【考察4】『おそ松さん』2期16話『となりのかわい子ちゃん』でトト子が泣いた理由――キンちゃんとは“誰”だったのか?

【考察4】『おそ松さん』2期16話『となりのかわい子ちゃん』でトト子が泣いた理由――キンちゃんとは“誰”だったのか?

松野家の近所にやってきた美少女“キンちゃん”との交流を描いた『おそ松さん』2期16話『となりのかわい子ちゃん』。クライマックスでは、いつも強気なヒロインのトト子がなぜか号泣し、6つ子たちを困惑させました。 今回は、トト子のキャラクターや『となりのかわい子ちゃん』のストーリーを分析しながら、トト子の謎の涙の理由について考察していきます!

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※本記事には、TVアニメ『おそ松さん』2期16話『となりのかわい子ちゃん』のネタバレが含まれます。

2期16話『となりのかわい子ちゃん』はどんな話?

まずは、『おそ松さん』2期16話『となりのかわい子ちゃん』のストーリーを簡単におさらいしながら、トト子が泣いた経緯を確認していきましょう。

6つ子たちの家の隣に住む親戚の家に遊びにきた沖縄出身の美少女・“キンちゃん”こと犬山キン子。彼女が洗濯中に飛ばしてしまったブラジャーをきっかけに、6つ子とキンちゃんは仲良くなっていきます。

ある日、まだ東京に慣れていないキンちゃんから、6つ子に街を案内してほしいというオファーがきます。当初、6つ子はトト子の買い物に付き合う予定でしたが、とある理由からキンちゃんの約束を受け入れることに決めます。

次の日、一人で買い物へ向かっていたトト子は、6つ子とキンちゃんのデート現場を目撃。モヤモヤしながら7人を尾行しはじめますが、あまりにも斬新な変装により、尾行はあっという間にバレてしまいます。

居酒屋でのやりとりのあと、たまらず外へ飛び出してしまったトト子に、キンちゃんが事の真相を話します。実は、6つ子がキンちゃんとの約束を優先したのは、彼女が翌日に地元へ帰ってしまうからだったのです。キンちゃんに謝罪されたトト子は、いきなり号泣。大量の涙を流しながら去っていきます。

トド松「えっ、なんで?」
おそ松「全然わかんない」

トト子突然の涙に、6つ子は呆然。トト子は一体なぜ泣き出したのでしょうか?

“普通の女の子”とひと味違うトト子のキャラクター

トト子の涙の理由を考える前に、そもそも、トト子とはどんなキャラクターだったのかを思い出してみましょう。

まず、自分が大好き。自分のかわいさを自覚しているだけではなく、それを堂々とアピールします。 そして、裏表がなく、思っていることを率直に発言するタイプでもあります。1期8話『トト子の夢』で、アイドルを目指した理由の話題になった際は、

「私は有名になって、ただチヤホヤされたいだけ! SNSに自信のある画像上げてさ、カワイイ! って騒がれたいの。あとそれを同級生とかに見つかって、あなたより上の人生歩んでますアピールしたいのよ〜!」

とコメント。1期24話『トト子大あわて』では、結婚相談所に見放された後、チビ太のおでん屋で飲んだくれながら、

「だって周りと差をつけたいんだもん。みんなにいい人生だねって言われたい。てか、みんなはそういうプレッシャーないの? ぶっちゃけ私、チヤホヤされたくて息してるとこあるけどなぁ」

と愚痴をこぼしていました。

また、どんなに売れなくても魚のアイドルを続けているように、自分の好きなものはとことん貫く性格でもあります。同じく1期24話『トト子大あわて』では、婚活パーティーで熱心に石油王を探していたにもかかわらず、彼から魚臭さを指摘された途端、「そんなの言ったらそっちだって石油臭えじゃねえか! 魚バカにすんじゃねえ!」と激怒し、強烈なボディブローと回し蹴りをお見舞いしていました。

このように、いわゆる“普通の女の子”とはかけ離れた感覚を持っているトト子。多くの女性が周りの目を気にして包み隠そうとすることを平然と言い放ち、自分の信条を貫くトト子ちゃんは、毒のあるキャラクターでありながらも視聴者にカタルシスを与えてくれる存在でした。

キンちゃんとは“誰”だったのか

そんなトト子が『となりのかわい子ちゃん』で繰り返していたのが、「誰? キンちゃん誰?」というセリフ。冒頭、キンちゃんに手を振る6つ子を目撃するシーンや、6つ子とキンちゃんのデートを尾行するシーン、居酒屋でキンちゃんを紹介されるシーンで「誰? キンちゃん誰?」と連発。そして、最後キンちゃんに謝罪されたあとも、キンちゃんを既に知っているはずなのに、号泣しながら「誰!? キンちゃん誰〜!?」と叫び続けていました。

トト子は基本的に、自分より劣っている女性がまったく眼中に入らない性格です。1期24話『トト子大あわて』では、婚活パーティーで石油王を探していることを女性3人組からバカにされた際、ショックを受ける様子を微塵も見せることなく、「庶民ってなんであんなにブスなんだろう?」とポカンとしていました。この話では、トト子が”嫉妬”や”コンプレックス”という、他人を羨む感情にまつわる言葉を知らなかったことも明らかになっています。

2期6話『ともだちがほしいジョー』では、ハタ坊が友達を探しているという相談に、「ふーん、でもトト子も友達いないからなぁ」と返答し、驚くチビ太に、「敵しかいない!」と言いながら高らかに笑っていました。なかなか強烈な性格をしているトト子は、周囲の女性から悪感情を持たれてしまうことも多いのでしょう。しかし、「他人から嫌われたくない」という感覚はないらしく、思い悩んでいる様子は見られませんでした。

