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9月11日より劇場公開している映画『海辺のエトランゼ』は、繊細かつ透明な描写で読者を魅了する紀伊カンナ先生の『エトランゼ』シリーズが原作。主人公・橋本駿のもとにやってきた高校生・知花実央が互いに恋をして、その想いを実らせ2人で過ごすようになってからの日々を描いた作品です。
また、8月22日より公開中の映画『ギヴン』は、キヅナツキ先生が描く同名マンガの映画化作品。バンドを結成した4人の青年たちが繰り広げるオルタナティブな恋模様は、ドラマCD化やテレビアニメ化されたことでも人気を呼びました。
『ギヴン』と『海辺のエトランゼ』。一見テイストが異なるこの2作品。
BLを嗜むイマドキな女子の心に刺さるのはどんなところなのでしょうか? その魅力に迫っていきます。
INDEX
『ギヴン』はボーイズバンドのメンバーが中心となって繰り広げられる群像劇で、『エトランゼ』シリーズは若手小説家である橋本駿と、その恋人である知花実央の2人が中心となって物語が進んでいきます。
“それからずっと髪を伸ばしている/秋彦を好きになってから願掛けのようにずっと”
(『ギヴン』3巻より)
特徴的なのはマンガの合間にしばしば挟み込まれるモノローグ。より群像劇にドラマチックなムードが生まれ、キャラクターの心の声が聴こえてくることで、読者の心を惹きつけています。
「俺 今まで生きてきた中で/今が一番幸せだな」
(「春風のエトランゼ」2巻より)
『ギヴン』に見られる映画のようなドラマチックさに対し、私たちの日常に近い場所で起こっている出来事のように感じられる『エトランゼ』。前者は劇的な展開に揺れ動くキャラクターたちの心情を、後者は日常の中で変化していく些細な心の機微を感じとれます。
群像劇と、2人の物語。ドラマチックと日常。
人物相関における描写の違いは、それぞれの作品が持つ異なる世界観を象徴しているともいえるでしょう。
特に2作品において重要な要素となるのが「葛藤」というワード。
“人に受け入れられないって/辛いな/…もうこんなのやめたい
俺 絶対おかしい/ちゃんと女子…好きになりたい
普通がいい 普通になりたい”(『春風のエトランゼ』1巻より)
特に『ギヴン』は先に挙げた人間関係の相関から生まれる葛藤を、『エトランゼ』は自分たちが同性同士である、というところにマイノリティを感じ、苦しんでいるといった描写が見られます。
障壁がなく、幸せに上手くいくといった恋愛の在り方から、自分たちの存在や他人との干渉で葛藤するものへと変わっていき、困難なしに恋が成就するとは限らないという現実的な描写が登場し始めた今のボーイズラブは、BLが文化として各方面に登場してきた時代から確実に変化してきています。
現代に生きる受け手として、さまざまな考えを巡らせながら作品を読む喜びを味わいたいですね。
(執筆:安藤エヌ)
●映画『ギヴン』公式サイト:https://given-anime.com/
●映画『海辺のエトランゼ』公式サイト:https://etranger-anime.com/
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