30代オタク女子ライターがレポートするサンディアス主催のWEBセミナー
「BLソムリエが解説する流行BLのトレンド」。
前回の記事では紹介しきれなかった興味深いお話がまだまだあるんです! 今回は、BLランキングデータから見えてくる世代別の“とある違い”についてご紹介します。
■【前編】BLジャンルは多種多様な時代に。ライト作品の増加は『おっさんずラブ』の影響大?
https://numan.tokyo/column/U5io1
2022年のBLトレンドは王道甘々&骨太系。だけど…
『神様なんか信じない僕らのエデン』上(リブレ)
via 『神様なんか信じない僕らのエデン』上(リブレ)
サンディアスが運営するBLレビューサイト「ちるちる」で毎年行われている「BLアワード」。セミナー講師のBLソムリエ・アンリ54世さんによると、「BLアワード2022」のユーザー投票は、下は10代から上は60代まで。若い世代に注目されているものですが、まんべんなく30代以降の年代層も投票されているとのこと。
前回記事の中で、BL作品は大きく8分類に分けられるという話を伺いましたが、【1】王道甘々系:一般BL的と【6】骨太系:青年誌的BLというジャンルがここ2年で台頭。アンリ54世さんによると「この2ジャンルは現在の最先端ジャンル」と言えるのだそう。
今回はもっと細かく見ていくと……世代別で好きな作品傾向がハッキリと分かれるのだとか!?
年代別で全く違う!?若者世代と大人世代で異なる傾向
前述のランキング結果については全年齢層の投票結果を総合したもので、セミナーでは
各年代別1~5位の投票結果をまとめた貴重なデータを見せてもらいました。
そのデータによると、10・20代は【1】王道甘々系:一般BL的が、30・40・50代では【6】骨太系:青年誌的BLが特に好まれているという、10~20代と30~50代の間で好みのBL傾向がキッパリ!
『BLアワード2022』公式サイトより
「例えば、【6】骨太系:青年誌的BLに分類される総合ランキング上位作品『神様なんか信じない僕らのエデン(上)』(一ノ瀬ゆま/リブレ)は
30・40・50代では圧倒的な人気を誇っています。
一方で、『神様なんか信じない僕らのエデン』は10代ではランキング外、20代で5位という、30~50代の結果とは明確な違いが表れました」(BLソムリエ・アンリ54世さん、以下同)
そして【1】王道甘々系:一般BL的に分類される総合2位の『幼馴染じゃ我慢できない』(百瀬あん/フロンティアワークス)は、『神様なんか信じない僕らのエデン』とは逆に、10・20代で1位を獲るものの、30代は3位、40代は5位、50代ではランキング外という結果に。
『幼馴染じゃ我慢できない』2巻(フロンティアワークス)
via 『幼馴染じゃ我慢できない』2巻(フロンティアワークス)
これらの結果にさすがのアンリ54世さんも驚いた様子。
「BL 有識者の間で『神様なんか信じない僕らのエデン』は本当に話題になった作品で、総合ランキング3位にランクインしたのも納得の結果という感じでした。でも、10~20代では票数が振るわなかったところを見ると、10~20代と30~50代ではBLに対する感覚が異なるものなのかもしれません」
さらに、10代のランキングに注目してみると年齢層による違いはより顕著で、他の年代ではランクインしていない【3】青空日常系:少女漫画的BLの『春懸けて、鶯』(那梧なゆた/東京漫画社)が2位に、【2】ビビッド系:次世代少年漫画的BLの『寺野くんと熊崎くん』(依子/竹書房)が5位にランクインしています。
この結果には10代ならではの理由があるようで……。
『寺野くんと熊崎くん』(竹書房)
via 『寺野くんと熊崎くん』(竹書房)
シェアしたい10代、作家買いする50代
「携帯などの電子機器を日常的に使いこなす若い世代はBL漫画も電子書籍で読んでいる、というイメージを持つ人もいるかもしれません。ですが、実際は年齢層が低めの人たちは紙媒体、年齢層が高めの人たちが電子書籍で購入する比率が高いというデータもあるんです。それは大人買いするのに便利だから、場所を取らないからという理由のようです」
なぜ若い人たちが紙媒体を好むかというと、「友達とシェアしたい」というものから「オシャレだから飾りたい、オススメしたい」といった、単純に自分が読んで楽しむという目的以外の理由があるのだそう。
「『春懸けて、鶯』は印象的な装丁が話題になった作品で“表紙がオシャレでしょ! 可愛いでしょ!”と
人に貸したくなる作品だったのが、10代でランクインした理由のひとつではないでしょうか」
また、こういった年代での違いは、本の買い方や選び方にも出るといいます。
『春懸けて、鶯』(東京漫画社)
via 『春懸けて、鶯』(東京漫画社)
「50代でのみランクインした3位『京極家の結婚』(木下けい子/大洋図書)は【7】いにしえ系:一般BL的に分類される作品。このジャンルは作品単品ではなくいわゆる
“作家買い”する人が多い傾向があります。
今の若い世代はそれとは逆に“作家の名前は意識していない”という人も多く、“好きなジャンルやテイストだから”といった買い方をすることがありますね」
『京極家の結婚』(大洋図書)
via 『京極家の結婚』(大洋図書)
改めてこれまでの情報をまとめると、10~20代と30~50代の間ではBLの好みの傾向がはっきり分かれていてBLに対する感覚がちがうのではないかということ、10代と50代ともなれば正反対とも言えるほど違うということ。
そして、若い世代ほど他者とシェア(SNS上やリアル貸し借りなど)して楽しむ傾向が強いということ。
筆者はBLにシェアという感覚がまるでなし&一人で楽しむ派ながら、学生時代にはBLではない本ならよく貸し借りしていたなぁ、と、納得と驚きのあるデータ結果となりました。
年齢とともに好みの傾向が変わっていくBL。生涯通じて楽しめるジャンルと言えるのかもしれない……!?
(執筆:イケダトモ)
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