羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
――アルバムのお話もぜひお話してほしいのですが、今回はすべてラブソングとなったコンセプトをお聞きしたいです。
土岐:
今回ミニアルバムの中で1番最初に制作が決まったのが、『ルプなな(ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する)』というアニメのオープニングテーマである「Another Birthday」でした。
タイアップが決まった時、アニメ制作チームから楽曲に対する要望がハッキリしていました。その曲をミニアルバムに収録するのは確定していたので、「次にそれ(ミニアルバム)をつくるのであれば、『Another Birthday』に親和性のある楽曲を集めてみるのはどうだろうか」と考えたんですね。そして、「それならいっそのことすべてラブソングにしよう!」ということで、いろんなコンセプトのラブソング集になりました。
――ラブソングという軸がありながら、それぞれ全く異なる印象の楽曲が集まっていますよね。
土岐:
そうなんです。最初に歌詞が入っていないデモ音源をいただき、音楽チームと共に、「この曲はこういう歌詞が合いそうだね」と話し合いながら制作を進めました。
例えば、ミニアルバムの1曲目の「ENVY」の音源を聴いた時、サウンドに挑発的な印象を受けました。なので、「少し大人っぽい情熱的な恋愛という雰囲気を感じられるといいな」と、歌詞のイメージを作詞を担当してくださるRUCCAさんに伝えたところ、想像通りに仕上がっていて。歌詞を見たら、「まさにこれじゃん!」と思いました(笑)。
――情熱的な「ENVY」に続く2曲目の「Stand by Youth」は、爽やかなギターチューンとかなりイメージが変わりますね。
土岐:
「ENVY」は“大人の恋”をイメージしてつくっていただきましたが、「Stand by Youth」は「ギターの疾走感がある楽曲をつくってもらえないか」とお伝えしました。
というのも、最近ライブでギターを披露しているんですよ。なので、今回のアルバムでもギターチューンの楽曲を入れたいなと考えて、制作していただきました。
ギターチューンのため、青春真っただなかの雰囲気がありながら、洋楽のテイストを持たせています。RUCCAさんは日本語が英語に聞こえるような歌詞をつくるのが得意な方なので、僕の楽曲には今までなかったリンキングをしてもらいました。これまで僕の曲でそういう楽曲をつくっていただいたことはなかったので、今回ようやく叶いました。
――たしかに日本語なのに英語に聞こえる歌詞が印象的でした。そして、3曲目の「Re: Feel」も印象がガラッと変化して、ゆったりと聴けるような1曲になっていますね。
土岐:
「Re: Feel」と「Treasure」は、少し達観した精神年齢高めの楽曲になっています。
今回は、リラックスして歌う雰囲気の楽曲をやってみたいと思い、少し脱力した歌い方を意識しました。洋楽のテイストを取り入れているため音数が少なく、ボーカルが際立つ楽曲になっています。アルバムを通して聴くと、小休止のような印象を受けるかもしれません。
――抜け感のある歌い方が印象的でした。
土岐:
僕自身、音数が少ない楽曲も好きなのですが、今までの楽曲はタイアップや流行もあっていろんなサウンドがぎゅっと詰まっていたり疾走感があったりするものが多かったんですよね。なので、「やっと歌えて楽しかったな。これをライブで歌ったらどうなるんだろう」と思いながらレコーディングしました。とはいえ、難しい楽曲でもあったのですが……。
――どういったところに難しさを感じたのでしょう。
土岐:
僕、歌っているとどんどん楽しくなってきて、笑ってしまうんですよ。豊永(利行)さんやオーイシ(マサヨシ)さんなど僕が好きで尊敬しているアーティストはみんな歌っている時、すごくニコニコしているんですよね。楽しさが歌に乗っていたり、パフォーマンスで歌が好きなことが伝わってきたりする人に惹かれます。
僕を応援してくださる方たちも、「楽しそうに歌う土岐さんが好き」と言ってくださる方が多いのですが、「Re: Feel」と「Treasure」は楽しそうに歌う曲とは少し違うので……。レコーディング中はなるべくリラックスした状態で録れるように意識しました。
――リラックスした楽曲が2曲続いたあと、ミニアルバムを締める「Another Birthday」。壮大なストリングスに驚かされました。
土岐:
今まで僕が歌ってきた楽曲にはない、少女漫画のオープニングのような煌びやかさを持つ1曲に仕上がりました。
最初に、『ルプなな』のスタッフさんから「トレンディドラマに流れるような往年のラブソングを制作してほしい」と要望をいただいたんですね。ただそれって、今のトレンドや『ルプなな』の世界観的に合う部分もあるし、トゥーマッチな部分もあると思います。
そのため、現在のトレンドを取り入れながら、「『ルプなな』側の要望を昇華させるにはどうしたらいいか」と相談しながら「Another Birthday」を完成させていきました。
アニメのアフレコ現場では、収録の初日にスタッフキャストが一人ひとり挨拶をするのですが、そこで『ルプなな』のプロデューサーさんが「この作品には、こんな名言があるんです!」とものすごく濃く熱く語ってくださったんですね。なので、その熱量も感じられる雰囲気の楽曲になったと思います。
