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2021年に待望のアニメ化も決定した本作がここまで多くの人々に愛されているのは、なんといっても私たちの心を揺さぶる名言・金言の多さが理由の1つともなっています。
主人公・矢口矢虎がひょんなことから美術の道を歩み始め、絶対の正解がない世界で泥臭く奮闘する美術系スポコン漫画。そんな今作から、私・曽我美なつめの心に響いたこんな名言をご紹介致します。
※なお、本記事は性質上、作品の内容を含みます
INDEX
本作は主人公の矢虎が素人同然の状態から芸大受験を決意し、彼に纏わる芸大受験戦争の壮絶な物語を描いた作品です。
東大、京大、関関同立。並みいる受験難関校を押しのけ、日本で最も受験倍率が高い学科を擁する大学。それが東京藝術大学です。その倍率は一例によると、募集定員55名に対し応募1058名。受かる確率は約20人に1人のみという、ぞっとする数字となっています。
過酷な受験戦争を勝ち抜くため多くの人が中学や高校入学時から準備を始める中、高校2年の夏から受験対策を始めた矢虎の挑戦はあまりにも無謀と言えました。
さらに言えば主人公の矢虎は、元々成績優秀で人付き合いも良好、歳相応の悪いことも一通り経験済。
そんなふうにこれまで人生を器用に生きてきた、いわゆるインテリヤンキーな高校生です。
「別に美術じゃなくてもいいじゃん」「美術しかない自分たちの世界に、お前みたいな人間が来るな」と。そんな言葉を、彼にぶつけるのです。
確かに他者からは、矢虎は多才に見えるかもしれません。
ですが彼にとって器用に生きるということは、只々点数を積み重ねていくだけの無味乾燥な生き方でしかありませんでした。
そんな経緯から人より遅いスタートダッシュながらも、彼は彼なりに真剣に絵の道を志していました。
その中で何度も周囲から浴びせられる、心ない言葉。
けれどもし自分の描く絵に説得力があれば、そんな言葉を掛けられることはなかったはず。
自分の絵が上手ければ。外野を皆黙らせるほどの、迫力と熱量がある作品が描けたなら。
けれど当然他者より大きく出遅れている矢虎に、まだそんな力はありません。
そんな自分の無力さや悔しさをぶつけ作品を生み出す、矢虎の狂気や執念にも似た思い。それが込められたセリフが、冒頭のものとなっています。
ですが創作は、勝ち負けや明確な絶対的指標となる数字で結果が出ない世界。上手い下手だけで、全てが決まらない世界です。そこに身を置く人の中には、一定数この矢虎のセリフに強く衝撃を受けた人もいるでしょう。
ではこの世界での指標足りうるものは何か。
その一つは間違いなく、どれだけ大勢の心に強い衝撃を与えられたか。あるいはどれだけ多くの人に、作品を認めてもらえるかということです。
自分が心血を注いで作った作品を、より大勢に見てもらいたい。そして認めてもらいたい。
これは表現活動を行う人々が、誰しも通る道の1つでしょう。
ですが多くの場合ぶち当たるのは「創造以上に自分の作品は人に見てもらえない、あるいは認めてもらえない」という事実です。
しかしそこで創作を続けられるか否かの分かれ目は、この矢虎のような「負けたくない」という思いを強く持てるかどうかなのではないでしょうか。
少し前にはTwitterで、創作仲間の間では「読者の心をねじ切りたい」「暫く放心状態にしたい」という会話がなされる、読者を殺す気で書きたい……という旨の呟きがプチバズりし、大勢の共感を集めていました。
自分の作品が認めてもらえず悔しい。あるいは、すごい作品を見て心が折れそう。
そんな時はぜひこのセリフを思い出し、「自分の作品で全員殺す」「自分の作品で大勢を殴り飛ばす」という強い気概を胸に。再び作品作りへと、向き合ってみてはいかがでしょうか。
(執筆:曽我美なつめ)
成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(や ぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。絵を描かない人にも刺さる熱くて泣けるスポコン美術物語!
■スタッフ
原作:山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社「アフタヌーン」連載)
総監督:舛成孝二
監督:浅野勝也
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:下谷智之
制作:Seven Arcs
■キャスト
矢口八虎:峯田大夢
鮎川龍二:花守ゆみり
高橋世田介:山下大輝
橋田 悠:河西健吾
桑名マキ:宮本侑芽
(C)山口つばさ・講談社/ブルーピリオド製作委員会
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