zash
子供の頃から培ってきた映画、海外ドラマ、特撮、アニメの知識を活かして活動中。各媒体でコラム、取材レポート、インタビュー記事を執筆する他、雑誌やマスコミ用リリースへの寄稿も行っている。
2023年9月、「令和ライダー」5作目となる新作「仮面ライダー」の放送がスタートしました。その名も『仮面ライダーガッチャード』。
2019年の『仮面ライダーゼロワン』から始まった「令和ライダー」シリーズも早くも5作目となり、シリーズを通して毎回、斬新なアイデアの元、われわれ視聴者を大いに楽しませてくれています。
待望の新作となった『仮面ライダーガッチャード』は、ケミーと呼ばれる人工生命体が宿ったライドケミーカードをドライバーにセットすることで変身するという、トレーディングカードゲームが空前の大ブームを巻き起こしている世相を反映した形となっている本作。
その時代に合わせた最先端の流行を常に取り入れてきた「仮面ライダー」シリーズの新たな挑戦が幕を開けたのです。
INDEX
『仮面ライダーガッチャード』は、自分だけの何か=ガッチャを探し求める普通の高校生・一ノ瀬宝太郎を主人公に物語が展開されていきます。そんな宝太郎が、ある日、一匹のバッタと出会ったことから人生が一変。
時を同じくして彼の前に現れたSLによって異空間へと連れ去られた宝太郎は、そこで謎の男性からガッチャードライバーを渡され、仮面ライダーガッチャードとして怪人・マルガムと戦うことになってしまいます。
しかし、これこそが宝太郎の求めていた“ガッチャ”であり、彼は見習い錬金術師として、世に放たれてしまった101体のケミーすべてと友達になるために、日夜、奮闘するのでした。
ポケモンカード、遊戯王カード、ワンピースカード……発売日にはお店の前に長蛇の列ができ、入手困難な状況が長らく続いているほどに、時はまさに空前のトレカブームの時代。
時代に合わせて流行を取り入れてきた「仮面ライダー」シリーズですが、過去にも同じように「トレカ」を題材とした作品がいくつもありました。
遊戯王カードやデュエルマスターズの全盛期であった時代には『仮面ライダー龍騎』や『仮面ライダー剣』、データカードダスという筐体が登場し、子供たちによるカードゲームの概念が変化した時代には『仮面ライダーディケイド』といったように、仮面ライダーとトレカブームというのは切っても切り離せない関係性だったのです。
そして2023年、『仮面ライダーディケイド』以来14年ぶりとなるカードの力を使って戦う仮面ライダーが登場しました。それが『仮面ライダーガッチャード』なのです。
まるで「ポケモンマスターになる!」とでも言うように「すべてのケミーと友達になること」を目標として掲げる主人公。カードのデザインを見ても、今回は「ポケモンカードゲーム」からインスピレーションを受けたことが予想できます。
巷でとんでもない流行を生んでいるアイテムを中心としながら、斬新なストーリーを紡ぎ出すのもまた「仮面ライダー」シリーズの魅力です。『仮面ライダーガッチャード』もまた、これまでにはなかった新鮮な印象を大いに与えます。
同じく「スーパーヒーロータイム」で現在放送中の『王様戦隊キングオージャー』は、そのほとんどがCG背景を駆使した撮影になっていることでも大きな話題となっていますが、『仮面ライダーガッチャード』も異空間の描写などでCG背景を駆使し、外連味のある世界観を構築することに成功しています。
さらに主人公の実家が食堂を経営していることから、毎話、創作料理の数々が登場するなど、本編とは関係のない部分での楽しみも提供しており、戦闘シーン以外の場面においても全く退屈させない魅力にあふれています。
全体的なイメージとしては「仮面ライダー」にありがちなシリアス展開というよりも明るいイメージを醸し出しており、家族そろって楽しめる作風になっているのが印象的です。
それでいて変身プロセスが主人公の頭の中に浮かぶ描写や主人公の目標、目的を曖昧模糊にすることなく明確にしている点などにはリアリティを感じ、明るい雰囲気の中にも緻密な脚本構成が成されていることも素晴らしいの一言に尽きます。
前述のように『仮面ライダーガッチャード』は斬新なアイデアに溢れた作品になっていますが、「仮面ライダー」過去作へのオマージュを感じ取れる瞬間も数多く存在します。
まずは変身音について。ライドケミーカードをドライバーに装填した際のサウンドに注目。通常フォームであるスチームホッパーに変身する際のホッパー1を装填した時には仮面ライダー1号を思わせるサウンドが鳴り、同じくスチームライナーを装填した際には仮面ライダー電王を思わせるサウンドが鳴り響きます。
まさに「昭和」「平成」とのコラボレーションが実現したようなものになっており、長年、ライダーファンを続けている視聴者は思わず身構えたのではないでしょうか。
「昭和」要素で言うと、約50年前に製作されたシリーズ第1作『仮面ライダー』の時代から、シリーズの伝統エピソードだったプロレスをテーマにしたエピソードが「令和」の時代になっても受け継がれているところは個人的に大変喜ばしい限りでした。
さらに主人公と友情を育んでいくホッパー1のフォルムが『仮面ライダーJ』に登場したバッタのベリーを思い出させたり、主人公が所属する錬金アカデミーが『仮面ライダーフォーゼ』の仮面ライダー部と『仮面ライダーセイバー』のソードオブロゴスを足したような存在になっていたりと、歴代作品の持つ要素をちょいちょい盛り込んでくるのも魅力の一つと言えるでしょう。
その他、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で鍛え上げた表現力を遺憾なく発揮する石丸幹二さんや宝太郎の母親として抜群の存在感を放つ南野陽子さんといった脇を固めるベテラン俳優陣の魅力もさることながら、謎多き戦士ヴァルバラドの今後にも注目していきたい『仮面ライダーガッチャード』。
新たに幕を開けた宝太郎の冒険……これから1年間、彼がどんな戦いぶりを魅せてくれるのでしょうか。
(執筆:zash)
■『仮面ライダーギーツ』は龍騎やカブトファンに勧めたい。多人数ライダー作品の“答え”となるか。https://numan.tokyo/drama-stage/BzP3w/
■『仮面ライダーオーズ』待望の続編はどう描かれた?映司とアンク、ふたりの終着点は…。https://numan.tokyo/drama-stage/Dzchz/
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