【第3回】“アナログが伝える説得力”──マンガ家・竹宮惠子先生インタビュー(3/3)

【第3回】“アナログが伝える説得力”──マンガ家・竹宮惠子先生インタビュー(3/3)

マンガ家竹宮惠子先生。『風と木の詩(ウタ)』『地球(テラ)へ...』など、竹宮先生が世に送りだされた数々の作品は、連載開始から40年を経た今なお大勢の読者をトリコにし、読まれ続けている不朽の名作です。2000年からは、京都精華大学芸術学部マンガ学科(現マンガ学部マンガ学科)の専任教授に就任。2014年からは同大学の学長も務められています。そしてなんと今年(2017年)は、マンガ雑誌『COM』に竹宮先生の作品が掲載された1967年から数えて50年、“画業50周年”という節目の年でもあります。マンガ家として、教育者として、これまでの軌跡を振り返りつつお話を伺いました。

竹宮惠子先生インタビュー最終回をお届けします。(全3回)
マンガ業界の現状から、アナログという描き方が伝える力とは? さらには学長以降のお話まで盛りだくさんのトークをご堪能ください。
おまけに竹宮先生が学長を務める、京都精華大学マンガ学部にもお邪魔してきましたので、その様子も少しだけお届けします!


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教授から学長へ──4年という任期の中でやれたことやれなかったこと

──2014年に京都精華大学の学長になる、と決断された時はどのようなお気持ちでしたか?

竹宮 大学の中で、マンガ学部は確実に入学希望者を見込める分野だという背景もあって、投票で学長に選ばれたのです。得票数がもう、これは退いちゃだめでしょうというくらいの数だったので、その数に説得されて、「なります」とお引き受けしました。

──実際に学長になってからはいかがですか?

竹宮 そんなに甘くなくてですね、大学は(笑)。4年という限られた任期ですからいろいろ急がなくてはならず、大学を改革することに費やさざるを得なかったという事情もありますが、学長になったときに進めたい、と思ったことは私自身どれ一つとしてできていないのです。

──厳しいご認識ですね! 具体的にはどのようなことをお考えだったのでしょうか? 

竹宮 私は機能マンガ(※1)と呼んでいますが、マンガの機能を使いこなす人たちを作りたい。そのための教育システムも作りたい。さらに大学が利益を得られるような形も作りたい、と思っていましたが、学生たちが育たないとできないので、なかなか難しい。他にも、もっと世界と結びつくようなことがしてみたかったですね。
でも、できなかったということは、まだやるべきではないということだと思っています。必要があればまた何かのチャンスはあるだろうとも考えています。

(※1)機能マンガ……竹宮惠子先生が提唱する、マンガの持つ表現力・伝達力という機能を最大限に発揮し、能動的に研究・報告者として調査探究し客観的に描写することを目標とするマンガのこと。

アナログがもつ力──一枚のイラストが伝える説得力

――マンガ業界以外とのコラボレーションについては如何ですか?

竹宮 先日、吉本興業さんの原作開発プロジェクト(※1)に参加して審査をしたのですが、今はいわゆる業界ではないところから、今はマンガが生まれる時代になっています。そんな新しさがマンガにはふさわしいと思います。マンガが、子どものものから進歩して今の地位があるように、下からの革命がまたできるのではないかと。そういう新しい道ができていることも学生には知ってほしいですね。

――日本語作品が審査対象外、という応募要項も興味深い点でした。

竹宮 今回は外国語作品だけの審査だったのですが、その中で、大賞を取った台湾の方の作品が、完全アナログでした。
いろいろな国の人がマンガを描いていますが、みんなどこかデジタルに頼っているところがあります。でもその人は完全アナログで、細かい描写も全部手で描いている。たまたまその作品がいいと思って選んだのですが、完全アナログだって言われて、やっぱりそうなのかと、むしろ驚きましたね。

──アナログだからこそ伝わった、ということでしょうか?

竹宮 やっぱり人間の目にはアナログをいいと思う部分があるのだと実感しました。
自分がアナログな描き手だからということが影響しているかはわかりませんが、そういった訴えかける力、“説得力”というのがありましたね。
デジタルも、無駄が出ない、アシスタントを使わなくていいという点はメリットなので、そちらへ流れていくのもわかります。ですが、アナログの持つ説得力を、本当に業界は捨てるのかどうか。残した方がいいのではないかと私は強く思います。

――時代と業界の流れのバランスによっては、難しい状況になりそうですね。

竹宮 例えば、『地球へ...』の話をすると、アニメ化の広報のときに、原作者として描ける個所が1点の絵しかなかったんですよね。背景も何もない、たった一枚のキャラクターだけだった。だからその一枚ですべてが伝わるように、力を込めて描いたのがあのソルジャー・ブルーのイラスト(※2)です。
今でも『地球へ...』と言えば、あの絵を思い浮かべてくださる方が多いので、アナログの力、一枚のイラストが伝える説得力というのは、あると思っています。

(※1)原作開発プロジェクト……吉本興業とMediBangがコラボした全世界を対象にしたマンガ作品コンテスト。大賞作品は書籍化、映像化される。
https://medibang.com/contest/gensaku/award/
(※2)ソルジャー・ブルーのイラスト……きっと一度は目にしたことがあるだろうこのイラスト。1980年アニメーション映画「地球へ…」ポスターより

地球へ.../竹宮惠子

学長以降のお話──わんこマンガが読めるかも?

──2018年で学長の任期が終了しますが、今後のご予定をおきかせいただけますか?

竹宮 大学院を受け持つので1年は大学に残りますが、それからどうするかについてはまだ全然何も考えていないのです。いざその時になって自分が何に興味が向いているかによって決めていきたいかな。
ただ、ずっと前から描きたくって描けていない、うちのわんこたちの話を書きたいと思ってはいます。4コマとかで(笑)。

──それは読みたいです!

竹宮 ツイッタ―では猫愛を展開していますが、わんこたちがあまりにも人間臭くてかわいいので描きたいと思っています。

──長編を読みたい、というファン声もありますが、いかがでしょうか?

竹宮 それも思いますが、長編を描くのは仕事をする環境から作っていかないといけない。やっぱりパワーがいるので、年齢的なものもあって、本当に自分にやれるの? と思いますね。

──学生と一緒に作品を作り上げるような動きもありますか? 

竹宮 タクトを振って学生に協奏曲を奏でさせるということを、やったほうがいいのでは、という人もいます。ただ、環境であったり、作品を作り上げていく仕組みができるかがまず問題なので、実際にやれるのかは、なんとも言えないですね!

■まとめ

マンガ家竹宮惠子先生のインタビューを全三回にわたってお届けしました。
マンガだけにとどまらず京都精華大学学長としても精力的に活動していらっしゃる竹宮先生。
実際にお会いした竹宮先生は、マンガ家、教育者、といった言葉から想像する姿とは違い、柔らかな口調ながらも、理路整然と、ロジカルにお話しされる姿が印象的でした。
“人間・竹宮惠子”の魅力にあふれたお話は、きっと誰にとっても心に響くものがあるのではないでしょうか?

おまけ~京都精華大学マンガ学部~

竹宮惠子先生が学長を務めていらっしゃる京都精華大学。
トークの中でも触れられていましたが実際の京都精華大学ってどんなところ? マンガ学部構内の様子を撮影してきましたので少しだけご紹介!

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