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今作に登場する様々なキャラクターの魅力を解説する本連載コラム、煉獄杏寿郎、宇髄天元、鬼舞辻無惨に続き今回ピックアップするのは作中屈指の人気キャラ・我妻善逸です。
原作の人気投票でも1位を獲得したこともある大人気キャラの善逸。インパクト抜群の汚い高音が印象的な一方で、いわゆる「やる時はやる」ヘタレキャラなイメージが強い方も多いはず。
異業の鬼に立ち向かう鬼殺隊であるにも拘わらず、鬼への恐怖で任務から背を向けたり、怖い、嫌だ、と泣き喚いたり。
ある意味では一番私達読者や視聴者が親近感の湧く存在である点も、彼の大きな人気の秘密でもあることでしょう。
しかし今回は敢えてそこにはふれず、我妻善逸という少年がずっと心の奥底で抱いていた、「かけがえのない、唯一無二の存在意義のある自分になりたい」という思いについて。彼の闇とも呼べる深層意識を考察したいと思います。
※本記事は性質上、アニメ1期以降の原作の内容を含みます
INDEX
「本物の捨て子ならおくるみに名前も入れねえよ 俺みたいにな」
(『鬼滅の刃』19巻より引用)
彼がこれまでに、どんなにひどい扱いをされようとも。これほどまでの熱量で女性に好かれたい、と思うことの裏側には、もしかしたら「誰かの特別になりたい」という思いがあったのではないでしょうか。
誰かにとって特別なかけがえのない存在になりたい。誰かに、必要とされる存在でありたい。
誰かに期待され、愛されることで、自分がこの世界に生きていてもいい、唯一無二の存在であることを実感したい。
その善逸の強い真相意識の由来となったのが、きっと彼自身のみなしごという出生なのです。
人生で初めて自分を必要としてくれたじいちゃんの期待に応えるため、という思いもきっとあったことでしょう。
ですがそれと同じくらい、こんなにもビビりな善逸がそれでも鬼殺隊士としての道を歩み始めたのは。たくさんの人を助け、「大勢に必要とされる自分」を夢見ていたからなのではないでしょうか。
無限列車編でも描かれた、彼の真っ黒な無意識領域。
多くのファンから「闇が深い」とも言われていたあの無意識領域が表していたのは、「自分が誰からも必要とされていない存在」であることへの絶望だったのかもしれません。
眠りに落ちることなく戦えるようになった点もそうですが、彼の精神面の大きな成長としては、「誰にも必要とされない自分」を脱し「誰かのためでなく、自分のための自分」を確立したことが。何よりも、この物語における彼の一番大きな成長なのではないでしょうか。
大好きなじいちゃんの非業の死。そしてそれを招いた、尊敬していた兄弟子の裏切り。
誰かの為に生き、そこに自身の存在価値を見つけようとしていた善逸は、その出来事で初めて誰でもない自分自身の為の自分の存在価値を、皮肉にも見つけることができたのです。
裏切った兄弟子の首を己の手で斬るべく、他の誰も持ちえない、自分だけのアイデンティティとなる独自の技を生み出した善逸。
それはある意味で、善逸自身がようやく「かけがえのない、唯一無二の存在意義」を掴んだ象徴でもありました。
『鬼滅の刃』の物語においての我妻善逸の物語は、一言で言えば彼が確固たる自己のアイデンティティを獲得する。そんな成長を描いたストーリーでもあるのではないでしょうか。
(執筆:曽我美なつめ)
炭治郎と同期の鬼殺隊士。
耳が良く、人や鬼などの”音”を聞き分ける。
自分に自信が持てず、しばしば自嘲的な発言をする。
極度の恐怖に陥ると眠りに落ち、別人のように頭の切れる性格へと変わる。
(公式サイトより引用)
スタッフ
原作:吾峠 呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン:松島晃
アニメーション制作:ufotable
キャスト
竈門炭治郎:花江夏樹
竈門禰󠄀豆子:鬼頭明里
我妻善逸:下野紘
嘴平伊之助:松岡禎丞
宇髄天元:小西克幸
(TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編公式サイトより引用 https://kimetsu.com/anime/yukakuhen/)
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