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「写ルンです」(うつるんです)とは、1986年に富士フイルムが発売したレンズ付きフィルムカメラ。カメラ本体に、レンズ、シャッター、フィルムがあらかじめセットされており、パッケージを開くとすぐにフィルム写真を撮影することができる。
1970年代頃から旅行ブームにあわせて、フィルムカメラブームが発生していたのだが、当時のカメラは非常に高価であった。さらに、フィルムの管理、現像の難しさなどもあり、ライト層にとってカメラ撮影は敷居の高い趣味であった。
そこに登場したのが、「写ルンです」である。
アレコレ考えなくても、レンズがあって、シャッターを押せば写真が撮れる。面倒くさい現像作業も、写真店に持っていけばすべて全自動でやってもらえるとあり、爆発的なフィルムカメラブームを巻き起こした。
当初はただ撮影するだけだったが、屋内撮影に対応した「フラッシュ機能つき」、広い風景を撮影するための「パノラマ」、キャラクターと一緒に写真を撮っているかのような写真がとれる「フレームつき」などが販売された。
ブーム絶頂期には、観光地に必ずといっていいほど写ルンですの自販機があり、ふと思い立って写真を撮りたくなった観光客が気軽に購入して写真を撮影していた。
しかし、フィルム管理をせずに何枚でも写真が撮れるデジタルカメラが登場。さらに、携帯電話やスマホにカメラが標準装備されるようになると、気軽に写真が撮りたいカジュアル層の需要がそちらに流れてしまった。
2010年代頃からシリーズの出荷停止が相次ぎ、現在ではフラッシュつきのスタンダードモデル「シンプルエース」を中心に販売されている。このシンプルエースは、印画紙にプリントしたもの以外に、CD出力やデータダウンロードにも対応している。
スマホ需要に押されて、絶滅するかに見えた写ルンですだが、近年になり人気が再燃している。高性能なスマホのカメラ機能を使うことで、誰もが高精彩な写真を撮ることができるようになったが、それゆえに「他とはひと味違う写真が撮りたい」というユーザーがあらわれたのだ。
古い高級フィルムカメラを購入せずとも、簡単にフィルム写真を撮ることができる「写ルンです」は、やはりカジュアル層の入門アイテムにぴったりだったのである。
同じような境遇で10年ほど前にブームが再燃し、今も根強い人気を集めているのが、インスタントカメラ「チェキ」である。現像やデータ送信を必要とせず、その場で印画紙に写真が浮かび上がることから、結婚式やイベント会場で重宝されている。
商品名の由来は、富士フイルム社内会議の発言から。
会議内で「(きれいに)写るのか」という問いかけに「(きれいに)写るんです」と答えたことから、その名前がつけられた、という逸話が残っている。
「写ルンです」全盛期にはテレビCMなどで商品名を耳にすることが多かったが、近年のブームで初めて写ルンですを使う世代は一見では商品名が読めず「しゃるんです」や「とるんです」と呼ばれることもあるようだ。
「聖地巡礼に来たら、やっぱ写真とらなきゃね~」
「今日は写ルンです持ってきてみた!」
「わざわざフィルムで撮るの?」
「作品の時代設定が昭和でしょ? フィルムで撮ったほうが、推しの時代にあった雰囲気になりそうだと思って!」
「いいね、現像するのが楽しみ!」
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