第2回|『金色のコルダ』キャスティング秘話~音響監督菊田浩巳さん(2/4)

第2回|『金色のコルダ』キャスティング秘話~音響監督菊田浩巳さん(2/4)

音響監督菊田浩巳さんのインタビュー連載第2回。声優のキャスティングから作品の演出まで、アニメやゲームの制作現場に欠かせない役割を果たす”音響監督”について、その仕事内容の魅力と中身を『金色のコルダ』などのタイトルを踏まえて語っていただきます。

菊田浩巳(きくた ひろみ)
音響監督(楽音舎)。1990年代より海外映画やドラマの吹き替えに携わり、2000年以降は、キャスティングやスタジオでのディレクションを務める音響監督として最前線で活躍。近年の主な担当作品では、アニメ『おそ松さん』、『ハイキュー!!』、『ボールルームへようこそ』、ゲーム『アンジェリーク』、『金色のコルダ』、『夢色キャスト』など多数を手がける。

 

ちょっとだけ緻密な計算が入った『金色のコルダ』キャスティング

――アニメのみならず、キャラクターボイスが入るゲーム作品においても、音響監督として作品作りに参加していらっしゃいます。まずは、『金色のコルダ』(※1)シリーズのキャスティングについてお聞かせください。

菊田浩巳(以下、菊田) 『金色のコルダ』は、ネオロマンスシリーズの中でおそらく唯一、全キャラクターをオーディションで選んだ珍しい作品です。もう15年も前になりますが、当時のメイン企画だった方から、長いスパンで続けたい作品なんです。だから今ではなく、5年後10年後に忙し過ぎてスケジュールが押さえられない! って制作サイドが悲鳴を上げるようなキャストを選んで欲しい、と依頼があったんです。

――今では本当にキャストの皆さん全員が、第一線の声優として活躍していらっしゃいます!

菊田 結果的に、力のある方たちを選べた、ってことなんですけどね(笑)。キャスト同士の相性がよく、チームワークも最初から良かったです。そして『金色のコルダ2』で新しいキャラクターが登場することになって……もちろんオーディションをしました。加地葵役はキャラクターの絵を見た時に宮野真守さんが合うような気がしていました。
吉羅暁彦役の内田夕夜さんは、当時は外画(※外国映画のこと。海外ドラマの吹き替えのことも指す)が多かった方なんですよ。役柄はとても合っていましたが、こういう言い方は語弊があるかもしれないんですけど、アニメやゲーム作品にはほとんど出演しておられなくてーーでも、ダブルのスーツを着ている感じがするでしょう?

――はい(笑)!

菊田 実はそういう感覚ってとても大事なんですよね。だから絶対お願いしたほうがいいですよって、強く強く進言したんです。

――そうだったのですね。ちなみに、どこに重点を置いて、キャスティングをなさったのですか?

菊田 すべてはバランスです。『金色のコルダ』に関しては、石川英郎さんという良き先輩がいて。みんなの兄貴分としていつも前面に立ってまとめてくれていました。
新しいキャストが入る時も、そのバワーバランスを崩したくなかったので、キャラクターに合っていて、石川さんの横に並び立てる人、というところをポイントに、将来的なことも見据えてちょっとだけ緻密な計算をさせていただきました。私のキャスティングの根底はキャスト間のバランスにあるので、携わらせていただいた作品は可能な限りバランスを大事にキャスティングしてきたつもりです。 これまで多くの作品に携わってきましたが、キャラクターの声のバランスとキャスト間のバランスすべてを綿密に計算して整えた作品は、この『金色のコルダ』が一番最初なんじゃないかな、と思っております。

(※1)『金色のコルダ』……2003年にコーエー(現・コーエーテクモゲームス)より、女性向けシミュレーションRPGネオロマンスシリーズ第3弾として発売。谷山紀章さん、伊藤健太郎さん、福山潤さん、森田成一さん、岸尾だいすけさん、石川英郎さん、小西克幸さんらが出演。

「誰にでも好きな声質ってあるんです」変わりつつあるキャスティングの方法

――キャスティング音響監督や監督に決定権があるイメージもありますが、作品によっては、役者ありきの依頼も多いのではないでしょうか?

菊田 そういう言い方はちょっと乱暴な気がしますが……。すべてではありませんし、メディアにもよりますが、キャストが決まった状態から演出の依頼が入ることもあります。もちろんお受けします。でも本当はね、決定する前にバランスを見せてもらうとか、キャスト案という形で複数の候補をいただけるほうがありがたいんですよ。皆様の希望に沿える私なりのプランを練りたいと考えているので。
作品を作る際の戦略や強い希望もあるし、作品は関わった人が幸せにならないとダメだと思ってもいるので否定はしませんがーーこれは参考程度で頭の端にでも置いておいてもらえれば幸いなんですけどーー誰にでも好きな声質ってあるんです。
特に耳でエロを感じる女性は、好みの声って存在しているはずなんです。だから好みだけで選んでしまうと、違う声質を選んでいるつもりでいても、同じ響きを持った声質を選んでしまっていることも多いんです。結果、セリフを喋ってみたら同じような声質の人が集まっていた、なんてことあるんですよね。それで「なんか、似てるんですけど……」って、アフレコ現場で言われることもあったりして。その演者を知っている人だけが、声を聞いて分かればいいではなくて、誰が聞いても区別が出来るようにする。それもまたキャスティングの醍醐味なんですよね。

――好きな声のイメージは似通ってしまうのですね……。キャスティングの方法は変わってきていますか?

菊田 はい。基本的には監督と音響監督が最終的には決めるものだったと思うのですが、各方面からの意見も作品のために大事だったりしますね。逆に学ばせていただいていることも多いですよ。

――音響監督に求められる責任も変化しているのでしょうか。

菊田 責任ということなら、何も変わらない。ずっと同じですね。“音響監督”として名前が載るからには、演技に関しての責任はすべて私にあります。キャスティングに関しても同じです。最終的に私の現場に入ってくれたキャストは私がゴーサインを出したキャストであり、収録したすべてのセリフは私がOKを出したものです。だから音響監督なんです。
とはいえ有り難いことに、内心では違うのに、と思いながら作品に携わったケースは少ないので、そうですね……作品には恵まれていると思いますね。

 

まとめ

音響監督菊田浩巳さんのインタビュー第2回をお届けしました。音響監督の役割が、時代とともに変化して複雑化する中で、ごく自然に責任を果たそうとする姿勢はまさに仕事人。次回の第3回はそんな菊田さんが音響監督になった経緯を生い立ちから追っていきます。

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