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【考察2】ファンの“愛の力”が試される!? TVアニメ『おそ松さん』2期1話〜3話をおさらい&ちょっと深読み!

おそ松さん

おそ松さん

“所信表明”の1話はスタッフとファンへの警鐘!?

2期1話『ふっかつ おそ松さん』は、モノクロアニメのおそ松“くん”たちが、『おそ松さん』2期のスタートを喜ぶシーンから始まりました。
おそ松くんたちがTVをつけると、そこには1期から1年半経った街の様子が。6つ子の家を久しぶりに訪れたイヤミとチビ太は、二階建てだった彼らの家が巨大なビルにリフォームされているのを発見します。
玄関の前には、6つ子カラーの“松パーカー”を着た女性ファンたちが長蛇の列を作っています。うっとりとした表情で6つ子に出会える時間を待つファンたち――または、1期からすっかり6つ子の虜になってしまったTVの前の視聴者たち――に向かって、チビ太が叫びます。

「一体世の中どうしちまったんだ! しっかりしろ世の中! 何があったんだよてやんでいバーローチクショー!」

そして二人が家の中へ入ると、そこには変わり果てた”6つ子さま”の姿が……。多くの女性ファンから人気を集め、2016年3月の1期放送終了から2期開始までの1年半の間、毎日のようにグッズ、イベント、アプリや雑誌などのメディア展開が行われていた『おそ松さん』。あらゆる企画でかわいい&カッコいい姿が描かれてきましたが、元はといえば、クズでニートの6つ子たち。何も努力せずに人気が出てしまったら、こんな状態になってしまっても不思議ではありません。
1期以降の“おそ松さん現象”を皮肉るような1話。これについて、雑誌『アニメージュ』2017年11月号に掲載されていた藤田陽一監督とキャラクターデザイン・浅野直之さんの対談では、藤田監督がこんな発言をしていました。

「内輪への警告みたいなもんじゃないですか、どっちかというと(笑)【中略】お客さんが湧いてくれるのはありがたいんですけど、内輪がそれに浮かれすぎると良くないな、と。そもそも、最初はそんな感じじゃなかったじゃん、この企画、というね」

そんな藤田監督が2期1話で絶対にやりたかったと語るのが、1期同様、白黒の『おそ松くん』でスタートするということ(同誌より)。あらゆるメディア展開で、さまざまな6つ子の姿が描かれたとしても、すべては赤塚不二夫先生が描いた『おそ松くん』があったから。オープニングを考察したこちらの記事でも、『おそ松くん』の延長としての『おそ松さん』を大切にしている製作陣の想いについて言及しましたが、1期1話の始まり方を踏襲しているのは、藤田監督の言う「そんな感じじゃなかった」スタート地点を振り返るためなのです。
『おそ松さん』という社会現象への皮肉にも見える2期1話は、原点回帰であり、「評価とは関係なく、おもしろいことをやっていくぞ」という製作陣の所信表明でもあるのでしょう。

“ちゃんとした”1話に、ちゃんとしてなかった“例の1話”を思い出す

すっかり落ちぶれた未来の自分たちの姿を目の当たりにしたおそ松“くん”たちは、「今から”ちゃんと”努力すれば、きっとみんなに愛してもらえる立派なアニメになれる」と信じて努力を始めます。そして十数年後、6つ子たちは見事”ちゃんとした”大人へ、そして”ちゃんとした”アニメのキャラクターと成長します。

アニメ視聴後、インターネット上には「『おそ松さん』1話、すごくちゃんとしてた」という感想が飛び交いました。事実、1話は、視聴した人が「ちゃんとしてた」としか言えなくなってしまうような内容だったのです。

なぜ、2期1話はこんなにも"ちゃんと"していたのでしょうか。
ここで思い出すのが、1期1話です。ありとあらゆるアニメ作品のパロディー要素をふんだんに取り入れた1期1話は、リスペクトとオマージュが溢れすぎたための“大人の事情”でDVD・Blu-rayには収録されず、文字通り“幻の作品”となってしまいました。
これを受けて、2期1話は製作陣にとっても「“ちゃんと”しなければ」という想いがあったのかもしれません。上記『アニメージュ』の対談では、チョロ松とトト子の男女入れ替わりネタについて、浅野さんと藤田監督がこんな会話をしていました。

浅野「輪郭のラインと、目のデカさが90年代の感じですね。でも最初は、もうちょっと今っぽいデザインでしたよね」
藤田「そうね、ゼロ年代とかの『ちゃんとした』ラインを探ってみようかと思ってたんだけど【中略】今の絵柄で(男女)入れ替わりネタとかやったら、ギリギリアウトにもなりそうだし(笑)」