ちなみに、『トト子とにゃー』(2期8話・9話・12話)で見られるように、同じアイドルの橋本にゃーのことは敵視しているようです。これは、橋本にゃーが同じアイドルで、同じように顔がかわいく、同じように性格もキツめなのに、自分よりも売れているという、自身の上位互換的な存在だからかもしれません。

それでは、キンちゃんはいかがでしょうか。 6つ子とのデートを目撃したとき、トト子は当初「モテないみんなからすると、トト子はちょっとレベルが高すぎるんだよね。だからああやって庶民をターゲットに変えたと……」などと、いつもどおりのテンションで自分を鼓舞していました。ところが、キンちゃんの性格を知るうちに、トト子の表情はどんどん重くなっていきます。 それは、キンちゃんが“根っからのいい子”だったからです。トト子の「誰? キンちゃん誰?」という言葉は、彼女がそれまでトト子の世界に存在しなかったタイプの女性であることの現れとも考えられます。

おそ松が思う、トト子の“かわいさ”

居酒屋で、謝罪する6つ子たちに対し、トト子は「そりゃこっちのデートのほうがいいよねぇ〜。荷物持ちなんかさせるかわいくない女なんか嫌だよねぇ」と、スネたような態度を取ります。自分のことをかわいくないと言い張るトト子を、必死に「かわいい」とフォローする5人。しかし、おそ松だけが、「うん、全然かわいくない」と言い放ちます。

おそ松「どうしたのトト子ちゃん。ドタキャンそんな怒ってんの? 今日、なんかヘンだよ」

おそ松の言葉にハッとしたトト子は、店を出ていってしまいます。

これまで、6つ子はトト子をひたすら「かわいい」と評価し続けてきました。 1期4話『トト子なのだ』では、アイドルとしてのデビューコンサートのステージに現れた魚衣装のトト子に、他の観客がドン引きする中、6つ子だけは「スッゲーかわいい!」と大盛り上がり。 8話『トト子の夢』でも、チヤホヤされたいという本音を暴露するトト子に、「かわいい〜」と声をそろえてうっとり。

おそ松「いる!? こんなに本心をさらけ出す女の子!」
チョロ松「結局さらけ出すって一番かわいいよね!」
トド松「自慢の幼なじみ!」

この話のラストでは、「いつか必ずひと回りもふた周りも大きくなって、トト子は帰ってくるから!」と約束したトト子が超巨大ロボになって帰ってきたときも、「か、かわいい〜!」と大絶賛していました。

1期18話『逆襲のイヤミ』では、恐ろしい形相で「人気が欲しいんじゃァ! 出番じゃァ! 主役主役〜!」と怒鳴り散らすトト子を、

チョロ松「まずい、完全に悪魔だよ」
一松「かわいすぎる」
チョロ松「ああ、超絶かわいい!」

と評価しています。

これらのエピソードからもわかるように、6つ子はトト子の見た目だけではなく、中身もかわいいと思っていたのです。 おそ松が「かわいい」と思っているのは、自分のことが大好きで、本音をさらけ出す、ありのままのトト子。いつものトト子なら、他の女の子なんか眼中になく、ドタキャンされても自己肯定するパワーを持っているはずなのです。 まるで“普通の女の子”のようにいじけているトト子ちゃんは、おそ松にとっては確かに「全然かわいく」なんかなく、「なんかヘン」だと感じられたのでしょう。

クライマックスでトト子が泣いた理由

居酒屋を出ていったあと、川原でトド松からフォローされるトト子。「めんどくさい」と言い捨てて帰ろうとするトト子の目の前に、キンちゃんと残りの5人が現れます。そこでトト子は、キンちゃんが明日地元へ帰ってしまうこと、そのため6つ子が彼女の約束を優先したことを知らされます。その途端、トト子の目から堰を切ったように涙が溢れ出したのです。

キンちゃんと6つ子のデート現場を見た後、自分のことを「すぐプリプリ怒って超マイペース。全然かわいくない」と卑屈に評価しはじめたトト子。それは、6つ子がキンちゃんとの約束を優先した理由が、彼女が自分にない魅力を持っているからではないかと考えたからかもしれません。
1期24話『トト子大あわて』では、トト子が自分の信者として6つ子たちの顔を思い浮かべたあと、「あれー!? もしかして私の周りってロクなのがいない!? それで喜んでるってヤバいやつ!?」と焦っていました。トト子は、6つ子が彼女の数少ない支持者であることを知っています。6つ子とは、どんなトト子でもかわいいと認めてくれる人物であり、トト子が自分らしさを保つために必要な存在なのです。

ところが、6つ子がキンちゃんを選んだのは、彼女のほうがトト子よりも女性として優れていたからではなく、「明日地元に帰ってしまうから」という合理的な理由でした。
トト子が突然泣き出したのには、さまざまな理由があるでしょう。自分の思い悩みが杞憂だったことを知っての安堵と恥ずかしさ。見た目だけではなく心もきれいなキンちゃんによって、自分の弱さと向き合うことになってしまった悔しさ。誰も悪くないことを知り、やり場がなくなってしまった怒りや哀しみ。
女性の視聴者ならば、あの場面で思わず泣いてしまう理由は少なからず想像がつくかもしれません。もともと”嫉妬”や”コンプレックス”という複雑な感情を知らない、天真爛漫でポジティブなトト子だからこそ、言葉にできない感情があれだけ大量の涙となって現れたのではないでしょうか。

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イケメン編集部の日常コメディーマンガ「毎日が沼!」隔週金曜更新

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小日向ハル
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