の葬儀にて、弟子であるタレント・タモリさんが読み上げた弔辞の、「8月の2日に、あなたの訃報に接しました。6年間の長きにわたる闘病生活の中で、ほんのわずかではありますが、回復に向かっていたのに、本当に残念です」という部分をなぞって作られています。
次に、原作『おそ松くん』から登場するチビ太をはじめとするレギュラーキャラクターたちの活躍。
『月刊ニュータイプ』4月号では、藤田陽一監督が「ダヨーンとデカパンの2人は、赤塚不二夫作品の象徴的なキャラクターだと思うんです」と語っていました。そんな二人が物語のクライマックスで6つ子に向かって「振り返らず走るんダス/だよ〜ん!」と叫んだ途端、1期1クール目のOPテーマであるA応Pの『はなまるぴっぴはよいこだけ』が流れ出すことにも、『おそ松くん』と『おそ松さん』の強いつながりを感じます。
最後に、これは深読みですが、地獄で白い死に装束を身につけながら奮闘する6つ子に、「どれが何松だかわからない」と感じた人も多いのではないでしょうか。『おそ松さん』でそれぞれに割り当てられた色を失い、見分けがつかなくなった6つ子たちは、モノクロ時代の『おそ松くん』たちをちょっぴり思い出させてくれるようです。
6つ子たちに与えられた、この「ダメなままでもいいじゃないか」という“救い”は、『おそ松さん』という作品全体を通して描かれてきたものでもあります。これについて、『月刊ニュータイプ』4月号の藤田監督のインタビューでは、こんなコメントがありました。
「自分のなかのテーマとして、「おそ松さん」ではダメ人間讃歌をやっておきたいと思っていたんですね。人間、何かひとつ取りえがあれば肯定できるではなく、なくてもいいじゃん。なくても何とかやっていけるし、やっていこうよと」
また、先ほど述べたタモリさんの赤塚先生への弔辞にも、こんな一節があります。
「あなたの考えは、すべての出来事、存在をあるがままに、前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は重苦しい陰の世界から解放され、軽やかになり、また時間は前後関係を断ち放たれて、そのときその場が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは見事に一言で言い表しています。すなわち『これでいいのだ』と」
どんなに欠点がある人間でも、あるがままを受け止め、肯定してくれる『おそ松さん』という作品。藤田監督の目指した“ダメ人間讃歌”とは、地獄に落ちた6つ子たちに糸を垂らしていた赤塚先生がもたらす“救い”だったとも言えるのでしょう。
「でもまあしょうがないんじゃない? だって今日で最終回だもん。今日でもう終わりだからね」
そのほか、地獄には、F6やチャントシター、実松さんやマイコマツなど、過去のエピソードに登場したキャラクターが続々登場。F6を見かけたカラ松が、「長い間見てないと思ったら、アイツら死んでたんだな」と呟いたように、『おそ松さん』の世界では“作品の中で描かれなくなる=死”という図式が成り立っています。
そんな図式の成り立つ世界で、6つ子たちは最後、見事生き返ることに成功しました。これは、彼らがこれからも描かれ続けるという意味だとポジティブにとらえることもできるのではないでしょうか。
『アニメージュ』5月号の対談では、藤田監督と脚本家・松原秀さんが2期の感想を聞かれてこんな会話をしていました。
松原「こういうのって普通、感慨とかあるんでしょうか?(笑)」
藤田「物語がキレイに終わったらあると思いますけど……オレも『貧乏神が!』とか『クラシカロイド』の第1期とか、キレイにお話を終わらせたなって時は、少し感慨みたいなものはありましたよ。でも、『おそ松』みたいに永遠に続いてもおかしくないタイプの作品だと、特に何もないなっていう感じで(笑)。」
松原「「終わった感」を抱きにくいタイトルってことですね。あ、あと個人的には、少し6つ子を休ませたほうがいいんじゃないかな、と思ってます。さすがにあいつらも、疲れたんじゃないですかね(笑)」
藤田監督に「永遠に続いてもおかしくない」と言わしめる『おそ松さん』という作品。6つ子と製作陣のみなさんが少し休んだあとに3期が来る可能性もあるのではないかと、思わず期待してしまう会話です。
3期の到来への期待もほんのりとありますが、まずは2期への感謝の気持ちを胸に、これからも6つ子たちのことを応援していきたいものです。それでは、「魔他井津華怒狐火出!!(またいつかどこかで!!)」
(執筆:飯塚ゆとり/編集:小日向ハル)
■DATA
おそ松さん | |
---|---|
キャスト | 櫻井孝宏、中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、入野自由、遠藤綾 他 |
配信情報 | テレビ東京系列 他 |
原作 | 『おそ松くん』著:赤塚不二夫 |
備考 | 監督/藤田 陽一、キャラクターデザイン/浅野直之 |
Copyright | ©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会 |
TVアニメ公式サイト | http://osomatsusan.com/ |
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