【考察1】“箱”の中で終わりなき物語を繰り返す――『おそ松さん』2期はOPが意味深!?

【考察1】“箱”の中で終わりなき物語を繰り返す――『おそ松さん』2期はOPが意味深!?

赤塚不二夫のギャグマンガ『おそ松くん』を原作に、おそ松・カラ松・チョロ松・一松・十四松・トド松の6つ子が成長した姿を描くアニメ『おそ松さん』。2015年10月に一期の放送がスタートし、2016年の流行語大賞にノミネートされるほどの社会的ヒット作品となりました。そんな『おそ松さん』待望の2期が、満を持して放送スタート。名キャスト&スタッフが再集結し、注目を集めています。               

エモーショナルでカッコいい! 『おそ松さん』2期OPを深読み

1期終了から1年半――待望の『おそ松さん』2期が、いよいよスタートしました。
第1話は、相変わらずの『おそ松さん』ワールド全開! はちゃめちゃなストーリーを追いかけるのに必死で、ラストにオープニングテーマが流れてようやく「2期が始まったんだ!」と実感した人も多いのではないでしょうか。
A応Pが歌う『君氏危うくも近うよれ』に合わせて展開されるオープニング映像は、歴代作以上にエモーショナルでカッコいい! 今回は、そんな『おそ松さん」2期のオープニングについて、1期をおさらいしつつ深読みしていきます!



カッコいいのは”無駄に”お金が投入されているから!?

オープニングテーマ『君氏危うくも近うよれ』を歌うのは、1期オープニングテーマ『はなまるぴっぴはよいこだけ』、『全力バタンキュー』でおなじみのアイドルグループ・A応P(えーおうぴー)。和のテイストが混ざった疾走感あふれるイントロに載せて6つ子が飛び出す冒頭のシーンに、ハートをガッチリつかまれた視聴者は少なくないはずです。
1期のオープニングを見返してみると、これまでの二つのオープニングももちろん魅力があるとはいえ、2期のオープニングはダントツでカッコいい! なぜでしょうか? それはやはり、”お金”がかかっているからでしょう。
『アニメージュ』2017年11月号に掲載されていた藤田陽一監督とキャラクターデザイン・浅野直之さんによる対談では、藤田監督が「幸いにも売れたんだから、その資金を無駄に投入していきたい」とコメントしていました。これは、3DCGや実写合成を取り入れた第1話に対する発言ですが、オープニングもその恩恵を受けていることは間違いありません。実際に、第1話で注目を集めた”ちゃんとした6つ子”の合体ロボットは、オープニングにも再登場しています。
特に目を引くのが、スタッフクレジット。1期では1クール、2クールともフラットな文字で記されるだけだった製作陣の名前が、趣向を凝らしたデザインで提示される様には、思わず「お金かけるの、そこかよ!」とツッコみたくなってしまいます。『おそ松さん』という名作ができたのはこの製作陣がいてこそ……と理解しているファンの心には確かに響くものですが、藤田監督の「無駄に投入していきたい」という発言を考えると、これも盛大なウケ狙いなのかも……? いずれにせよ、製作陣の「おもしろいことをやろう!」という心意気が感じられるニクい演出です。



『おそ松くん』と『1期』を経て”今”がある!

さて、2期のオープニングをじっくり見る前に、1期のオープニングを少し思い出してみましょう。

『はなまるぴっぴはよいこだけ』を主題歌にした1期1クール目のオープニングでは、 “個性”が芽生える前の6つ子を象徴するようなモチーフが多数使われていました。例えば、冒頭でいくつもの同じ顔がピョコピョコと動いたり、中盤でビリヤード玉や卵パックなどのモチーフが登場したり。いずれも、6人の区別がつかなかった原作『おそ松くん』を彷彿とさせるような演出です。

対して、『全力バタンキュー』を主題歌にした1期2クール目のオープニングは、初めから最後まで”個性”がある6つ子が描かれていました。表情はしっかりと6者6様に描き分けられ、一貫して赤・青・緑・紫・黄・ピンクというイメージカラーが当てられています。1クールを経て、すっかりおなじみになったおそ松・カラ松・チョロ松・一松・十四松・トド松の個性をアピールするような仕上がりです。

