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高校3年生の佐伯明日夏(山崎丹奈)は将来への不安や漠然とした孤独感を抱えながらも、周囲に合わせて偽りの自分を演じながら高校生活を過ごしていた。呼吸が止まりそうな閉塞感。
その陰鬱とした感情を誰にも見られる事のない閉ざされたTwitterに投稿することで心の均衡を保つ日々。
そんなある日、明日夏はバスの中で老人に手渡された奇妙な機械をきっかけに、”トリノコシティ”という願いが叶うサイトに迷い込み、弔屋(玉城裕規)と名乗る人物に出会う。
「自分の居場所が欲しい」という明日夏の願いは青年・充(高崎翔太)ら様々な巡り会いを引き寄せ、やがて明日夏は隠された真実に近づいていく。
山口ヒロキ監督(以下、山口) まずは原曲のイメージから、企画の岩田雄介さんが10何パターンものプロットを出してくれたんです。そこから3~4ヶ月をかけて、上がってきたものをまた戻してというやり取りを続けるうちに、弔屋と充という役が出来上がっていきました。それまではジャンルも全然違う、例えばアクション系で、弔屋と明日夏が魔法を使って戦うだとかの色んなストーリーがあったんです(笑)。
――そこから、今作のストーリーへと転換していったんですね。
山口 岩田さんと「そうじゃなくて、もっとこっちですね」というやり取りがあった中で、思春期の女子高生の悩みと成長を描きながら、僕としてはSFとかの要素も入れたいと。そのやり取りから、現実世界と弔屋がいる空間を主人公が行ったり来たりする、そのために謎の装置を使うというアイディアが出てきました。
山口 実は、2人の配役を逆にしたらどうだろう、という案もあったんです。でも、玉城くんの方が、人ではないキャラクターを僕が想像しやすかったというのもあって。それに高崎くんも、見た目はチャラそうで、でも中身は好青年かつ色んな事情があって……というキャラクターでも、いわゆる普通の青年に見せることができるなと思ってこの配役にしました。
――配役が逆のパターンも、ファンの方はぜひ観てみたい作品だと思います!
山口 それはそれで面白いものになったと思います。ただ、ストーリーがだいぶ変わっていたかもしれないですね(笑)。
山口 確かに、玉城くんはもう5~6年前に『メサイア』(2013年公開・映画『メサイア-漆黒ノ章-』)で出会って、その時の役柄はまだ敵側の1人で、一撃で殴り飛ばされて気を失っちゃうような役でした。
僕の中でも強く意識していたキャラクターではなかったんですが、『メサイア』シリーズの中で、その後は主役にまでなるようなキャラクターに成長しました(2017年公開・映画『メサイア外伝 -極夜 Polar night-』)。
今作で言うと、編集していて気付いたのは弔屋のセリフじゃないシーンでの表情。撮影しているときのモニターでは気付かなかったような、小さな表情の変化がすごくうまい。その成長を感じた時は、ちょっと鳥肌が立つくらいでした。
――では一方、充役の高崎さんの姿に感じられたことは?
山口 今作の高崎くんですごく良かったと思うところは、充が最後に明日夏へと語りかけるシーン。これも表情の変化なんですが、一気に真剣な表情に変わっていく充の姿に、明日夏も影響されて、観客もグッと引き込まれていく。あのシーンは、この役は高崎くんに演じてもらって良かったと思う場面です。
山口 先ほどもお話しましたが、弔屋の表情は僕も編集していて気付いたようなところなので、ぜひDVDでは皆さんにもじっくりと見てもらいたいですね。主人公は明日夏ですが、明日夏に感情移入して観ていたら気付かないポイントかと思うので、一回観終わってから、もう一度、弔屋やほかのキャラクターの視点で観てもらえたら。DVDなら何度でも観られますから、そういう楽しみ方もしていただけたら嬉しいです。
――今作では劇中に、山口監督の『メサイア』シリーズファンなら「おっ!」と思うような小ネタも散りばめられていましたよね?
山口 そうですね! もしかしたら、劇場での上映ではまだ気づいてない方もいるかもしれません(笑)。『トリノコシティ』と『メサイア』は全く別の世界線の物語なんですが、僕の作った作品はどこかで繋がっているといいなという想いがあって。明日夏が『メサイア』ファンという隠れ設定だったり、実は○○のシーンに出てくる○○が『メサイア』の○○になっていたり……何個かあるので、ぜひDVDで答えを探してみてください。
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