『うる星やつら』OPはあたる×ラム、EDはしのぶ視点？歌詞に隠れた三角関係が切ない…！

2022年10月13日よりフジテレビ “ノイタミナ”ほかにて放映中のアニメ『うる星やつら』。昭和テイストを崩すことなく令和ナイズされたそのクオリティの高さに、毎週Twitterなどで盛り上がりを見せています。

旧アニメ版へのリスペクトが至るとこに散りばめられており、各話の内容やキャラクターの動きやデザイン、声優陣の演技はもちろんのこと、OP&EDについても例外ではありません。​映像では「星」「ハート」「流星」を多用していたり、ラムが躍っていたりと旧アニメを彷彿とさせるモチーフが。

そして何より注目したいのが、OP&EDの歌詞が全面的に“あたる×ラム”である点。歌詞を紐解いていくと、これまでの「うる星やつら」で展開されてきた「あたラム」が絶妙に織り込まれていることがわかる歌詞となっているのです。

またEDでは歌詞の方向が少し変わり、“あたラム”ではない第三者の姿が見えてくるのです。

OPの『アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti』には「どこがいいの？」と聞かれた歌詞の主人公が、「わからないでいいよ」と返す歌詞が登場します。

実は旧アニメ版の映画『うる星やつら2　ビューティフルドリーマー』では同じように、ラムがしのぶから「あたるくんのどこが好きなの？」と聞かれる場面があるのです。そしてラムはその問いかけに対して決定的なことは言わずに「ダーリンが好きなんだもん。今みたいな楽しい生活が続くのが夢だっちゃ」とだけ答えます。

「善人ではある」とあたるを評する元彼女のしのぶが、あたるの良さをわかっていないわけではありません。一方でラムも、あたるの好きなところは答えきれないほどにあるはずです。

しかしラムは敢えて決定的なことは答えません。何故なら、ここでしのぶに好きな理由を答えて、それに同意されても否定されても良い気はしないからです。だから「わからないでいいよ」とばかりに、「好きなんだもん」と答えを濁すのです。

そんな単なるドタバタラブコメディでない、どこか駆け引きを感じる色気のあるやり取りが曲とリンクする部分があると思うと“あたラム”のファンとしてはたまらない気持ちになります。

また、『アイウエ』のフルver.を聴くと、1番が“ラム→あたる”の歌詞で、2番が“あたる→ラム”の歌詞となっているのがわかります。ラム→あたるの歌詞はなんとなく想像がつきますが、あたる→ラムの歌詞はあまり想像がつかないのではないでしょうか？

聞いてみれば絶対「あたる→ラムだ！」となる歌詞ですので、ぜひフルver.を聴いてみることをおすすめします。

旧アニメ版のOP『ラムのラブソング』の映像テイストを受け継いだEDの『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ』。80年代シティポップとして現代でリバイバル流行した『フライディ・チャイナタウン』を彷彿とさせるキャッチーなメロディに心掴まれた人も多いのではないでしょうか？

女性視点でのこちらの歌詞も、ラムの気持ちを描いているのかと思いきや……「冗談じゃあないわ」「食指がびくともしないわ」「もう懲り懲りよ」となんだか趣が異なります。

これは“あたラム”ではなく、しのぶとの三角関係の雰囲気を感じさせる艶やかな歌詞なのではないでしょうか？　OPがあたるとラム視点で見た「あたラム」なら、EDはしのぶ、もしくはしのぶを始めとした周囲から見た“あたラム”といったところでしょうか。

しのぶもラムに劣らず意外と破天荒な性格で、あたるとラムに対しては半ば諦めつつもツンツンとした態度を取りがちです。“あなた”の横顔を見て「誰かのものになるのでしょう」と歌う歌詞が​、あたるとラムの絡みを見るしのぶの台詞だと思うと、少し切なくなってしまいますね。

とはいえ、あくまで中心となるのはハチャメチャな“あたラム”。あたるが絶対に素直にならないせいで周囲が「冗談じゃあないわ」とヤキモキする様子が歌詞にも現れていて、しっとりとした雰囲気では終わらせません。そういうところが、『うる星やつら』っぽくて可愛らしいなと思わせてくれます。

星やハートのモチーフ、EDの始まり方などにも旧アニメ版OPが意識されているように見受けられます。横スクロールでキャラクターの静止画が展開されていく様子や、キャラクターが一定の動きを繰り返すのも、一世代前のアニメでありがちな雰囲気です。

ただ、これらの要素も単なる懐古ではない、と筆者は考えています。80年代〜90年代アニメが現代で「エモい」とされリバイバル流行していることもあり、「何が好まれているのか」を踏まえた上で、再構築した結果が今回のEDなのではないでしょうか。

作中の舞台設定は少なくとも現代っぽさはなく、出てくる電化製品や家の内装は旧アニメや原作と同じ設定です。

作中に現代要素を取り入れすぎると、話がうまくたち行かなくなる側面もあるので仕方ないですが、やはりあたるとラムが現代に居たらどうなるのかは見てみたい気持ちがありました。そのため、OPでスマホを使いこなす2人を見れたのは感慨深かったです。

作中が昭和ならば、OPには令和、EDには平成の雰囲気が感じ取れます。
昭和、平成、令和とどの時代でも常に愛され続けてきた「うる星やつら」そのものへの強い愛とリスペクト、そしてそれに関わる方々の「どの時代でも通用する物語なんだ」という強火な気持ちが、今回のリメイクには込められているように思えてならないのです。

「ここまでする！？」と言わんばかりの愛が溢れる令和版「うる星やつら」。ぜひ、OP&EDを通して可愛くてもだもだする『うる星やつら』の世界を味わってみてはいかがでしょうか。

（執筆：宮本デン）