【考察5】『おそ松さん』2期17話『戒め』――『十四松と概念』に継ぐ、もうひとつのプラスとマイナスの物語

【考察5】『おそ松さん』2期17話『戒め』――『十四松と概念』に継ぐ、もうひとつのプラスとマイナスの物語

夕食の焼肉を無事に食べられるよう、四男・一松と五男・十四松が次々と降りかかる幸福と闘うTVアニメ『おそ松さん』2期17話『戒め』。 今回は、一松と十四松それぞれのキャラクターと関係性を分析しながら、『戒め』のストーリーをちょっと深読みしていきます!

おそ松さん 2期17話 戒め

今更ですが、『おそ松さん』とは、赤塚不二夫のギャグマンガ『おそ松くん』を原作に、おそ松(CV:櫻井孝宏さん)、カラ松(CV:中村悠一さん)、チョロ松(CV:神谷浩史さん)、一松(CV:福山潤さん)、十四松(CV:小野大輔さん)、トド松(CV:入野自由さん)の6つ子が、クズでニートな大人に成長した姿を描くTVアニメ作品です。

2015年に放送されると、2016年度の流行語大賞にノミネートされるほどの大ヒットを記録。
2017年10月から待望の第2期がスタートしています。
numanの人気シリーズ、深堀考察記事の第5回をお届けします。

※本記事には、TVアニメ『おそ松さん』2期17話『戒め』のネタバレが含まれます。

二つの17話『戒め』『十四松と概念』のあらすじ

まずは、『おそ松さん』2期17話『戒め』のあらすじを簡単におさらいしましょう。

両親から、今日の夕食は焼肉だと知らされ、6つ子たちは大喜び。ところが、一松だけはあまり大きなリアクションを見せません。

その後、一松と十四松が外へ出かけると、一松が買った自動販売機で当たりが出ますが、なぜか彼の顔は真っ青に。続いて、大好きなネコを発見したり、川原で500円玉を拾ったりしますが、一松は喜ぶどころか怯えたような様子を見せます。

不思議に思う十四松に、公園で”幸せなことが起こると、同じ分の悪いことも起こる”という”幸せ借金”、”不幸返済”の理論を説明する一松。彼は、焼肉の前によいことがたくさん起きてしまうと、それと同じだけの不幸に見舞われ、最悪焼肉が食べられなくなってしまうかもしれないと語ります。

一松「戒めていかないと。自ら悪いことを起こして、バランス取っていかないと」

焼肉を無事に食べられるよう、一松と十四松は幸せなことが起こるたびに自らを戒めることを誓います……。

ところで、1期の同じ17話『十四松まつり』でも、一松と十四松のコンビがフィーチャーされた『十四松と概念』という物語がありました。

二人が屋根の上でひなたぼっこをしていると、十四松が出し抜けに「ぼくってなんなんだろう?」、「十四松ってなんなんだろう?」と問いはじめます。

自分の姿がどこまで変われば”十四松”ではなくなるのかを探るため、十四松は”十四松”という文字に変身。そして、彼の周囲はすべて文字だけでできた概念的世界へと変貌してしまいます。

十四松「なんだ! 自我とか自己認識とか存在意義とか、案外ちっちゃくてどうでもいいことなんだ!」

そう気づいた十四松は、もっと身軽になるために、”十”の一文字だけに姿を変えます。そこへ、”一”の一文字になった一松がやってきて、こんな会話を交わすのです。

一松「お前、プラス(+)みたいになってるぞ」
十四松「うん。一松兄さんはマイナス(−)に見える」

二人がプラスとマイナスの姿のままぶつかり合うと、画面が真っ白になって物語が幕を閉じる――これが『十四松と概念』のストーリーです。

マイナスとプラスの象徴として生まれた一松&十四松

このように、漢字の一文字目の”一”、”十”という形から、物語の中で”マイナス”、”プラス”として表現されたことがある一松と十四松。

マイナスとプラスのように正反対なのは、文字だけではありません。ダウナーでマイナス思考な一松に対して、十四松は明るくプラス思考。今回の『戒め』の中でも、一松にラッキーなことが起こるたびに「ついてるね」、「ラッキーだね」と喜び、一松から「(幸せが続くことが)怖くないの?」と聞かれても、「全然」と答えていました。