そして、2期のオープニングは、再び”原点”に戻っているような印象を受けます。
まずは、冒頭のティッシュ。白い無地の箱から、白いティッシュを何枚か引っぱり出した後、6つ子カラーをした6色の布が飛び出します。白いティッシュ=「誰が誰でも同じ」の『おそ松くん』から、それぞれ違う色=個性が芽生えた『おそ松さん』へというわかりやすい演出です。また、その他の登場人物やモチーフと一緒に6つ子が飛び出す様子は、1期1クール目のオープニング冒頭を思い起こさせます。
『おそ松さん』というタイトルが出た後、6つ子のパラシュートが開き、長男のおそ松から順番にポーズをキメながら空を降りていきます。1期の最終話で宇宙へと吹き飛ばされ、身体を張って「おわり」という文字を描いた6つ子。「6つ子、帰還。」というコピーとともに発表されたティザービジュアルでも、パラシュートで宇宙から地球へ帰還する6つ子が描かれていました。
♪やっぱり同なじ六つ子さ、と歌われた原作『おそ松くん』。宇宙で”おわり”を遂げた『おそ松さん』1期。それらのストーリーをしっかり引き継いでいることを伝えてくれるようなオープニングです。




『おそ松さん』は、”箱”と”宇宙”の物語

『おそ松さん』オープニングのキーワードは、ズバリ”箱”と”宇宙”。
今回の2期オープニングは、ティッシュの”箱”から飛び出した6つ子が、”宇宙”を舞台に暴れていると思ったら、実はすべてティッシュの”箱”の中の出来事だった……というストーリーを思わせるつくりになっています。

この”箱”の表現は、1期1クール目のオープニングでも使われています。サビの部分で、背景が箱の展開図のようにパタパタと開いたり閉じたりしながら、6つ子の部屋、居酒屋、銭湯、寝室へと変化していく演出です。

『おそ松さん』にとって、”箱”とはなんなのでしょうか? 6つ子といえば、ニート。ニートは、部屋という”箱”から出ることができない人たちです。
この”箱”の表現と対比するように描かれているのが”宇宙”です。宇宙のモチーフは1期1クール目のオープニングから見られましたが、特に顕著なのが2クール目。宇宙空間で6人が並んで走っていると思っていたら、実は6つ子が入っている銭湯の湯船という”箱”の中の出来事だった……という流れになっています。
このように、『おそ松さん』のオープニングには、閉じた空間である”箱”から、広大に広がる”宇宙”へのダイナミクスがあるのです。

ここで、本編を思い出してみましょう。1期は、『おそ松くん』が映るテレビという”箱”からはじまり、最終話では”宇宙”に飛ばされて終わるという、まさに”箱”から”宇宙”へのストーリーでした。
1期第1話と、2期第1話のラストでは、「こうして6つ子は、出口のない迷宮へと迷い込みました」という共通のナレーションが流れています。この「出口のない迷宮」こそ、6つ子が日々を送る”箱”の中。なんでもアリの『おそ松さん』ワールドでは、宇宙規模でいろいろなことが起こりますが、それらはすべて”箱”の中の物語であり、ニートの6つ子はそこから出ることができないのです。

今回のオープニングでは、ドット画でゲームのキャラクターのようになった6つ子が、トト子の炎に燃やされ、イヤミの歯にぶつかり、チビ太のおでん鍋に落下し、ハタ坊の三輪車に跳ねられ……と何度も”ゲームオーバー”していく様子が描かれています。しかし、1期で何度死を迎えても次の話ではケロリと生き返っていたように、6つ子はこの箱の中で終わりのない物語を繰り返しているのです。



6つ子がまさかの”努力”をしている!?

ところで、今回のオープニングの6つ子は、座禅を組んだり、道着姿で構えたり、ダンベルを上げ下げしたり、腹筋をしたり……と、まるで”努力”しているような様子が見られます。
今回の主題歌のタイトルは、『君氏危うくも近うよれ』。「賢い人は危ないところには近づかない」という意味のことわざ「君子危うきに近寄らず」を文字ったリズムのよいタイトルで、どこかコミカルな響きがあります。
『アニメージュ』2017年11月号のA応Pのインタビューでは、メンバーの一人・広瀬ゆうきさんが、作詞家のあさきさんに歌詞の意味を聞いたときのエピソードを話していました。

広瀬「大人になった6つ子が、子供だった頃の6つ子を呼んでいるらしいです。『危ないけど、成長してここにおいで』って。『オレたちダメ人間になってるけどね』って」

なんと、『君氏危うくも近うよれ』とは、大人になった『おそ松さん』から子ども時代の『おそ松くん』へのメッセージだったのです。このエピソードを心に留めながらもう一度オープニングを見てみると、大人になった6つ子たちが、『おそ松くん』時代の自分たちにカッコいいところを見せようと頑張っているようにも見えてきますね。



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