――スタッフさんの思い入れが詰まった作品にベストマッチした曲になっていますね。また、表題曲の「Another Birthday」がアルバムの最後を締めるという曲順にもコダワリを感じます。
土岐:
曲順にはこだわりました。「Another Birthday」は今までの僕の楽曲にはない、良い意味で異質な楽曲だと思います。なので、最初か最後に入れたいと考えてました。
そこで、ほかの4曲が揃った時に、スタッフのみんなと「1番壮大な楽曲は『Another Birthday』だけど、『ENVY』も表題曲になり得るほどかなりキャッチーだよね」となったんですよね。
「ENVY」をアルバムの最初に持ってきて、次に爽やかなギターチューンの「Stand by Youth」、小休止にリラックスできる「Re: Feel」「Treasure」、そして最後に壮大な「Another Birthday」で終わる。5曲連続して聴いてみた時に、満場一致で「この順番だね」となり、自分の中でもかなり納得いく曲順になったと思っています。
タイトルのほかにも、ソロアーティストの活動では常々、「歌い方を楽曲によって変えられたら面白いな」「この楽曲の歌詞はこういうことを伝えているから、こういう歌い方をしてみよう」と思いながら楽曲をつくっています。今回のアルバムはそれがとても上手くできたので、ぜひ聴いてもらいたいです。
――コダワリが詰まったミニアルバム『Another Birthday』ですが、「こんな風に聴いてほしい」という思いはありますか?
土岐:
全曲ラブソングとはいえ雰囲気がかなり違う5曲になので、「このタイミングでこの曲を聴いています!」と逆に教えてほしいですね!
「Another Birthday」は強い女性が主人公のアニメ『ルプなな』のタイアップ曲でもあるので、挫折しそうな時やつらい時に「前を向いて頑張りたい」と思いながら聴くのかなとか。
「Re: Feel」は透明感のある曲だから落ち込んだ時に「この曲に寄り添ってほしい」と思ってもらえるかなとか、「ENVY」はキャッチーな楽曲だから「みんなと楽しくカラオケで歌いたい!」と思うのかなとか。
いろんなパターンで聴いていただける楽曲だからこそ、そういうことを想像するのが楽しいです(笑)。
――「ライブで聴きたい!」と思う方も多そうですよね。
土岐:
そうですね! 4th Singleとミニアルバムを含めると一気に新曲が7曲も増えるので、次のライブはセットリストの半分近くを新曲が占める可能性もあります。今からセットリストを考えるのが楽しみです。
特に、これまでの僕の曲の中に「Another Birthday」を入れ込んだら、お客さんの感情がジェットコースターになりそう(笑)。どんな反応をしてもらえるか、今から楽しみです。
――今年でソロアーティスト活動5周年を迎えますが、作品やキャラを背負わない活動に対して感じていることはありますか?
土岐:
ソロ活動を通して感じていることは、“応援してくれる人との距離がすごく密になれる活動である”ということ。作品やキャラなどコンテンツを背負っている僕を応援してくれることはもちろんありがたいと思いますが、土岐隼一を応援してくれている。だからこそ、アーティスト活動はよりファンの皆さんの熱量の高さを感じられます。
コロナ禍でアーティストデビューをしていますが、直接応援できない期間も応援し続けてくれる人がいましたし、ここ1年で応援してくださるようになった方もたくさんいて。僕を好きになってくれたタイミングは皆さんバラバラだけど、総じて熱量が高いんですよね。
――どんな時に熱量の高さを感じますか?
土岐:
特に熱量の高さを感じられるのは、トークイベントです。わざわざCDを買って申し込みをして来てくれるわけですからね。中には、九州や北海道から来てくれる方たちもいる。往復したらすごい距離だし、お金もかかるじゃないですか。しかも、「この曲で土岐さんを知りました」「いつも応援しています」と伝えてくれるんですよ。毎回「すべての人の名前を覚えられたら」「ありがたいな」と思わされます。
そこで感じた嬉しい気持ちを、本業である声優業ではもちろん、アーティスト活動にも還元していきたいと思っています。イベントやライブでお返ししていきたいし、活動の幅をどんどん広げていくことでもお返ししていきたい。そして、皆さんに「また会いに行きたい」と思ってもらえるような人間になりたい。ソロアーティストはたくさんのエネルギーをもらえる活動だと思います。
――「音楽活動が声優業に還元されている」と感じることもありますか?
土岐:
ありますよ。例えば、体調管理。特に喉との付き合い方は、音楽活動を始めてからより意識するようになりました。今年35歳になりますから、パワーが低下しているとは思わないけど、よほどのことがない限りは20代の頃より上がることはないと思うんですよ。
声優という本業がある中、アーティスト活動があるからこそ、「1番いいパフォーマンスをするために、喉の調子をどうしたらいいか」はすごく繊細に考えています。
また、いろんな作曲家さんの楽曲を歌わせていただく中で、曲に適した声の出し方を考えることが増えたので、それがお芝居に返ってくることもあります。
――「この歌の喉の使い方は、こういうキャラを演じる上で参考になりそう」と思うこともあるんですか?