今の絵柄で男女入れ替わりといえば、すぐに思い浮かぶのが2016年にヒットした映画『君の名は。』。藤田監督のこのコメントからは、2期1話については、1期1話のように“大人の事情”でお蔵入りになるような事態を避けようとしていたことが読み取れます。しかし、その”ちゃんとした”というキーワードを爆笑必至のギャグへと昇華する手腕には、「お見事!」と言うことしかできません。

どこか“落語”っぽい、巧みな構成の2話

2期2話のAパート『祝・就職!』は、両親の松造・松代に詰め寄られた(というか、乳首を切り落とされた)6つ子が、”就職”と称してインターネットの動画配信にチャレンジするストーリー。Bパート『超洗剤』は、デカパンが発明した強力な洗剤”超洗剤”をお酒と間違えて飲んでしまった6つ子が、どんどん透明になっていき……という話でした。1期ではツッコミどころを残すシュールな終わり方が多かった『おそ松さん』。それに比べて、2期2話はA・B両パートともにわかりやすい“オチ”のあるストーリーが特徴的です。物語の半ばで張られた伏線をラストで回収するという展開と、6つ子が痛い目を見るという筋書きは、“落語”のようなオーソドックスな笑いを彷彿とさせます。

たとえばAパート『祝・就職!』では、動画を撮影するために暴れ回り、最終的に酔いつぶれた6つ子を、チビ太が”ツケ”と書かれた紙を握りしめながら憎々しげに睨みます。ところが最後は、チビ太がハローワークで暴れる6つ子の動画を配信し、ツケを回収できるのではないかと思えるほどの再生数を獲得する……というオチで締めくくられます。

Bパート『超洗剤』は、イヤミがパーティーへ行く途中で、

イヤミ「おやおやトド松ざんすか」
おそ松「おそ松だよ」
イヤミ「ああ、十四松ざんすね」
おそ松「おそ松だっつの! ホント、全然覚えねーな」

と、6つ子の区別がつかないお約束のやりとりを繰り広げます。そして物語のクライマックス、ペンキで醜い姿になってしまった6つ子が、みんなにおかしなところがないか尋ねて回るシーンでは、イヤミがラストに登場し、

「いつもと何も変わらないざんす。右から十四松、一松、カラ松、チョロ松、トド松、おそ松ざんす」

と、見事に言い当てしまうというオチになっています。

また、2話もノーマルなビジュアルの6つ子が登場するシーンは少なく、内臓&ドロドロの落書きという、1話に引き続きファンにとっては愛を試される回となりました。

シュールすぎる3話。一体、我々は何を見せられているのか

そして3話は、「一体、我々は何を見せられているんだ?」と視聴者が呆然としてしまうようなシュール回でした。

アバンタイトルの『げんし松さん』は、マンモスのカップルがイチャイチャするのを見た6つ子が、木を使ってアダルトグッズを作ろうと奔走するストーリー。トド松のアイテムはファッション性重視で、カラ松のアイテムはカッコいいメカニックな機能付き、十四松は野球のボール……と、6つ子の個性はアダルトグッズにも現れることが判明しました。

Aパート『チョロ松と一松』では、これまで本編ではペアになることの少なかった”年中松”(6人を長男から末弟まで並べたとき、ちょうど真ん中の二人であるため)ことチョロ松と一松の気まずさを描いています。
2017年10月13日に開催された”アニメフィルムフェスティバル東京2017”のトークショーでは、藤田陽一監督ら製作陣が「2期では今までにやったことがない組み合わせを描いていきたい」とコメントしていました。つまり、1期でなかなか接点がなかったあのコンビたちも、2期で絡んでいくのかも……? 今後のストーリーへ、ますます期待が高まりますね。

予告でもタイトルが上がっていたBパート『トト子の挑戦』は、6つ子とゲストの照英さんが、泣いたり、ケンカしたり、絆を深めたりと大騒ぎする話。今回の主人公であるはずのトト子、そして視聴者がすっかり置いてきぼりにされてしまう怒濤の展開となりました。

予測不可能、それが『おそ松さん』の魅力

以上、1話から3話までのおさらいでした。3話を通して、あらゆる変化球を見せてくれている『おそ松さん』2期。今後のストーリーも全く予測不可能ですが、そこが『おそ松さん』の魅力のひとつ。4話以降もよい意味で期待を裏切ってくれそうです!
(執筆:飯塚ゆとり/編集:小日向ハル)

■DATA

おそ松さん
キャスト 櫻井孝宏、中村悠一、神谷浩史、福山潤、小野大輔、入野自由、遠藤綾 他
配信情報 テレビ東京系列 他
原作 『おそ松くん』著:赤塚不二夫
Copyright ©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

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numan編集部

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