斉藤壮馬の詩的な表現にグッとくる『健康で文化的な最低限度の生活』がエモい

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 斉藤壮馬の詩的な表現にグッとくる『健康で文化的な最低限度の生活』がエモい
「文学青年」としても有名な、大人気声優・斉藤壮馬さん。初のエッセイ集となる『健康で文化的な最低限度の生活』には斉藤さんならではの繊細な表現で溢れていました。そんな書籍をご紹介します!
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『健康で文化的な最低限度の生活』(KADOKAWA)は、声優・斉藤壮馬さん初のエッセイ集です。

「ボイスニュータイプ」誌の同名連載から12本、WEBサイト「KIKI by VOICE Newtype」で連載の「斉藤壮馬のつれづれなるままに」から厳選された10本、本書のための書き下ろし3本と、3年間にわたってつづられたエッセイのほかに、斉藤さんの地元・山梨での撮り下ろし写真が収録されています。

雨のにおい、レモン水の音…詩的な表現にハッとする

斉藤さんの根っこの部分にある家族や友情をはじめ日々の生活に向けた視線や、声優という仕事への意識、斉藤さんが愛してやまないモノやコトなど。それらが斉藤さん自身の言葉で軽快に、あざやかに語られていく本書からは「斉藤壮馬」という人物がご本人の言葉で解き明かされていくような印象を受けました。

もともと文章を書くのが趣味だという斉藤さん。エッセイにはご自身の体験や過去の記憶にまつわる事柄を軽いタッチで書き綴られていて、思わずクスリと笑ってしまうようなオチのついていることも多いのですが、その端々に、読んでいるこちらがハッとさせられるような表現がいくつもあります。
スピッツの草野マサムネ氏の歌声を「レモン水みたいな音の粒」(p52)と評した言葉にうなずいてみたり、雨のにおいがして、その通りになった」(p56)というフレーズだけで、思わずそんな夕立の空を思い浮かべてしまったり。

痛みや怖さ、眠れない夜の話から、おいしいお酒やお寿司の話。仕事のこと、音楽のこと、家族のこと、友人のこと……どれを読んでも不思議と五感に訴えてくるのです。

その文体の持つチカラを感じれば、ご本人がエッセイの中で"本"と"サブカルチャー"が好きだと明かしていることにも納得がいくというもの。さまざまな本や音楽、カルチャーに触れて吸収してきたものすべてが斉藤さんの血肉となっていて、「声優・斉藤壮馬」の演技の繊細な魅力につながっているのかも、とさえ感じました。
そんな「声優」としての斉藤さんの姿が垣間見えるという点では、歌や音声を収録する際の自分のクセを明かした「左耳の意味」がおすすめ。斉藤さんが愛飲するドリンクについて熱く語る「ポカリ」や、デビュー・シングル『フィッシュストーリー』に寄せて書かれた「釣りのはなし」もファン必読のお話し。

詳細な内容はぜひ本書で楽しんでいただきたいですが、読んでいると斉藤さんの心のなかを覗きみたような気持ちになれて、なんだかくすぐったい。

もうダメだと思った時――斉藤さんからのメッセージは?

書き下ろしエッセイで斉藤さんは、昔の自分の声を聴き返したことについて触れていました。

「芝居の巧拙はともかく、クリアな声と滑舌、無駄な力みのないまっすぐな音がそこにあった」(p162)と。一方最近では、思うように声が出ず自分は何をやっているのだ、もう駄目なのではないかと思うことも多々あるのだそう。

そんな中、尊敬する先輩との話から斉藤さんがたどり着いた答えは「もっともっとがんばってもいいんだ、楽しみながらがんばることは決して間違いじゃないんだ」(p163)というもの。

苦しくても、その先に幸せが待っていると信じて続けるのだ、と。声優として多くのファンに愛される斉藤さんが、どんな思いで仕事と向き合っているのか。本質的な問いとその答えについて素直な言葉で触れられたエピソードは、読んでいて胸に迫るものがありました。
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