土岐:
そうですね。歌に関しては、ボイトレの先生と「ここの部分はこういう声を出してみよう」とテクニカルに考えながら模索していることが多いんですね。なので、芝居の新しい引き出しをつくる上で、歌う時の声の出し方を参考にしています。
「このキャラを演じる上でこういう声の出し方をしたい」と思った時、「そういえばこの声の出し方って歌の方でやったことあるな」と思い出すこともありますよ。
逆に、声優の表現力を歌に還元することもあります。それこそ『A3!』の瑠璃川幸くんの最初のキャラソンを歌う時、少し悲しげな曲だったので、レコーディングの最中にプロデューサーから「ライブで歌う時のように笑って歌わないでください」と言われたことがあって。その経験から、4th Single「SCIENCE」のレコーディングでは感情をコントロールして歌うことができました。それは声優業がアーティスト活動に還元されたことだと思います。
――声優業とアーティスト活動が相互に作用し合っているんですね。それでは最後に、5周年を迎えた今だからこそ考えている、今後ソロアーティスト活動でしたいことを教えてください。
土岐:
やりたいことはいっぱいあるんですよね……。声優アーティスト仲間の仲村宗悟といろいろ話すのですが、彼は曲も歌詞も自分でつくっているんですよ。僕には、RUCCAさんという強力な楽曲制作のアドバイザー(作詞家)がいるから、そろそろ自分で楽曲制作をしてみようかなと思っています。
もう1つは、全国ツアーをしたいですね。九州、大阪、愛知、北海道などいろんな地域の方が僕のことを応援しにライブやイベントへ足を運んでくれています。なので、次は僕が皆さんのいる場所へ足を運べる全国ツアーができたらいいなと考えています。
――「特にここは行ってみたい!」と思っている場所はありますか?
土岐:
それを言ってしまうと贔屓になっちゃうので……もちろん全部です!(笑)
ただ、行く先々で食べたいものはいっぱいあります。九州に行ったらラーメンが食べたいし、四国に行ったらうどんが食べたいし、北海道に行ったらラーメンが食べたいし……。
――全部麺なんですね(笑)。
土岐:
僕も自分で言っていて、「あれ、全部麺だな」と思いました(笑)。
とはいえ僕、ライブの前日に前乗りしても贅沢できないタイプなんですよ……。「本番の前にこんなに贅沢していいのかな」というマインドになってしまって。「欲しがりません勝つまでは」の精神があるというか。もったいないんですけどね。
だから、仕事終わりに贅沢をしたいのですが、ライブが終わったらマネージャーに次の日仕事を入れられてしまって。「1日くらい観光させてくれよ〜(泣)」と思うのですが、結局観光できずに帰らされるので、もしツアーができるならちゃんと観光がしたい! 今後したいことの1つです(笑)。
(執筆:羽賀こはく、取材&編集:阿部裕華、撮影:鬼澤礼門)
2024年1月24日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
品番:PCCG-02273
価格:¥3,960(税込)
仕様:24Pオリジナルブックレット、三方背BOX
<DVD>
「Another Birthday」Music Video,MV Making Movie
【通常盤(CD ONLY)】
品番:PCCG-02274
価格:¥2,860(税込)
仕様:8Pオリジナルブックレット,両A面仕様アニメジャケット
【きゃにめ盤(CD+DVD)】
品番:SCCG-00150
価格:¥4,950(税込)
仕様 :24Pオリジナルブックレット、三方背BOX
<DVD>
「Another Birthday」Music Video,MV Making Movie,Taiwan Making Movie*
※この映像はTBSチャンネルにて放送した特別番組を収録したものです。
※仕様・特典に関しては告知なく変更になる場合がございます。
<CD>
M1.ENVY
作詞:RUCCA 作曲/編曲:矢野達也
M2.Stand by Youth
作詞:RUCCA 作曲/編曲:徳田光希
M3.Re: Feel
作詞:RUCCA 作曲:ひろせP(YCM),Hybo(YCM) 編曲:Hybo(YCM)
M4.Treasure
作詞/作曲/編曲:小松一也
M5.Another Birthday
作詞:RUCCA 作曲:mido(HANO),廣澤優也(HANO) 編曲:廣澤優也(HANO)
土岐隼一(とき・しゅんいち)
1989年5月7日生まれ、東京都出身。A型。
土岐隼一 アーティストページ:http://tokishunichi.com/
土岐隼一 公式X(旧:Twitter):https://x.com/tokishunichi
土岐隼一 アーティスト公式X(旧:Twitter):https://x.com/tokishun_music
土岐隼一 公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@ShunichiTokiOfficialChannel
羽賀こはく
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