マイナスとプラスを象徴する名前だけではなく、性格も正反対な一松と十四松。『spoon.2Di』vol.9に掲載された脚本家・松原秀さんのインタビューでは、一松と十四松のキャラクター作りの過程について、こんなエピソードが語られています。

「一松は“ダメ6つ子の中に、1人くらいは暗い奴がいるんじゃないか”ということで出て来たキャラクターなんです。
(中略)十四松なんですけど、最初はいなかったキャラクターで。僕が藤田さんに“1人、根明のキャラクターを入れたい”と相談してできました。十四松も一松と同じ生理で。」


つまり、一松と十四松は、根暗なキャラクターと根明なキャラクターという、正反対な特徴を持つ登場人物として相互作用的に生まれた二人だったのです。

原作者の赤塚不二夫先生は、”お粗末”という言葉を”おそ松”という名前に変えたのをはじめ、語尾に”マツ”が付く言葉をもとに6つ子の名前をつけています。一松は市松模様の市松、十四松は鳥のジュウシマツにそれぞれ同じ音の漢数字を当てはめた名前ですが、『おそ松さん』製作陣によってその名前がマイナスとプラスとして解釈されたのは、なかなか興味深い偶然です。

『戒め』はマイナス(不幸)とプラス(幸福)の物語

これらを踏まえてもう一度今回の話を見返すと、2期17話『戒め』は不幸(マイナス)と幸福(プラス)の物語だと解釈することができます。

一松の理論に従い、魚がたくさん釣れたら(+)釣堀に飛び込み(−)、駄菓子屋で当たりが出たら(+)泥だんごを顔にぶつけ(−)、ラーメン屋で一万人目の客として歓迎されたら(+)殴り合い(−)……と、幸運が起こるたびに自らを戒めていく一松と十四松。

そして、焼肉を必ず食べるという幸福のために、二人はリア充の巣窟である渋谷・原宿を訪れることで、戒めを貯蓄しようとするのです。

あまりのダメージに路地裏で嘔吐する二人のもとに、ゲリラ豪雨が襲いかかります。ゲリラ豪雨などという不幸に見舞われるくらいなら、夜の焼肉は絶対に食べられるはず! そう考えた二人は、

一松「これでもう戒める必要もない」
十四松「戒めるまでもない!」

と、雨の中、肩を組んで大はしゃぎします。

ところが、そんな二人の視線の先に、雨に濡れ下着が透けた女子高生の姿が……。思いもかけぬラッキースケベ的ハプニングに、二人は慌ててビルの階段を駆け上がり、屋上からダイブします。その途端、雷が二人に直撃。夕食の買い物をしていた他の4人のもとに、黒こげになった一松と十四松が落下し、『戒め』の物語は終わりを告げました。

ここからは深読みですが、そもそも雷とは、プラスの電気とマイナスの電気の放電によって引き起こされるものです。一般的に、雷雲の下部にマイナスの電気が溜まっていくと、その下の地面にプラスの電気が集まります。このマイナスとプラスの引き合う力が大きくなると、雲と地面の間に電気の道のりができ、それが雷となるのです(冬の雷はこれとは逆に、雲側がプラス、地面側がマイナスになります)。

1期17話『十四松と概念』のラストのように、マイナスとプラスがぶつかり合うことで、”ゼロ=何もない結末”を迎えた二人。 これはまったくの偶然でしょうが、二人が雷に打たれたシーンでは、稲光が”プラス”のように十字にクロスした形から、”マイナス”とも取れるタテ一本の形を描いているのも、深読みしたくなってしまうポイントです。

『おそ松さん』って、バランスなの。

「人生ってバランスなの」という一松の哲学は、ぶっとんだギャグや背筋の冷えるようなホラー、誰かに怒られそうなブラックジョークや心温まる感動ストーリーなど、テイストが両極端に振れながらも見事にバランスを保つ『おそ松さん』という作品そのものにも通じるように感じられます。

正反対な性格にもかかわらず、カラ松から「一番一緒にいるときが多いだろう」(1期17話)と言われるよう、二人で行動するシーンがよく描かれる一松と十四松。 プラスとマイナスのキャラクターとして描かれ、『戒め』で幸福と不幸のバランスを保とうと奮闘している二人の存在は、『おそ松さん』という作品が保つ絶妙なバランスの象徴のようだと言えるかもしれません。

(執筆:飯塚ゆとり/編集:小日向ハル)



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イケメン編集部の日常コメディーマンガ「毎日が沼!」隔週金曜更新

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